賃貸業とのハイブリット経営のススメ

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

私は、税理士業と一緒に、賃貸マンションの貸付業をしています。

ありがたいことに、両者とも、すごく儲かるものではないですが、ほどほどの利益とともに、この10年間、事業として継続できています。

税理士業と賃貸業は、一緒にやるとメリットもあるし、少ないですがデメリットもあります。

そのあたりのことを書いてみようと思います。

税理士会でやっている税務相談の相談員当番をしてきました。
普通の人の税金感覚を思い出すのに、いい機会になりました。

メリット① 定期収入は心の支え

ビジネスを立ち上げる際、一番の心配事は、資金繰りです。

お客様が来てくれるだろうか、手元の運転資金でいつまでもつだろうか。

お客様がついてくれたとしても、生活に支障のない収入が、安定して確保できるようになるまでは、なかなか不安は消えません。

その点、立ち上げの段階で、賃貸物件を所有していて、生活費に充当できるくらいの家賃収入があれば、本業の売上確保に集中できます。

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これは、とても大きいです。

私の場合、サラリーマンをやっている段階で、賃料収入を確保できていたので、資金繰りの心配をせずに、個人事業として独立することができました。

付け加えると、その時、物件の規模と同じだけの銀行借入を抱えていましたので、借金返済のプレッシャーはかなりありました。

しかし、売上ゼロの状態で独立するというプレッシャーとは、比べ物にならないくらい安心感がありました。

私がスムーズに独立できたのは、「独立前に、定期収入が確保できていたから」と言い切っていいと思います。

メリット② 軌道にのせればそれほど時間は奪われない

税理士業の場合、いかに効率化を進めたとしても、お客様との面談、会計データの入力やチェック、決算書・申告書・その他の書類の作成、などで、時間が必要になります。

私の場合、「事務所にいないとき」は、「仕事が進んでいない」のと、ほとんど同義なので、どうしても「事務所にいて」仕事を進める時間を確保しないとなりません。

その点、賃貸業は、物件購入時はなにかと手間がかかりますが、必要なメンテナンスが終了し、空室の入居が完成すれば、そのあとは、基本的にはすることがありません。

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退去によって空室が発生するときも、一度に全室退去、ということはまずありません。

一部屋ずつ、空室をリフォームして入居者募集をしていけば足りますので、本業のための時間は確保しやすい、と言えます。

メリット③ 税理士の知識や経験が賃貸業に活きてくる

賃貸業を始めるにあたって、銀行借入を利用する場合には、資金繰りの見通しが立つかどうかの資金繰りプランを作成する必要があります。

これがなかなか大変で、慣れていない人が作ると、経年による賃料低下が加味されていなかったり、借入の元本返済と税金計算がごちゃごちゃになっていたり、苦労して作ったわりには、全然参考にならない、ということが、ままあります。(しょうがないです、実際難しいですから)

その点、税理士であれば、数字や資金繰り項目の拾い上げには慣れていますので、ある程度想像による数値であったとしても、的を射たプランに仕上がります。

この資金繰りプランをベースに、物件を買うか買わないか判断するので、とても重要な判断指標になります。

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また、会計や税務の知識は、大いに役立ってくれます。

会計帳簿や決算書・申告書の作成は、できない人であれば会計事務所に外注に出さなければならないところ、税理士なら自前で仕上げられるので、コストカットに役立ってくれます。

実際、私は、賃貸業のために、法人を2つ保有していますが(以前は3社ありましたので、かなりめんどくさかったですけど)、自前で決算書・申告書を仕上げられるからこそ、可能なことだと思っています。

加えて、賃貸業は、自分の努力がそのまま経営結果に反映されるので、節税について考えるときも、半端なことはしなくなります。

私の場合、まだ世間ではあまりお目にかからない「民事信託」や「一般社団法人」を使った節税に踏み込むことにしました。

これらを使った節税については、改めて別のブログにまとめたいと思います。

高額不動産の名義変更の強い味方!「信託譲渡」のざっくり解説

一般社団法人を、賃貸経営と相続税対策に使ってみた

メリット④ 賃貸業で経験したことが税理士業にフィードバックされる

経験や知識のフィードバックは、「税理士業 ⇒ 賃貸業」だけでなく、「賃貸業 ⇒ 税理士業」の流れでもあります。

一番勉強になったのは、銀行借入です。

抵当権や根抵当権、担保評価などの担保に関する知識、金利や借入期間に関する銀行側の考え方、保証協会の使い方、本部の方針でその都度変わる融資スタンスなど、銀行に関する情報は、ほとんど賃貸経営の経験から得たものです。

億を超える金額を借りる際のプレッシャー、嫁さんに連帯保証人になってもらうときには、理屈ではなく熱意でアプローチすべし、など、借り手としてのしんどい経験も、税理士として関与先の社長の相談に応じる際、とても役に立ってくれました。

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また、物件の売買交渉の経験も、交渉事のアドバイスとしてお伝えすれば、お客様に喜んでもらえますし、建物のメンテナンスに関する経験も、会社の税務相談ではなくとも、社長個人のプライベートな相談では、結構役に立ってくれました。

デメリット① 同時に繁忙期がきてつらい

税理士業の繁忙期は、言わずと知れた12月~3月ですが、同じ時期に賃貸業も繁忙期がやってきます。

どっちも忙しいですし、どっちも後回しにはできません。

まあしかし、どちらかを優先しなければならない場面では、当然ながら税理士業を優先します。

ビジネスの優先順位をはっきりさせておく、というのは、ひとりで複数ビジネスを取り仕切っていくうえでは、とても重要だと思います。

デメリット② たまに緊急事態に見舞われる

よくあるのが、賃貸マンションの「水漏れ」です。

水漏れ対応だけは後回しにできないので、すぐに現地に行ける業者さんを手配して、対応してもらうようにしています。

ちなみに、過去10年で、水漏れの発生により、その日の予定が飛んでしまったということが2回あります。(私の場合、中古マンションを好んで買うので、水漏れ自体はもっと頻繁に起きています)

水漏れは、どのマンションでも生じる可能性はありますが、経験上、水漏れが頻発する物件というのもあるので、精神衛生面を考えると、売却してしまった方がいいときもあると思います。

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そのほかに、私は経験がありませんが、「火事」「事件事故」「入居者の死亡」などについては、頻度は多くないものの、生じる可能性はゼロではないので、常々心構えをしておかなくてはなりません。

デメリット③ 煩わしいトラブルを抱え込むリスク

家賃滞納、入居者同士のトラブル、迷惑行為をやめない入居者、などです。

ある程度、管理会社さんが対応してくれるのですが、案件や条件によっては、所有者が対応するしかないこともあります。

私の経験では、「となりの入居者さんが帰宅するときの足音がうるさい」というクレームの対応で、深夜に音響測定器をもって現地で張り込んだり、「屋上で怪奇現象が起きる」というクレームの対応で、深夜にマンション屋上をパトロールしたり、ということがありました。

まとめ

税理士業と賃貸業を一緒にやることは、デメリットもあるものの、総じてメリットの方がはるかに大きい、と感じます。

「自分自身の経験を、そのままお客様へのサービスに活かせる」という税理士業の特殊性が、賃貸業とうまくマッチしているように思います。

ただ、経験上、あまり多くの賃貸マンションを抱えてしまうと、税理士業を圧迫するか、もしくは、ひとりでやっていく、というスタイルを見直さなければならなくなるので、「ひとりで税理士業をやっていく」という前提に立つならば、物件を増やしすぎないことが重要です。

まあ、物件を増やしすぎたら、税理士業をやめて賃貸業に専念する、でもいいとは思いますが、私自身は、税理士業と賃貸業を、バランスを取りながらやっていく、という道を選びました。

どちらかに専念するよりは、両方やっていく中での、「税理士業と賃貸業の相互フィードバック」こそがおもしろい、と感じています。

以上、ご参考まで。