台風15号の被災者支援に参加して気づいたこと

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

静岡市清水区では、

令和4年9月23日に起きた台風15号による河川の増水や氾濫などにより、

大きな被害を受けました。

我が家では、床上浸水などの直接的な被害はなかったものの、

1週間ほどの断水被害に見舞われて、

しばらく不便な生活を強いられました。

断水が始まった直後から、

生活用水を届けたり、情報発信をしたりと、

自分なりにやってきたとのですが、

その翌月から、

静岡県災害対策士業連絡会が取り組む被災者支援活動に参加することにしました。

具体的には、

清水区役所に設置された相談ブースで、

被災された方たちに行政支援の情報をご紹介し、

制度の利用に結び付けていく活動です。

税理士として参加しましたので、

税金関係の支援制度や相談業務を自身の守備範囲として取り組んできましたが、

ようやく確定申告時期も終わり、

自身の活動としてはひと段落ついた感じです。

改めて、被災者支援活動で感じたことを書いてみようと思います。

清水区高部自治会での雑損控除説明会の様子

災害時の税制について、ほとんど知らなかった

税制面での被災者支援でメインになるのは、

所得税の税額控除や所得控除になります。

また、消費税や法人税でも、

申請・申告期限の延長制度があったり、

住宅ローン控除や固定資産税などでも、

救済規定があります。

ただ、恥ずかしながら、

わたしは被災者支援に携わるまでは、

それらの制度のことを全然知りませんでした。

なぜならば、

わたしをはじめ多くの税理士は、

あくまで実務家であり、研究者ではないので、

実務でよく使う制度は知っているものの、

普段使う機会のない制度については、

「制度の名称は聞いたことがあるなー」くらいの認識だからです。

最初、わたしも相談ブースに入った時には、

「ザッソン控除ってなんだっけ。使ったことないからさっぱりわからん」

という状態でした。

そこから雑損控除や災害減免法について、

参考書籍と税務署を行ったり来たりしながら、

知識を蓄えていきました。

思うのは、

最初、相談ブースにお見えになった相談者さんに対して、

ロクな情報提供ができなかったときも、

自分の役割を放り出さずに、

税制情報の入手と整理を続けてきてよかったなと。

活動の最初のうちは、

「やっぱり税理士は、災害時には役に立たないな」と思うことが多くて、

本業の活動時間も圧迫されるし、

支援活動を続けていくのはメンタル的にも大変だ、

と感じる瞬間もありました。

しかし、

支援活動をやめる理由ならいくらでもあるのですが、

続ける理由はひとつだけです。

「困っている人のお役に立ちたい。ちょっとでいいので」

そうして、やめずに続けることで、

知識も、周りからの信頼関係も、

少しずつ蓄積されていきました。

いまではありがたいことに、

災害対策連絡会のメンバーからも、

頼りにしてもらえるくらいの戦力にはなれたと思います。

税制の内容をそのまま伝えても、届かなかった

ある程度、災害時の税制について詳しくなってくると、

細かい部分まで相談者さんにお伝えしなければ、という意識になり、

相談ブースでは、けっこう詳しく説明するようになりました。

しかし、これはよくなかったです。

反省しています。

なぜならば、

災害に被災して相談にお見えになる方は、

制度について勉強しにきているわけではないからです。

彼らは、この苦しい状況を、

助けてほしい、手伝ってほしい、と思って、

相談に来ています。

そんな彼らに対して、

制度の詳細や細かい部分をいくら説明しても、

それらの情報を受け取る余裕もなければ、意思もありません。

被災した方たちは、細かい説明など、最初から求めていません。

彼らが欲しいのは、

「〇〇すれば、支援金をもらえる」、

「〇〇に依頼すれば、泥の掻き出しを手伝ってくれる」、

「〇〇に電話すれば、災害ゴミを回収しに来てくれる」という、

結果に直結する情報です。

枝葉の情報は要りません。

相談ブースでは、最初、

そのことがわからなかったために、

無駄に説明に時間を使い、

相談者さんを疲れさせてしまうことがありました。

「雑損控除を使えば、税金の還付を受けられる。

そのためにすることは、これとこれ」というふうに、

情報をそぎ落として、シンプルに伝える。

災害時の情報提供とは、そのようにあることが望まれます。

他士業の方とのネットワークが、広がった

被災者支援の相談ブースでは、

弁護士さん、司法書士さん、行政書士さん、建築士さん、社労士さんなど、

多くの士業の方たちと触れ合うことができました。

普段、仕事をしていても、

接するのは社労士さんと司法書士さんだけなので、

弁護士さん、行政書士さん、建築士さんとコミュニケーションをとれたのは、

とても貴重な経験になりました。

とくに、変わった人の比率が高かったのは、

弁護士さんでした。

活動内容が変わっている人、

見た目や服装が変わっている人、

経歴が変わっている人と、

弁護士さんは独特な人が多いな、と感じました。

そして、彼らからみて、私がどのように映っていたかはわかりませんが、

被災者支援活動のリーダーの弁護士さんから、

雑損控除に関するオンラインセミナーをやってほしいという依頼があって、

全国の弁護士さんを対象にセミナーをやらせていただいたり、

浸水被害がひどかった地区で、

確定申告に関する説明会をやらせてもらったりと、

人前でしゃべる機会をいただけて、

これも大変勉強になりました。

スーツ姿だと、相談者さんとの精神的距離が縮まらないかなと思って、
あえて私服で参加してみました

あと、NHK静岡の夕方の情報番組でも、

災害時の税制について取り上げていただけたのですが、

そのとき取材に来てくれたのがNHK静岡の大窪キャスターです。

抜群の理解力と伝達力により、

限られた放送時間の中で、

非常にわかりやすく説明してくれました。

古巣である放送局と再びやり取りできるうれしさもあって、

わたしも全面協力させていただきました。

忙しさが限界だったけど、それでも散髪しておけばよかった・・・

最初、相談ブースから始まった1対1の情報提供が、

ネットワークの広がりとともに、

場所を移して、相手を増やしてと、

活動範囲が広がっていくのは、

忙しくも、いままでにない充実した時間でした。

まとめ

一言でいうと、「参加してよかった」。

これに尽きます。

ただ、同時に課題も見えてきました。

被災者支援に携わる税理士が、圧倒的に少ないこと。

被災者支援は、売上にはつながらないため、

日々生活の糧を得なくてはならない身として、

これだけやっているわけにはいかないこと。

被災者支援を行うためには、

自分自身が被災するわけにはいかないこと。

今年の夏も、またどこかで、

浸水被害が起きるかもしれません。

そのときはまた、

困っている人のお役に立てるよう、

少しずつ準備をしていこうと思います。