【経営初心者必見】稼げば稼ぐほど納税が増える、銀行借入がもたらすジレンマ。

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

10月も半ばに入り、私の事務所では、今月から年明け4月ごろまで、決算が続きます。

あまり使いたくない言葉ですが、繁忙期に入ってきました。

これから、社長さん達との面談が増えてくる中で、いつもテーマになることがあるので書いてみようと思います。

銀行借入のある会社は、利益を出すべきか、利益を抑えるべきか、というテーマです。

地元にある草薙神社に、家族で行ってきました。

やっぱり税金計算はわかりにくい

日本の法人税や所得税の計算では、簡単にいうと「利益」に対して課税する、という立場をとっています。

ここでいう利益は「『売上』-『経費』」のことです。

そして、この計算の中には、「借金の返済」は入れてはいけないことになっています。

日頃から社長さん達と話をするにあたり、

この「借金の返済は、税金計算から除外される」という点が、

多くの社長を悩ませ、理解不能に陥らせ、会社の方向性を誤らせる原因のひとつになっていると感じます。

似て非なるもの

「売上」-「経費」=「利益」← これに対して税金がかかる

「現預金収入」-「現預金支出」=「資金繰り」← 税金計算は関係ない

この2つの計算式は、全く別物なのですが、

内容を見ると、両社ともに共通する項目が多いため、ごちゃごちゃになりがちです。

私自身も、両者はとてもわかりにくいと思いますし、

税金計算と資金繰り計算の結果が、極端に離れてしまう時があります。

かつて私にも、資金繰りの肌感覚と税金計算の結果が、どうにも一致しない、と感じた経験があります。

以前、私は、賃貸物件を数棟保有していました。

そのうちの半分以上を、数年前に売却したのですが、

その時、売却益の全額を、残っていた借金の返済に充当しました。

結果、手元資金は、数百万円しか残っていませんでした。

(とにかく今ある借金をチャラにしたい一心で、一括返済してしまいました)

そして、その年の決算を迎えて、税金計算をした結果、約6,000万円の納税額が必要となりました。

それだけの税金がかかってくることは予測してはいたものの、その時ばかりは、

「お金なんて全然残ってないのに、そんなに払わなきゃならんのか。

借金の返済は、事業をしていくうえで『必須の経費』だろう」

と強く思いました。

当然、そんなお金はないので、再び銀行からお金を借りてきて納税をすることになったのですが、

納税したあと、どうしようもない虚脱感に陥ったことを覚えています。

ヤマトタケルの石像。

借入のある会社のジレンマ

銀行借入のある会社では、稼いでも稼いでも、借入の返済と税金支払いで、お金が消えていきます。

借金を返すためには、稼がなければならない。

しかし、稼げば稼ぐほど、税金の額は膨らんでいき、

稼ごうが稼ぐまいが、借金の返済は、完済するまで続く。

繰越欠損金(過去の赤字額のこと)が残っていれば、

税金計算をするときに、利益と相殺できるので、税金も減らすことができます。

しかし、繰越欠損金がないとなると、稼いできた利益に丸々税金がかかってきますので、

経営者にとっては、激痛です。

本決算での納税の見通しについて社長に説明すると、よく、社長に言われるのが、

「それじゃうちの会社は、売上を出した方がいいの? それとも売上を減らした方がいいの?」

という質問です。

ちょっとイラつきながら、聞かれることもあります。(お気持ちはよくわかる)

正解は、「たくさん売上を上げて、たくさん利益を出すこと」です。

たくさん利益を出せば、たくさん税金がかかります。

しかし、日本国内でビジネスをしている以上、日本の税制が適用されることは受け入れるしかありません。

利益を出せば、利益の多さに比例して税金も多くなりますが、納税後に残るお金も多くなります

納税後に残るお金を、できるだけ増やして、しっかり貯めて、

そしてできるだけ借入の返済スピードを上げていく、という方向性しかありません。

手水に、きれいな飾りつけがされていました。
神社によっては、全く人の手が入っていない
ほったらかしのところもありますが、
この草薙神社は、地域の人たちによって、
きれいに管理されていました。

コントロールできるものに意識を向ける

資金繰りが苦しいときには、資金繰りの要素を、

コントロールできるものと、コントロールできないものに分けて、

コントロールできるものをしっかりコントロールしていく、という視点が有効です。

事業の種類によって異なると思いますが、大掴みにいうと、次のような感じです。

  • 収入・・・コントロールしにくい。基本的にあればあるだけほしい。
  • 支出・・・コントロールしやすい。労働時間短縮やコストカット、支払い時期を後ろにずらすなど。
  • 商品在庫・・・コントロールしやすい。仕入量を抑える、在庫処分による現金化など。
  • 借入返済・・・コントロールできない。いざとなったらリスケにより返済停止。
  • 税金・・・コントロールできない。出費を伴わない節税策は積極的に行う。

(参考)

【超簡単】「節税」と「課税の繰り延べ」の違い。理想の節税は「身内でお金を回すだけ」

まずは、「資金繰り」を維持するために、「コントロールしやすいもの」を、ベストな状態に持っていきます。

そして、資金繰りを維持しながら、「借入金の圧縮」を目指します。

税金については、資金繰りを傷めないような節税を行うだけにとどめ、

そもそも、あまり節税というものに期待しないのがよいと思います。

まとめ

借入のある会社は、とにかく「地道にやっていく」

それしかないのだと思います。

こういうときの社長の苦しい心を支えてくれるのは、家族と経営仲間です。

借金を抱えたら、「資金繰り」と同じくらい、「人間関係」も大事にしましょう。

以上、本日もお読みいただき、ありがとうございました。