「抵当権」と「根抵当権」の違い。使い分けのパターンを整理してみました。

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

前回のブログで、金融機関からお金を借りる際の「不動産担保」と「信用保証協会」について、

その違いをまとめてみましたが、

このうち、不動産担保を選択したときは、設定する担保権を「抵当権」にするか「根抵当権」にするか、

どちらかの選択を求められることになります。

「不動産担保」と「保証協会」。それぞれの特徴をまとてみました。

そこで今日は、「抵当権」と「根抵当権(ねていとうけん)」の違いについて、

まとめてみようと思います。

釣りが趣味です。
釣れればうれしい。
釣れなくても楽しい。
まずはアイゴから。
ヒレのとげに微毒があるので注意。

抵当権は、借りたお金を返せば終わり

抵当権では、「借りたお金」と「設定された抵当権」が明確に紐づけされています。

そのため、借りたお金を返済すれば、抵当権も消えます。

消える、といっても、法務局で抹消の手続きをとらなければ、

登記簿上は、その不動産には抵当権設定の記録が残ったままになっていますが、

それはいわゆる「空っぽの抵当権」というものであり、抵当権の効力は消えています。

根抵当権は、借りたお金を返しても終わらない

根抵当権の設定では、まず、「極度額」を決めます。

この極度額というものは、「お金を借りれる上限」を意味しています。

「借りれる枠」と言った方が、わかりやすいでしょうか。

すわなち、極度額1億円の根抵当権が設定されている、としたら、

1億円までだったら、金融機関からお金を借りることができる、ということです。

そして、抵当権との大きな違いは、

根抵当権では、「借りたお金と根抵当権は、紐づけされていない」という点です。

そもそも根抵当権は、極度額の範囲内で、お金を借りて、返して、また借りて・・・、を

繰り返すことを前提にした担保権です。

(そういう点では、当座貸越に似ています)

したがって、借りたお金を返しても、根抵当権は消えません。

消えないことに意味があります。

カサゴです。
釣りにいけば、いつもお目にかかる
マイフレンド。

抵当権と根抵当権、どちらを選ぶべきか

私の経験をもとに、抵当権と根抵当権のどちらを選ぶのがいいか、パターンごとに整理してみました。

借りたお金を完済したら、もう二度と借りない場合

「抵当権」がお勧めです。

根抵当権だと、完済後にも、金融機関に担保権限を握らせることになってしまいます。

(完済後に法務局で抹消手続きをとれば、金融機関の担保権限もなくなります)

完済した後も、たぶんまた借りるであろうという場合

信用保証協会を使わない(使えない)と決めており、今後もずっと不動産担保でいく、

と決めているなら、「根抵当権」でもいいかもしれません。

信用保証協会を使えるようになったら、そちらに移行したい、

もしくは、完済するつど、担保を消してさっぱりしておきたい、

という場合は、「抵当権」にしておいた方がいいと思います。

(設定するつど、設定費用がかかりますけど)

何回もお金を借りることが確実な場合

「根抵当権」がお勧めです。

担保の設定、抹消には、それぞれ手間も費用もかかります。

根抵当権なら、一度設定すれば、その後根抵当権を抹消するまで、手間も費用もかかりません。

(初回の設定費用はかかります。あと借りたお金の金利もかかります)

クロイシモチです。
夜の魚は、口が大きい。

担保不動産は、将来売却するかもしれない場合

近い将来売却するかも、という場合は、「抵当権」がお勧めです。

言うまでもなく、抵当権が残っている不動産を買う人はいませんので、

すぐに返済して、抹消できるようにしておきましょう。

ちなみに、不動産の売却代金によって借りたお金を返済する、という場合には、

売買決済の当日まで、抵当権は残っていても大丈夫です。

そういう場合は、お金を借りている金融機関の担当者が、決済現場に立ち会って、

売買代金の入金と同時に、抵当権が抹消できるということを確認して、

不動産の権利証を買主に渡すことになります。

なお、遠い将来に、不動産を売却するかもしれない、という場合なら、

根抵当権でも問題ないと思います。

担保用の不動産には、すでに別の担保が設定されている場合

すでに金融機関の担保が設定されている不動産に、別の金融機関の担保を設定する、

ということは、珍しいことではありません。

私もよく目にします。

完済後に、また借りる可能性があるのか、不動産を将来処分する可能性があるのか、

によって判断すれば、抵当権でも根抵当権でも問題ありません。

ハタです。
模様がきれいで、身もおいしい。

担保用の不動産が複数ある場合

その不動産のなかで、将来にわたって手放す気がない、というものがあるならば、

そこに根抵当権を設定して、いつでもお金を借りれるようにしておく、というのもアリだと思います。

もっとも、借りたお金が返済できなければ、その不動産を金融機関に差し押さえられてしまうので、

返済のめどが立っている、というのが大前提です。

担保不動産は、絶対に手放したくないという場合

そもそも手放したくない不動産なら、担保を設定するのはやめましょう。

それでも、どうしても不動産担保でなければお金を借りることができない、という場合は、

「抵当権」一択です。

1回だけでなく、何度もお金を借りるはめになったとしても、

完済のつど、抵当権も抹消する、というようにしておくことをお勧めします。

隣の釣り人が、釣り上げたタチウオをくれました。
釣り人同士の交流も楽しい。

まとめ

抵当権と根抵当権の違いをまとめてみました。

全般的に、お金を借りることに前向きな気分ではない場合は、

「抵当権」にしておいた方がいいように思います。

抵当権にするか、根抵当権にするかは、お金を借りる入口の段階で決めなければなりませんが、

入口を間違ってしまうと、後でやり直すということがとても困難です。

くれぐれも、金融機関の言いなりになって、

テキトーに決めることがないよう気を付けていただきたいと思います。