元本返済の「長期」と「短期」。イレギュラーを想定した期間選択を

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

金融機関から融資を受ける際に、返済期間をどのように設定するかについて、

お客様からご相談を受けることがよくあります。

基本的には、長くとるか短くするか、のどちらかになるのですが、

それぞれにメリットデメリットがあります。

その点について、書いてみます。

車内で休憩中。
近年、コンビニコーヒーが充実してきて、ありがたい

返済期間を長くとる場合

私の経験上、運転資金では最長10年、設備資金では25年で借りたことがあります。

返済期間を長めに設定することで、毎月の返済額は少なく抑えられ、

資金繰りを安定させやすい効果があります。

その反面、次のようなデメリットがあります。

  • 借入期間が長いため、利息を支払う期間も長くなる。その結果、トータルで支払う金利は、多額になりがち。
  • 借入元本の返済が進みにくいため、借入残高も減りにくい。その結果、財務改善も進まない。

特に、高金利での長期間の借入は、上記デメリットが如実に現れます。

かつてよく見た某スルガ銀行での不動産融資では、

当時、「金利4.5%、返済期間30年」の借入が可能でしたが、

これは高金利長期借入の最たる例です。

このような条件での借入は、

返済期間が長いため資金繰りが安定しやすく、緊張感が薄くなりがちですが、

仮に10年間返済をしたとしても

「払ってきたのは金利だけ。元本返済は全然進んでいない」、

という状況に陥ります。

(当時の首都圏での不動産仲介業者は、「キャッシュフローが出るから」「毎月の手残りはこれくらい」と言って、資金繰り面ばかりを強調する風潮でしたが、そのトークに、すでに売り逃げの兆候が見られました)

借入期間を短くする場合

設備資金に比べて運転資金の場合は、返済期間は短くなりがちです。

一般的には、運転資金だと3年~5年くらいでしょうか。

借入期間が短いため、返済のプレッシャーに晒される期間も短くなります。(ちゃんと完済できれば)

また、同じ理由から、トータルで支払う金利も少なく収まります。(高金利で借りちゃうとまずいですが)

しかし、期間が短いと、次のようなデメリットがあります。

  • 返済期間が短いと、毎月の元本返済額も多くなる。そのため、手元資金の減っていくスピードも速い。
  • 資金繰りにイレギュラーが発生したときに、対策を練る時間の余裕が、あまりない

そもそも、融資というのは、時間稼ぎの手法です。

自社の資金繰りに問題が生じたときに、他から借りてきたお金で時間を稼ぎ、

自社の資金繰りを正常化させて、借りたものはまた返す、という手法です。

そもそもの融資の目的が、「時間を稼ぐ」、という点にありますので、

「短期間の融資」というのは、「借りる側の都合には、合っていない」

ということが前提にあります。

どちらかというと、「短期」というのは、

貸す側の「早く回収したい」という事情によるところが大きいです。

怖いのは、想定外のことが起きたとき

ビジネスをしていると、想定外のことが重なって起きることが、

よくあります。(よくあっては困るのですが)

所有物件の外壁工事用にお金を借りた後、別の物件で一斉退去が生じて、

さらに多額のリフォーム費用が発生する、とか。

従業員から、「人手が足りないから新しいスタッフを雇ってほしい」、と言われて、

希望どおりにスタッフを採用した直後に、最初に言ってきたスタッフが、

半数近くの顧客を連れて退職したりとか。

想定外のことが生じることは避けられないですが、

こういった想定外のことに対応しやすいのは、

毎月の返済額が少ない「長期借入」になります。

短期借入では、次から次へと稼いで返して、を繰り返さなければならず、

そのスピードを緩めることができないので、

前述のとおりイレギュラーには弱いです。

よって、融資を受ける際には、

「選べる範囲で最長の返済期間を選択しておくこと」、をお勧めします。

そして、長期で融資を組んだ場合の

「財務改善が進まない」という問題に対しては、

無駄な出費を削り、全力で手元資金を温存しておき、

「一括返済後の手元資金と、必要となる運転資金残高のバランス」がとれたところで一括返済、

というやり方により、財務改善を図っていきます。

思うに、経験上、このような借り入れから返済までの取り組み方が、

最も資金繰り破綻のリスクを抑えられる、といえます。

まとめ

以上、借入期間の長短について、まとめてみました。

これから、金融機関との融資交渉に臨む、という方に、

ご参考にしていただければと思います。