お疲れ様です。
税理士の浅原です。
金融機関からお金を借りるにあたって、問題になるのが「保証」です。
金融機関が、たま~に独自の顧客開拓キャンペーンを打ち出して、
保証なしで借りることができる場合もありますが、
多くは融資相談をした時点で、「保証をどうするか」ということが論点になります。
一般的に保証の内容としては、「不動産担保」と「信用保証協会」のどちらを採用するか、
という議論になります。
今日は、不動産担保と信用保証協会の違いや特徴について、書いてみようと思います。
不動産担保の場合
不動産担保というのは、具体的には、借主や借主の親族がお持ちの不動産(主に土地)に、
抵当権や根抵当権を設定しておき、将来、借入金額が返済不能となったときに、
金融機関にその不動産を処分する権限を与えておく、というものです。
不動産担保には、次のような特徴があります。
金融機関が独自に、その不動産に対して担保評価計算を行い、基本的には、その評価額が融資額の上限の目安となる
・・・私の経験では、担保評価額は、その不動産の取引相場の4~5割程度に抑えられるので、
「そんな金額しか出ないのか」と思ったことが、何度もあります。
もっとも、担保評価額までしか借りられない、となると、
金額が少なさ過ぎて融資が成立しない場面が多くなるので、
そこはさらなる金融機関本部との相談によって、担保評価額を上回る融資も可能になります。
担保の設定手続きに、登録免許税、司法書士手数料などの諸経費が発生する
・・・そこそこの金額がかかります。
もっとも、それは、信用保証協会でも保証料が発生するので、
初期費用は避けられない、という点では、どちらも似たようなものです。
しかし将来、繰上返済をする予定がある、となると、変わってきます。
仮に返済期間を10年で設定したとして、借りた後、3年目で残金一括返済をしたとすると、
担保設定にかかった費用は、10年分の前払いであり、未経過の7年分は戻ってきません。
(私は、けっこうお金をため込んで、早めに繰上返済をしたいタイプなので、
不動産担保を組んだ融資で繰上返済をしたときは、何となくもったいないような気分になります)
それに対して、信用保証協会の保証料は、借入期間に応じて発生するので、
先の例だと、未経過の7年分にあたる保証料は、一括返済後に戻ってきます。
担保物件となる土地の上にある建物にも、すべて抵当権が設定される
・・・実際に、金融期間が「資産価値のある担保物件」として見てくれるのは、ほとんど土地だけですが、
その土地の上に、金融機関の担保権限が及んでいない建物があると、
担保実行の手続きがスムーズに行かなくなるので、
担保物件となるの土地の上にある建物は、すべて担保に持っていかれることになります。
なお、建物に設定する担保の設定費用も、借主負担になります。
担保物件となる土地の上になる建物で、法務局に登記されていないものがあるときは、その建物を登記することを要求される
・・・前述のとおり、担保となる土地の上にある建物には、すべて担保が設定されますが、
担保を設定するためには、前提として、その建物が法務局に登記されていなくてはなりません。
したがって、もし登記されていない建物(倉庫など、その土地から動かせないものすべて)がある場合には、
それらすべて登記しておかなければなりません。
当然、費用は、借主負担です。
返済不能になったあと、担保物件を処分するまでに、かなり時間がかかる
・・・担保物件を処分するには、金融機関主導で進める「任意売却」と、
裁判所主導で進める「競売」があります。
手続き的には、任意売却の方がシンプルなので、大体金融機関は、まずは任意売却にチャレンジして、
未回収の融資残高を回収しようとします。
しかし、任意売却で希望の金額に達しなかった場合には、競売で決着をつけることになります。
いずれにしても、返済不能になったあと、ただちに不動産が現金化されるわけではなく、
ある程度時間の猶予があるため、競売手続きに移行する前に金策がうまくいけば、
不動産を取り返すことも可能です。
信用保証協会の場合
信用保証協会の保証というのは、将来、借りたお金が返済不能になったときに、
金融機関に対し、保証協会が肩代わりして返済してくれる制度のことをいいます。
当然ながら、金融機関に肩代わり返済したあとは、借主の会社に対して、同額を請求してきます。
金融機関からすると、借主の会社が返済できなくなっても、保証協会が返済してくれるので、
リスクなしで融資をして利息がもらえてウマー、という制度です。
昨年から、新型コロナ関連の保証制度が出てきて、
一部の保証については、政府が金利も負担してくれるようになりました。
さて、信用保証協会は、独立した第三者になりますので、不動産担保とはややテイストの異なる特徴があります。
また、信用保証協会とのやりとりは、融資申し込みをした金融機関と経由して行うことが通例であり、
借主が直接、信用保証協会のやり取りする場面は、ほとんどありません。
信用保証協会が、金融機関とは別に、独自で保証の可否の判断をしてくる
・・・信用保証協会の保証可否の判断は、おおむね金融機関と同様になります
基本的には、業績が良くて資産超過の会社なら、保証可となり、
赤字続きで債務超過の会社であれば、保証不可となります。
もっとも、赤字企業であっても保証可となる場合は、よくあります。
私の経験ですと、赤字になった理由を明確に説明し、業績改善の実現可能性が高いことを具体的に示せば、
けっこう保証可になるように思います。
まあ、言ってみれば、信用保証協会は、「保証」をするのがシゴトなので、
「保証不可」ばかりでは、仕事してねえな、と言われかねませんから。
信用保証協会が「オッケー」なら、金融機関も「オッケー」。逆もまた然り。
・・・信用保証協会の保証可の許可が得られると、非常に心強いです。
なぜなら、信用保証協会がオッケーならば、相談窓口になった金融機関もほぼ無条件でオッケーだからです。
信用保証協会の保証の許可が得られれば、金融機関は、ほぼノーリスクで融資実行ができるからです。
その逆も同様で、信用保証協会がダメという結論ならば、もうこれ以上の融資相談は無理、
という結論になることがほとんどです。
そういう場合、おそらく支店サイドでは、なんとかしてあげたい、と思っていても、
本部が「うん」とは言わないのでしょうね。
保証協会がダメで、担保に提供できる不動産も持っていないようなら、そこでだいたい相談打ち切りとなります。
保証料は、分割払いが認められている
・・・信用保証協会で、保証の許可が下りて、めでたく融資を受けられるとなった場合、
借入期間に応じて信用保証協会から保証料を請求されます。
この保証料は、分割払いが認められており、また、将来的に繰上返済をした場合に、
未経過期間に相当する部分の保証料は、還付されます。
ですので、不動産担保の場合と異なり、繰上返済をしても、損した気分になることはありません。
どちらの保証を使うべきか
私の考えとしては、信用保証協会の保証を、まずは優先的に使ってみるべきだと思います。
近年、私がかかわった融資では、全体の8割程度が、信用保証協会の保証つき融資となっていまして、
金融機関の担当者も、まずは信用保証協会に保証の相談にいく、というのがセオリーになっているようです。
そもそも信用保証協会の成り立ちが、
「事業者が、事業資金の融資を受けやすくなるようサポートするための公的機関」という位置づけなので、
もし利用できる機会があるなら、積極的に利用するべきです。
そして、保証協会の許可が得られなかった場合の次善の策として、不動産担保の利用を考えるべきだと思います。
不動産担保も、広く使われている保証手段ではあるのですが、
いったん担保がついてしまうと、抹消するまでは、不動産を自由に処分することができなくなります。
保証協会の保証が使えるのに、わざわざ先に、自分の財産を傷める必要はありませんし、
なんとなく私は、自分の財産なのに自由に扱えない、という状況を、気持ち悪いなと感じてしまいます。
まとめ
以上、信用保証協会と不動産担保の違いや特徴について、書いてみました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【参考】