お疲れ様です。
静岡市の税理士、浅原慎一郎です。
耐震補強工事に伴い、事務所の壁を剥がしてみたら、
想定外のものが出てきたことがあります。
忘れもしない、平成29年の出来事です。
その時のことを書いてみます。
夏は猛烈に暑くて、冬はかじかんでキーボードが打てない
当時、私は、別の税理士から引き継いだ会計事務所を手放して、
自分ひとりで会計事務所を始めて、1年が経ったくらいのときでした。
事務所の建物が、在来工法で作られたやや古い感じの建物でしたので、
耐震補強工事をしたいと以前から考えていたのですが、
ひとりで事務所を運営するようになってから1年経ち、
ようやく落ち着いて仕事ができるようになってきたので、
工務店さんと作業の打ち合わせに入りました。
打ち合わせの結果、
「気になるところを全部補強すると、だいぶ高額になってしまうから、
1階2階ともに、要所となる四隅の壁を開けて、筋交いを入れて金具で固定して、
壁を閉じて完了、というやり方で行きましょう」となりました。
工事の初日、私も現場に立ち会います。
作業箇所の周りを養生して、それじゃあ取り掛かりましょう、
と言って、壁を剥がしたところ、中から出てきたのは、
大量の建築廃材でした。
壁の内側の横に通してある木材と、外側の壁の間に、縦に挟み込むようにして、
かなりの量の木材の切れ端、ベニヤ、プラ配管などが、詰め込まれています。
「あれ、なんで廃材を詰めてあるの? 廃材を壁に入れておくと、何か効果的なことがあるのかな?」
と見当違いなことを思っていると、
作業スタッフの皆さんは、「あー-」と言いながら、
「どうしましょうか」という表情で私を見てきます。
聞くと、バブル期の建物にはよくある現象、ということでした。
建築ラッシュだった平成元年前後、
建築会社は、廃材の処分費用を抑え、かつ廃材を処分場に持っていく手間も抑えたいがために、
壁の内側に廃材を詰め込んで、壁で蓋をしてしまう、ということを、
よくやっていたそうです。
「そうか、だからこの事務所は、夏はやたら暑くて、冬はかじかむほど寒いのか。
断熱材ならぬ廃材が入っていたんじゃ、それも当然か」と、疑問が解けて、
すっきりとがっかりが同時にやってきました。
そのあと、私のことを気の毒に思った工務店さんが、
詰め込まれた廃材の処分と、新しい断熱材を、サービスしてくれました。
しかし残念なことに、手を入れた壁は、全体の5分の1程度なので、
まだほかの壁には廃材が大量に入っているはずです。
相変わらず、夏は暑く、冬は寒い事務所ですが、
しょうがないと、諦めています。
お客様の目に触れない仕事
翻って、私の税理士としての仕事ではどうでしょうか。
税理士の仕事の中で、お客様の目に触れない仕事は、多々あります。
言い方を変えると、
試算表、決算書、申告書以外の資料やデータは、
ほとんどお客様に見せてはいません。(私の場合ですが)
月次報告で説明資料として使うのは、試算表と損益推移表。
決算報告で使うのは、決算書と申告書。
そのほか、ちょっとした質問や提案をするときに、総勘定元帳の数ページをお見せするくらいです。
事務所内での作業プロセスなども、お見せすることはありません。
(隠れてやることでもないので、見てもらっても構いませんが、非常につまらないでしょう)
結果的に、試算表、決算書、申告書が「壁」となっており、
「壁」の内側にあたる総勘定元帳は、
ほとんどお客様の目に触れない状態になってしまっています。
大事なところほど目に見えない
建物の建築では、重要な部分ほど目に見えません。
「床下の基礎部分」
「家を支ええる柱と梁」
どちらも、壁や床下に隠れており、外側から見ることができませんが、
建築にとって最重要であることには疑う余地がありません。
税理士の仕事も同じで、決算書も申告書も、
総勘定元帳のひとつひとつの仕訳データの積み重ねが土台になっている以上、
総勘定元帳こそが最重要と言えます。
しかし、意外とお客様は、そこに関心がない。
そして、お客様が関心を持っていないことを、くどくど説明しても、うるさがられるだけ。
だったら、いちいち説明はせずとも、重要な箇所は、自分の責任でしっかりと詰める。
そこに、職業人としての仕事への姿勢が表れてくるのだろう、と思います。
誰しも、目に見える部分は、きれいに整えてきますから。
まとめ
事務所の壁から建築廃材が出てきた時のことを書いてみました。
廃材を見たときに思ったのは、「目に触れない部分の怖さ」です。
仮に、事務所の壁を剥がすこともなく、取り壊しのときまでずっと廃材が見つからなかったとしても、
壁の中に廃材をしまい込んだ当の本人は、自分のしたことに気づいているでしょう。
やってしまったことは、後になって謝罪したとしても、やらなかったことにはならない。
ならばせめて、「そこに悪意はなかった」、といえる状況にしておきたいものです。