個人と法人、2つの名義を使い分けるメリット

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

私は、本業(税理士業)を個人事業で行いながら、

法人で副業(賃貸経営)をしています。

そして、法人から、毎月少しずつ、給与をもらうことにしています。

(実際には、現金の移動はなく、法人の帳簿上で給与の計上をしているだけなので、給与と同額の未払金が積み重なっていくことになります)

無理に事業拡大をする気のない私には、

このスタイルがちょうどよいと感じています。

「本業→個人事業、副業→法人」というスタイルが、

ちょうどよいと感じる理由を書いてみようと思います。

どちらかにするか、というよりは、両方とも使っています

税金負担のバランスをコントロールできる

「個人事業」と「法人」、それぞれを「財布」と捉えるならば、

2つの財布を持ち、財布同士でのお金の移動を行うことにより、

全体を見たうえでの税負担のバランスを、コントロールすることができます。

まず、法人には、法人税がかかってきますが、

法人税は、「年間利益800万円」というラインを境に、

「15%」と「23.2%」の2段階の税率になっています。

(なお、この税率は法人税のみですが、これ以外に県民税、市民税、事業税がかかってきます)

これに対し、個人事業にかかってくる所得税は、利益額に応じて、

「5%」「10%」「20%」「23%」「33%」「40%」「45%」と、

7段階に分かれています。

(なお、個人事業に関しても、所得税以外に県民税、市民税、事業税がかかってきます)

そこで、法人税と所得税の、それぞれの税率レベルを比較しながら、

ベストな利益配分を探ることが可能となります。

そして、法人個人間のお金の移動方法としては、

次のような方法があります。

【 法人 → 個人 】

  • 役員給与の支払い

・・・法人から個人への、代表的な移動方法です。事業所得ではなく給与所得になりますが、個人の収入としてカウントされます。勤務実態があれば、個人事業主のご家族の給与も支払えます。

  • 事務所家賃の支払い

・・・個人所有の自宅や個人名義で借りているアパートを、法人に賃貸している、という形をとります。

  • 車のレンタル料

・・・個人所有の車を、法人に賃貸している、という形をとります。

  • 役員退職金の支払い

・・・会社を清算したり、何か事情で役員を辞めるときには、退職金の支払いも認められます。

【 個人事業 → 法人 】

  • 〇〇のサービス料

・・・・個人事業の業務の一部を、法人に外注に出した、という形をとります。例えば、個人所有のアパートの清掃作業や管理業務など。ただし、本当にその業務を行っていることが必要です。

お金の動かし方のポイントは、

「いったん決めたお金の移動は、できるだけ継続する」

ということです。

原則として、税法上は、

法人個人と名義を分けることでの利益調整は、認められていません。

よって、お金の動かし方を年度ごとに変えたりすると、

税務調査の際には非常に怪しい目で見られてしまいます。

ですので、いったん移動の名目を決めてお金の移動を開始したら、

あとは、金額を調整するくらいにして、

移動の方向性や移動の名目は、変えないようにするのが賢明です。

生活費が少ないので、移動の必要に迫られない

個人事業と法人と、2つの財布でお金を管理していく場合、

法人に入ってきたお金は、そのままでは、個人の消費活動には使えません。

個人の消費活動に使うお金は、いったん個人名義に移す必要があります。

その結果、法人個人のお金の使い分けは、次のようになります。

消費に回す分 → 個人

貯蓄に回す分 → 法人

そのため、個人事業の収入だけでは、必要な生活費を賄いきれない、

という場合には、たとえ税負担のバランスを崩してでも、

法人から個人へのお金の移動をしなければなりません。

このように、必要に迫られて一定額を移動させなければならない、となってしまうと、

「自分の自由な判断で、好きな方向に好きな額だけお金を移動できる」という利点がなくなり、

「税負担のコントロール」というメリットも失われてしまいます。

その点、もともと私は、派手な生活をしないように心掛けています。

洋服は、イオンかユニクロ。

外食は、年に2~3回。それ以外はすべて自宅。

ひと月の通信費は、スマホ、ネット、電話、ファックスなど全部合わせて、月額15,000円くらい

頻繁に使う車は、電気自動車(充電につかう電気料は、月に3,000円くらい)

習い事は、空手だけ(月謝は、親子3人で6,000円)

そうしますと、そこまで多くの生活費は必要ないので、

法人から個人へのお金の移動は、しなくても問題ありません。

移動しなくても問題ないからこそ、移動の自由度が得られます。

税負担のバランスをコントロールするためには、その前提として、

お金を移動させても移動させなくても、生活は維持できる、

ということが必要です。

お金の移動のタイミングを調整できる

また、お金の移動を、現時点では行わないことにして、

将来、移動させたい時期が来るまで、それぞれの財布の中にストックしておく、

ということもできます。

特に、会社勤めしながら、副業をしている方は、

副業をしていることが会社にバレると、何かとまずい、

という事情もあると思います。

そういう場合には、法人から個人へのお金の移動は、しばらく控えておき、

将来、勤め先を辞めてからお金を移動させるようにすれば、問題ありません。

私の場合、子ども達が小さくて、生活費がかからないうちは、

お金の移動量も少なくしておき、

将来、何かとお金がかかるようになってきたら、

少しずつ、法人から個人への移動量も増やしていく予定です。

まとめ

法人個人と、2つの名義を使い分けるメリットについて、書いてみました。

実際に、やっていて一番メリットを感じるのは、「社会保険料の節約」ですが、

それは多くのほかの記事でも書かれていますので、省略しました。

ほかにも、副業では個人名と現住所を晒したくない、とか、

個人の所得を大きくし過ぎないことによって、保育料や学費負担を抑える、

ということも、可能になります。

名義が2つあることで、コントロールの幅が広がりますので、

状況が許せば、このような手法もありだと思います。