廃業のご相談、やりたいことを優先する人生でいい

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

先日、お客様である有限会社の社長から、廃業のご相談がありました。

数年前から、事業を続けていくかどうするべきか、悩んでおられましたが、

新型コロナによって、いろいろなスケジュールが狂ってしまい、

事業を続けていく気力がなくなってしまった、ということです。

社長からは「やっぱり、事業経営はたいへんだよね。雇われの方がよっぽど楽だよねー」、

と共感を求められました。

雇われは雇われで、苦労も多いのですが、社長を労ってあげたかったので、

「ほんと、そうっすよねー」と同意しておきました。

その相談のときに、思ったことを書いてみます。

たまたま4人での面談が続きました。
このスペースで4人だと、ディスタンスが保てないので、
ちょっとやり方を考えようと思います。

新型コロナの作用

新型コロナは、もともと存在していた問題点を、表面化させる作用があるように思います。

問題を解決するまでに、あると思っていた時間やお金の余裕を、新型コロナが奪っていきました。

ご相談に来られた社長さんは、年齢は60台半ば。

今まで、お一人で事業をされていましたが、仕事を続けるには、

必要な免許の更新のために、試験を受けたり講習を受けたりしなければならず、

また、そこまでしても、仕事が取れるかどうかの保証もなく、

これ以上続けていく気になれない、とおっしゃっていました。

もっとも、急にそういう状況になったわけではなく、

以前からそういう状況の中で仕事をされていましたので、

ある意味でそれらは承知の上だったのだと思います。

しかし、新型コロナの影響で、試験やセミナーが予定通り行われなくなり、

加えて、監督官庁によって、事業者側が振り回されることも多くなり、

しんどくなってしまったようです。

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私も、日々お客様の業況を見ていて感じますが、

悪いサイクルにあった会社さんは、新型コロナの影響で、

そのサイクルが、さらにスピードアップする傾向にあるようです。

逆に、業況の良かった会社さんは、そのサイクルがスピードアップするわけではなく、

現状維持の状態となっています。

とにかく、問題点を把握したら、ただちに対応していかないとならない。

そういう、いろんな点で余裕のない世の中になってきたな、と実感します。

銀行借入が残ってなくてよかった

銀行からの借金やリース契約の未払い分がなければ、廃業するのは比較的簡単だと思います。

借金や未払いリース料があっても、それらを一括返済できるだけの資金が手元にあれば、問題ありません。

もし、返せない借金や未払いリース料があって、それでも廃業したいならば、

裁判所で破産手続きをとらなければならなくなります。

手に職があってよかった

いままで一生懸命働いてきた人が、定年を機に仕事を離れると、

付き合う人も減り、会話も減り、その結果、

家に引きこもったり、ボケてしまうという話をよく聞きます。

その点この社長は、60代半ばで、体はまだまだ元気です。

加えて、業歴35年のベテラン技術者ですから、同業者の知り合いも多く、

下請け仕事やアルバイトなどもできるので、

「会社を辞めたあとも、形態にこだわらずに、働き続けるのがいいと思いますよ」、

と社長にお伝えしました。

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男性の場合、「職縁」といいますか、

人間関係の中でも、「仕事を通じての関係」がとても重要な位置を占めると、実感しています。

会社を辞めた後も、何かしらで、仕事仲間と接することを続けてほしいと思います。

やりたいことがあってよかった

ご相談のなかで、会社を辞めた後にやりたいこと、という話題になりました。

聞くと社長は、「学生時代に北海道旅行に行ったときのことが忘れられず、

ぜひもう一度、一カ月くらい車中泊をしながら、北海道一周旅行に行きたい」、

とおっしゃっていました。

最終的に私が、「会社を辞めた方がいい」と思えたのは、これです。

社長には、猫を飼っている、お母さんの体調が悪い、という事情があるので、

そのうえ、会社経営までやっていたら、北海道旅行に行ける可能性は、ほぼゼロです。

それに一カ月の車中泊となったら、体が元気なうちでないと、とても無理です。

年内に、会社の方はカタが付くと思うので、諸々身辺整理が済んだら、

ぜひ北海道で、若い頃の記憶とともに、旅をしてきてほしいと思います。

まとめ

今後も、こういったご相談は、あると思います。

長寿の時代になりました。

事業をやめた後も、人生は続きます。

社長さんたちが、引退後の第二の人生をのびのび過ごせるように、必要ならば背中を押してあげたいと思います。