「自分を守る行為」では、自分も相手も守れない。逃げずに踏み止まることの尊さ

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

年明け早々に、賃貸物件の管理会社様から電話があり、

「最近入居した方のお部屋のエアコンから、温風が出なくなって苦情が来ています」とのこと。

その入居者様は、昨年12月上旬から入居しているのですが、

入居と同時にエアコンを新品に交換したばかりです。

「タイミングからすると、新品のエアコンが故障する可能性よりは、

取り付け作業に問題があった可能性の方が高いかな」と思い、

取り付けをお願いした業者様に確認に行っていただいたところ、

「これは、うちの作業上のミスです。大変申し訳ございません」とのことでした。

そのときに、感じたことを書いてみます。

御殿場のホテルのイルミネーション。
素敵すぎます。

業者様の報告

業者様からの報告は、まずお詫びから始まり、次のような内容でした。

  • エアコンの室外機へ連結する配管に、ヒビが入っている。
  • このヒビから冷媒ガスが漏れてしまって、温風が出なくなった、という理解でほぼ間違いない。
  • 通常、こんなところにヒビは入らないし、試運転の時は問題なかったけど、取り付け作業をしたのは私一人なので、私がやってしまったということで、ほぼ間違いない。
  • ヒビの入った配管を交換して、冷媒ガスを補充すれば、温風がでるようになる。
  • もし、それでも復旧しなければ、メーカーに室外機を交換してもらうので、安心してほしい。

私は、その報告を聞きながら、自分の心の中で、

この業者様に対する信頼度が増加していくのを感じていました。

作業ミスに対するこちらの苦情や、もう仕事依頼するのをやめよう、とか思うことは一切なく、

またこの人に依頼しよう、次もこの人と仕事がしたいと思って、報告を聞いていました。

「自分を守る行為」で自分を守れるとは限らない

おそらく誰しも、自分のミスで誰かに迷惑を掛けてしまった、というときには、

自己保身が頭をよぎると思います。

私自身も、やはりミスすることはありますし、

そんな時は、「まいったな、お客様になんて説明しよう」と悩みながら、

その場から逃げ出したい心情にかられることがあります。

実際、私のやっている仕事や、この業者様のように、

「自分ひとりで完成させる」という性質の仕事では、責任回避の言い訳がしやすいです。

詳しい状況は、作業をした自分にしかわかりませんから。

仮にこの業者様も、ご自身の責任を回避しようと思えば、

「試運転の時にはちゃんとエアコンから温風がでていた」

「作業が完了してから今回の不具合までに、1か月程度の期間があった」という点を踏まえて、

「入居者様が引っ越し作業のときに、配管に傷をつけてしまったのではないか」とか、

傷のついた配管はだまって交換した後に「理由はわからないけど、自然に冷媒ガスが漏れてしまっていたみたいで、何ででしょうねえ」

とバックレることもできたはずです。

しかし、その責任回避の欲求に従ってしまうと、

ロクなことにならないことは、誰でも経験があると思います。

トラブルが起きたとき、まず必要なのは、

そのトラブルに適切に対処することです。

トラブルへの適切な対処のためには、

トラブル発生のいきさつや原因について、正確な情報を把握することが欠かせません。

責任回避のための行為は、往々にして、その正確な情報をゆがめてしまいます。

結果的に「自分を守ろうとする行為」は、その方向を間違えると、

完全に正反対の結果を招くことになりがちです。

「最初からちゃんと説明してくれれば、こんなひどいことにはならなかったのに」という、

知り合いから聞くよくある話のような結末が待っています。

きっと、この業者様も、ミスを見つけた瞬間は、

自己保身が脳裏をかすめたはずです。

そのとき、この業者様は、安易な自己保身には逃げずに、

責任回避したい心情を抑え込んで、真実を私に報告することを選択してくれました。

もしくは、そもそも、自己保身という発想自体が生じなかった可能性もあります。

そのどちらであっても、大変貴重な人材であることは間違いありません。

私は、そういう方と今後もお付き合いをしたいし、

自分自身も、そういう選択をする人間でありたい、

と願っています。

ひたすら感動。

ミスに対して寛容であること

その業者様には、今までエアコンの取り付けを何度もお願いしており、

今回のお部屋以外の取り付け作業では、まったく問題はありませんでした。

その作業実績からすれば、今回の作業ミスは、

「人間が行う」というところから派生する、どうしても避けられないヒューマンエラーだろうと、

と思っています。

ヒューマンエラーは、その性質上、ゼロにはなりません。

人間には個性があり、そして生き物である以上、

能力差や、コンディションの良し悪しによる差が必ず存在するからです。

また、ビジネスは、一人だけでは成立しません。

私がやっている賃貸経営はもとより、

スタッフの介在しない税理士業であったとしても、

最終的に仕事は、お客様と税理士の共同作業になるからです。

そうしたときに、ビジネスを円滑に進めていくためには、

「ミスに対して寛容である」ということも、重要なのだろうと思います。

ミスに対して厳しい叱責が待っている、と思うと、

やはりミスは隠したくなってしまうでしょう。

それは致し方ありません。

「ミスを減らす努力は欠かさない」のと同時に、

「ミスはゼロにはならない」という事実を受け入れて、

「ミスに対して寛容である」という姿勢を忘れずに、

これからも仕事をしていきたいと思います。