お疲れ様です。
静岡の税理士、浅原です。
資金繰りを検討するうえで、
銀行借入を行うべきか、リスケを選ぶべきか迷ったときに、
どう考えたらよいかについて、書いてみました。
目次
それぞれの特徴
銀行借入にもリスケにも、それぞれ特徴があります。
まずは、それを踏まえておかなくてはなりません。
それぞれの特徴には、次のようなものがあります。
銀行借入
- 時間がかかる
・・・すでに融資取引のある銀行の場合には、1か月くらい。融資取引のない銀行からの新規融資の場合には、2か月くらい
- 現実に借りられるかどうかは、やってみなければわからない
・・・銀行側がどういう判断をするかによる。断られたり、条件が合わないことも多い
- 毎月の元本返済額も、利息支払い額も、増加する
・・・現在の毎月の返済額に、新しく借りた資金の返済額が追加されるから
- 「借りた後に、また借りる」ということも、毎月の元本返済を継続できていれば可能
- 「借りた後に、リスケする」ということも、可能(銀行には不審がられるけど)
リスケ
- 比較的、結論がでるのが早い
・・・緊急事態であることは、銀行側も承知している
- 借入に比べて、確実性が高い
・・・経験上、借入を断られたことは何度もあるけど、リスケを断られたことはない
- 毎月の元本返済額は、交渉によっては元々の返済額よりも下げることが可能
- 「リスケした後に、また借りる」は、しばらくできない
・・・永久にできないわけではないけど、最短でも5年間はできない、と考えておく必要がある。もっと長くなる可能性も十分ある
最も問題なのは、上記に掲げた「リスケの不可逆性」です。
つまり、リスケをしたら、もう借りることができなくなる、ということです。
どちらを選ぶべきか
よって、オーソドックスに考えれば、
「まずは借入、だめならリスケ」
となります。
時間に余裕のあるときなら、これで大丈夫です。
では、時間に余裕のないときにどうするか。
「時間」以外のエッセンスを加えて、考えてみます。
「時間がない」+「既存の借入金額が少ない」
既存の借入金額が少ない、ということは、
毎月の元本返済額も少ないはずです。
とすると、リスケによって元本返済を止めても、資金繰り改善への効果は少なく、
思ったような効果が得られません。
この場合は、時間がかかったとしても新規借入を選択し、
手元の資金を温存するために、先延ばしできる出費を先延ばししましょう。
「時間がない」+「既存の借入金額が多い」
この場合は、すでに多額の借入をしている状態なので、
新規借入に動いても、融資の許可が下りる可能性は低いでしょう。
それとは別に、毎月の返済額も多いはずですから、
リスケによる元本返済停止により、資金繰り改善への効果が期待できます。
この場合は、一応、新規融資について尋ねてみて、
すぐに良し悪しのフィードバックがないようなら、リスケに切り替えて進めていきましょう。
どちらも「時間稼ぎ」にすぎない
新規融資もリスケも、手続きにはそれなりに時間がかかりますし、
特にリスケは、要求される資料が多くなりますので、
リスケの審査が通ったときには達成感があります。
しかし現実には、事業をとりまく厳しい状況は、何も変わっていません。
融資もリスケも、銀行によってお金の出入りを調整してもらっているだけで、
売上にも仕入れにもなりません。
要するに、「単なる時間稼ぎ」です。
大切なのは、「稼げた時間で何をするのか」ということです。
知り合いの銀行員から聞いた話では、
リスケ申請に応じたものの、
元本返済を止めて資金繰りが回りだした途端に、緊張感がなくなり、
何もしなくなってしまう社長が、一定数いるようです。
そうなると、せっかく稼げた時間をドブに捨てることになってしまいます。
(ただ、そういう社長も、内心では大いに悩んでいるとは思います。でも、ここで求められているのはシビアな「行動」です)
私が今まで関与してきたリスケ事例では、
リスケ交渉に入る前に、事前に社長と十分に打ち合わせをしてから取り掛かっていますので、
幸い、時間をドブに捨てることもなく、事業を継続できています。
新規借入もリスケも、それ自体を目的にしてはいけません。(それ自体も大変ではありますけど)
新規借入やリスケによって、稼げた時間で何を達成するのか。
それが見えていないならば、もしくは見出す覚悟がないならば、
借入もリスケもするべきではないでしょう。
借入やリスケをする方は、
「これから取り掛かることは、単なる時間稼ぎにすぎない」
と肝に銘じておく必要があります。