リートに魅力を感じない。賃貸経営から得た経験こそが、本当の財産だと思う

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

5~6年前に、お客様と、私が賃貸経営もしているんです、というお話をしたときに

「リート(REIT)はやらないんですか」と聞かれたことがあります。

その時は、「リートに手を出すつもりはないんです」とお答えしました。

また以前、賃貸経営で儲けたお金でリートを買って、配当で暮らしている、

という方にも会ったことがあります。

その方にも、リートを進められましたが、やはりリートを買う気にはなりませんでした。

今後も私は、リートをやる気はありませんが、

なぜそう思うのか、理由を書いてみようと思います。

夜の船越公園からの夜景。
ドリプラの観覧車が見えます。

リート(REIT)とは

リートとは、

「Real Estate Investment Trust」に頭文字をとったもので、

一言でいえば、投資信託の一種です。

一般的な投資信託は、株式や社債、国債を投資の対象にしていますが、

リートでは、各種の不動産を投資対象にしています。

そして、一般的な投資信託と同様に、リートにも専属の運営スタッフがいて、

そのスタッフが不動産の管理運営をしており、

そこから生まれた利益を、投資家に分配するようになっています。

賃貸経営との比較でいえば、

賃貸経営は、投資家と投資不動産が直接結びつく「直接投資」であるのに対し、

リートの場合は、投資家が、専門スタッフを経由して投資不動産に投資するので、

「間接投資」ということになります。

リートで得られるものは「お金」と「時間」

上記で説明したとおり、

リートの場合は、不動産投資の専門スタッフが不動産を運営してくれるので、

投資家がするのは、どのリートに投資するかを選択して、

決まったら、お金を出して権利を買うだけです。

不動産の運用は、専門スタッフが行うので、投資家は特にすることはありません。

自分が投資したリートの値動きを見張っていて、

配当や銘柄の組み換えによる売却益があれば、確定申告をするくらいでしょうか。

配当がでれば、お金を得ることができ、

また、次に記載する賃貸経営のような労力投下は必要ないので、

時間の消費も防ぐことができます。

総じて、ビジネス的な要素はない、しかし元本割れのリスクはある、

という性質のものになります。

賃貸経営から得られえるもの

それに対して、直接投資である賃貸経営においては、

あくまで経営、すなわちビジネスですので、やることがたくさんあります。

なお、巷では、賃貸経営による収入を「不労所得」と言ったりしますが、

経営が軌道に乗るまでは結構忙しいですし、

軌道に乗ってからも、やることはそこそこあります。

フルタイムのサラリーマンほどの時間拘束はないけど、

週1~週2くらいの短時間アルバイトくらいの労働はあります。

そして、その短い労働時間の中で、私はとても濃密な経験をさせてもらっています。

主に、次のような経験になります。

日中、遊んでやれなかったので、夜の公園でひと遊び。

賃貸を取りまくルールやその運用についての経験

入居募集から、契約締結、退去後の敷金精算まで、

サービス提供から売上回収の一連の流れを、自分の手で経験させてもらっています。

入居募集は、

早く客付けすることで、家賃発生の早期実現を優先するのか、

それとも、多少時間がかかっても、最大家賃での客付けを目指すのか、

という優先項目の違いによって、募集条件の内容が変わってきます。

また、敷金精算をスムーズに行うための特約事項の書き方や、

入居希望者からの申し込み直前の交渉に対してどのように応じるかなど、

日々実践の中で、トライアンドエラーを繰り返しながら、

よりベターな方法を探っていくことができます。

賃貸経営では、要所ごとに大なり小なり、自分の判断を迫られることになるため、

最近は、決断すること自体に慣れてきて、一連の流れをスムーズに行えるようになってきました。

賃貸経営に必要な人脈

賃貸経営をしていくうえで、物件の管理会社と、リフォーム業者さんは必須になりますが、

彼らには、本業の税理士業の方でも、助けてもらっています。

私のお客様には、賃貸アパートや貸家をお持ちの社長もいらっしゃいますし、

売却予定の不動産をお持ちの方もいらっしゃいます。

それぞれの社長の性格やニーズに合わせて、不動産業者さんを紹介して、

無事に売却にこぎつけたことは何度もありますし、

ちょっとした社長のお宅や事務所の修繕などは、

私のお世話になっている業者さんを紹介して対応してもらったことも、多いです。

単に業者さんを知っている、というだけでは、「紹介」も、それに伴うリスクがあって怖いですが、

全幅の信頼を置いている業者さんなら、自信をもって紹介できますし、ほぼほぼトラブルも起きません。

建物の構造やメンテナンスに関する知識

賃貸物件を仕入れるにあたり、建物の構造についての知識は、とても重要です。

鉄筋コンクリート造の建物でも、

壁式工法やラーメン工法では、間取り変更に違いが出てきますし、

RC造とPC造では、少し特徴が違ってきます。

また、内装では、床の組み方、壁や天井の組み方、クロス貼りの手順など、

内装業者さんの作業に立ち会って観察していると、目に見えない部分の構造がよくわかりますし、

内部構造を知っておくことで、自分でリフォームプランを立てることができるようになります。

そして、業者さんと対応に話をするためには、建物の構造に関する知識は必須です。

また、火災保険を請求する際にも、この知識は、非常に役に立ちます。

修理部材も、業者さんを通じてしか入手できないものや、ホームセンターで入手できるものもあるので、

知識があればあるほど、コスト削減にも活かせます。

銀行借入に関する知識

賃貸物件を購入する際に、購入金額が多額になるため、銀行融資を使うことがよくあります。

私自身はいままで、すべて融資を使って、物件を購入してきました。

銀行と借入交渉をしていく中で、

銀行はどういう資料を必要としているのか、

銀行が融資に対して積極的(もしくは消極的)なのはなぜか、

借入期間や金利はどのようにして決まってくるのか、

保証協会ってなんのことか、

という銀行融資を取りまく情報に、非常に詳しくなります。

この知識や経験は、まさに税理士業に活かせますし、

実際に何度もお客様の融資のサポートをさせてもらっています。

また、知識も重要ですが、

なによりも、自分の身をもって経験した「億単位のお金を借りたときのプレッシャー」が、

社長さんたちと話をしていくうえで、自分の発言に説得力を持たせてくれます。

子どもたちは、遊べるならば、昼も夜もあまり関係ないようです。
大人は、一刻も早く帰りたい。

業者交渉や銀行交渉などの交渉能力

賃貸経営をしていくなかで、

交渉ごとの微妙な匙加減を、いつも経験させてもらっています。

単に、上から下への一方的な交渉、というものではなく、

今後も長くお付き合いをしていく相手との緩やかな交渉です。

基本的に、交渉する前から結論が出てしまっているものは、

「交渉」ではなく「指示」です。

また、一回だけの取引といえども、

相手の利益を引っぺがして自分の懐に入れようとするような行為は、慎むべきです。

とはいえ、無尽蔵にお金があるわけではないので、

提示された金額や期間について、もう少し譲歩をしてほしい、という場合もあります。

そういうときに、相手との信頼関係を壊さないような交渉の仕方、というのを、

日々考えながら、実践させてもらっています。

「自分でリサーチし、自分で決定する」という習慣

賃貸経営をしていて、一番得るものが大きいと感じるのが、

この「自分で決定する習慣」です。

賃貸経営に限らず、経営の第一線では、迷うことが多いです。

なにせ、どうなるかわからない未来のことを、

何の保証もなしに、いま決めなければならない、

という場面に、しょっちゅう出くわすからです。

毎回迷いますし、できれば信頼できる人に、判断を預けたくなります。

でもやはり、どんな場合でも、自分のビジネスに関しては、

自分で結論を出すのがベストだと思います。

自分のビジネスに関して、自分以上に真剣に考えている人は、いないからです。

最近思うのですが、

私は以前から、

ビジネスに関してもビジネス以外のことでも、お客様から相談を受けることが多いのですが、

それは私が「自分で決める辛さや苦労」を経験してきたことで、

少しでも、お客様の苦しい心情に寄り添おう、という姿勢を感じてもらえている、

ということなのかもしれません。

不穏な気配を感じて、駆け出す子どもたち。
夜の公園は、いろんな点で危険です。

まとめ

リートにはない賃貸経営の魅力(というか苦労)について、書いてみました。

やはり、「苦労するからこそ身につく」のでしょうし、

苦労して身につけた知識や経験は、それがまた違う経験をつれてきてくれる、という意味で、

自分にとって本当の財産なのだろう、と思いました。

やはり、同じ賃貸物件から収益を得るといっても、リートと賃貸経営は全くの別物ですし、

リートには魅力を感じません。

昨日も一軒、リフォーム前のお部屋に入居申し込みをいただくことができました。

管理会社からの「申し込みが入ったよ」という連絡は、ダントツにテンションが上がります。

賃貸経営は、一生やっていきたいビジネスです。