過去の経費の計上漏れを、当期の経費に計上するリスク

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

経理業務には、ヒューマンエラーが付きものでして、

注意していても、漏れが生じることがあります。

そういうときに、

「浅原さん、この計上し忘れた経費は、今期にまとめて計上しちゃってもいいよね?」

と聞かれることが多いのですが、

残念ながら、原則として、

「今期まとめて計上」はできないことになっています。

でも、私の場合は、ケースバイケースで、

「今期まとめて計上」をしてしまうときもあります

今日は、

前期以前の経費の計上漏れが見つかった場合の修正対応について、書いてみます。

なお、本記事では、所得税、法人税の計算を主眼において書いています。

消費税の計算については、補足的に触れる、という形にしてあります。

考えられる対応と原則的な対応

経費の計上漏れが見つかった場合の修正のしかたとして、

考えられえる対応方法は、次の2点です。

  • 経費が発生した年度の申告書を作り直す(いわゆる修正申告。正しくは「更正の請求」という)
  • 現在進行中の年度(今期)の決算書にて、まとめて経費計上する

この2つのうち、原則的な修正方法は、

「過去の申告書を作り直す方」です。

なぜかというと、

過去の経費を今期の税金計算に組み込んでよい、という法律が、

ないからです。

ですので、横着せずに、過去の申告書を作り直しましょう。

ただ、その場合にも考えておかなくてはならないことがあります。

それは、次の点です。

  • 過去の申告書を作り直すコスト

顧問税理士に修正申告(ただしくは「更正の請求」といいますが、

作業内容は、ほぼ修正申告と一緒です)を依頼するには、

当然、追加の手数料がかかるでしょう。

税理士側のミスで、計上漏れが生じた場合なら、

追加の手数料なしで対応してくれるかもしれませんが。

仮に、

顧問税理士に依頼せずに、自力でやろうとする場合は、

税務署に行って、修正のしかたを教えてもらいながらやるのが、

早くて確実でしょう。

  • 税務署に、修正内容について詳しく調べられる

私自身も、過去に更正の請求を何度もしていますが、

修正内容の根拠となる資料を、しっかり、整合をとったうえで、

提出することを求められます。

さらに、

提出した資料を一通りチェックされた後、

「追加で、これとこれを出して」と税務署から指示されることも、多いです。

あと、

必ず紙ベースで提出することを求められます。

往々にして、更正の請求は手間がかかります。

自力で対応すれば、お金はかからないのですが、

時間は取られるでしょう。

  • サイアク、税務調査の引き金になるかも

こういったやり取りが引き金になり、

税務調査を誘発する可能性もあります。

「税務署に、めー付けられる」ということです。

「うちは、ヤバネタ何にもないよ」という方であればいいのでしょうけど、

それでも調査がくると、対応の手間と時間が奪われます。

あと、顧問税理士の調査対応の手間賃も。

こういった事情も踏まえて、

過去の申告書の修正に手を付けるのかどうかを、

お客様とともに考えるようにしています。

私が、まとめて今期の決算書に計上してしまうとき

原則的な修正方法によらずに、

今期の決算書に、まとめて計上してしまうときもあります。

原則的な対応に対して、

今期の決算書で処理するというのは、例外的な対応、と言えます。

どのような場合に、「今期まとめて計上」をするのかというと、

前述した諸事情を踏まえて、次の条件を満たした場合です。

  • 税務調査で否認されるリスクを、お客様が承知してくれること

イレギュラーな会計処理をする場合には、

この「お客様のリスクの承認」が大前提になります。

もっとも、いくらお客様がよい、とおっしゃっても、

税務調査で否認されるリスクが高い、もしくは、

否認された場合のダメージが大きい、という場合には、

この例外的な方法ではなく、原則的な方法をお勧めするようにしています。

  • 追加計上する経費が、全部合わせて10万円未満

税務調査では、「少額不追及」という考え方があります。

あまり細かい部分については追求しない、という税務署側の理論です。

あまりこの点を拡大解釈するのは危険ですが、

確かに私自身、過去の調査で、

細かい金額の経費については指摘を受けたことはありません。

これはあくまで私自身の基準にすぎませんが、

「10万円未満」というのを、少額と捉えるようにしています。

(固定資産も、「10万円未満の物は資産計上しなくてよい」という法律がありますし)

  • 今期が赤字確実である場合

この例外的な「今期まとめて計上」が認められなかった場合は、

結果的に「追加計上した経費と同額の利益が増える」ということになります。

としますと、

「追加計上した経費がなかったとしても、まだ赤字である」、

もしくは

「前期からの繰越欠損金が残っているので、税金がかからない」という場合には、

仮に、税務調査で追加計上の経費が否認されても、追加納税というダメージがありません。

こういう場合なら、今期まとめて計上でもよいでしょう。

消費税の扱い

「今期まとめて計上」という方法が、本来認めらないというのは、

消費税計算においても同様です。

ですので、

消費税の納税義務のある事業者様が、もし「今期まとめて計上」をしようとするなら、

それは、「法人税や所得税の追加納税のリスク」とともに、

「消費税の追加納税のリスクも背負っている」ということを、自覚しておきましょう。

まとめ

上記の内容をまとめますと、次のような対応になるでしょう。

少額の経費計上もれを修正する場合

  • 修正額が10万円未満の場合

・・・「今期まとめて計上」でもよい

多額の経費計上もれを修正する場合

  • 原則的には

・・・過去の申告書を修正する方法による(原則対応)

  • 今期が赤字、もしくは前期からの繰越欠損金がある

・・・「今期まとめて計上」でもよい

  • 納税者様が、税務調査で否認されてもよい、と判断した

・・・「今期まとめて計上」でもよい

  • 税務調査に入られたくない

・・・原則対応(修正申告)すらも、やめておいた方が無難

最終的には、ケースバイケースになりますので、

諸般の事情を総合して、判断していただければと思います。

(当事務所では、次のサービスを提供しております)

◇税務顧問サービス

昨日の仕事

  • 清水区江尻町のお客様の月次データの確認
  • 空手稽古

フルコンタクト空手では、手で相手を押すのが反則行為であることを、初めて知った

それと合わせて、肘で相手を攻撃するのは可であることも教えてもらった

後者は、恐ろしいルールだ

稽古の後。毎回、汗でグチャグチャ。