赤字決算とリスクヘッジ。赤字でも大丈夫な場合をまとめました

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

過去のブログで、決算数値はできるだけ黒字にしておきたい、

ということを述べていますが、

では赤字決算で着地させてもよい場合とは、

について書いてみたいと思います。

パーキングエリアで見かけたガチャガチャ。

決算数値の影響

単純に捉えると、黒字決算であれば、

「経営がうまくいっていた」という見方をされます。

経営がうまくいっている黒字企業ですから、

「銀行借り入れがしやすい」ですし、

「税金も多く払う」ということになります。

それに対し、赤字決算であれば、

「経営がうまくいっていない」という見方をされますので、

「銀行からお金を借りにくい」かつ

「支払う税金は少なくて済む」ということになります。

決算数値は、主に、銀行借り入れのしやすさと、納税額の多寡に影響してきます。

赤字決算のデメリットは、

銀行借り入れの面でマイナス作用を及ぼしやすいという点にあります。

さらに、赤字決算を組んだ場合、

決算後の翌年が、最も銀行に対するマイナス作用が大きくなります。

直近で、経営がうまくいっていない、という見方になるからです。

これが、翌年度では黒字転換された場合には、厳しい見方がやや緩和されます。

その後、黒字決算が2年続けば、またさらに、見方が緩和されます。

しかし、銀行から見ると、

「直近の過去3年間がすべて黒字」という場合と、

「直近2年は黒字だけど、一昨年度が赤字」という場合では、

前者の方が融資に取り組みやすいのは、いうまでもありません。

少額でいいので、黒字を出しておくだけで、

融資の難易度を下げることができます。

赤字決算でもよい場合

赤字決算でもよい場合、というのは、

赤字決算を着地させても、「銀行融資への影響が少なく済む場合」

のことを指します。

具体的には、次のような場合です。

手元の運転資金が潤沢にある場合

この先2~3年間、イレギュラーな事態が生じたとしても、

資金繰りが持たせられるくらいの潤沢な資金が手元にある場合であれば、

そもそも、銀行借り入れは必要ないでしょうから、赤字決算でも問題ありません。

ただ、その場合でも、

経営者が住宅ローンを借りる予定がある場合には、

少しでいいので黒字決算にしておくことをお勧めします。

経営者が住宅ローンを組む場合には、

経営する事業の成績も併せて審査の対象になります。

当座借り越し枠が、十分にある場合

あらかじめ取引金融機関と当座借り越し契約を結んであり、

まだ使っていない借り越し枠が十分に残っている場合には、

実質的には前述の資金が潤沢にあるパターンに近いため、

赤字決算を組んでも問題はないと思われます。

十分な担保用不動産を保有している場合

担保用の不動産をお持ちであれば、決算は赤字であっても借入はできます。

いざとなれば、その不動産を売却して、運転資金を得ることもできます。

不動産を持っている、というのは、事業経営をしていくうえで、非常に心強いです。

もっとも、その不動産は絶対に手放したくない、という場合には、

借入を起こす際にも担保提供はするべきではありませんので、

黒字決算にしておくか、別の手段での借入のめどを立てておく必要があります。

事業開始直後の赤字

新しく事業を開始した場合には、開始から1~2年は赤字になりがちです。

これは、現実的に致し方ないと思います。

できることなら、事業開始の時点で、大目にお金を借りておきましょう。

金融機関もこの間は、

最終利益がどうかというよりは、事業として成立しそうかどうか、

つまりお客様がついてくれそうかどうか、

という点を重視して見てくれているように感じます。

事業開始直後は、

会計操作をする材料も少ないので、決算調整の幅も少ないですが、

できることなら、見た目だけほんの少しでいいので、黒字にしておきたいところです。

一過性の原因による赤字

たとえば、私は賃貸経営をしていますが、

賃貸マンションを購入した年度は、高い確率で赤字になります。

もともと賃貸経営は、

1億円の物件から得られる年間利益は1,000万円程度、という、

投入した資本から得られる利益額の低い事業です。

さらに、不動産の購入の場面では、

仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、といった、

購入年度にだけかかってくる費用や税金が多額にあります。

そうなると、どうしても、物件を購入した年度の決算では、

その年の利益を費用が食いつぶしてしまい、赤字になりがちです。

しかし、私の経験上、その赤字が、

融資の妨げになったことはありませんでした。

事業のメカニズム上、事業を発展させていくためには、

どうしても避けられない赤字、というものもあります。

それが毎年継続するとなると、また別ですが、

その年のみの一過性の赤字であれば、金融機関は大目に見てくれることが多いです。

一過性の赤字の場合、その原因となる出費は、

損益計算書上、特別損失として計上するようにしましょう。

そうすることで、経常利益の段階まで黒字にできていれば、

金融機関も安心できます。

リスケ中の場合

金融機関に対して、リスケ申請を行い、

元本返済を止めるか減額してもらっている場合には、

新規の借入は難しいので、赤字決算でも支障はないと思われます。

もっとも、リスケ中の会社が、実際に赤字のままだと、

資金繰りが持たないため、経営の継続自体が困難になります。

ですので、この場合の「赤字」は、

税金の納税額を抑えるために、「意図的に作り出した赤字」を意味します。

まとめ

私の経験も踏まえて、

赤字決算で着地しても融資への影響が少ない場合(一部、赤字決算を受け入れるしかない場合)について、

まとめてみました。

赤字か黒字かで迷われている方の参考になれば、幸いです。