「売上高」と「雑費」だけで税計算はできる。勘定科目で悩むのはやめよう

お疲れ様です。

静岡市の税理士、浅原慎一郎です。

事業をされている方は、会計帳簿を作成することになりますが、

税金計算をするためだけに会計帳簿を作成するなら、

勘定科目は、「売上高」と「雑費」があれば、できてしまいます。

(そんな極端なことをする必要はありませんが)

勘定科目をどれにするかで悩む必要はない、ということについて書いてみようと思います。

清水港で釣りをする娘と、遠くに見える富士山

勘定科目が違っても、税務署は指摘しない

どの収入や支出が、どの勘定科目に割り当てられるか、という点について、

厳密に法律で決められているわけではありません。

厳密には決められてはいないものの、大体のところは決まっています。

つまり、おおむね常識的な分け方ができていれば大丈夫、ということです。

人件費を払えば「給与」、税金を払えば「租税公課」、

という連想ゲームレベルで大丈夫です。

いままで私は、何度も税務調査の対応をしてきましたが、

勘定科目の違いを指摘されたことは一度もありません。

「これは広告宣伝費なのに、なぜ雑費に計上しているんですか」みたいなことです。

法人税や所得税計算で、最終的に税額の決め手になるのは、

「利益」もしくは「所得」です。

(『所得』というのは、法律によって言い方が違うだけで、中身は利益と同じです)

利益の額は、収益から費用を差し引いた金額ですので、

「収益に計上すべき収入」が、「いくつかある収益項目のどれか」に計上されており、

「費用に計上すべき支出」が、「たくさんある費用項目のどれか」に計上されていれば、

正しい利益額に到達できます。

税務署が気にしているのは、

「正しい利益額になっているかどうか」、であって、

「正しい勘定科目に割り振られているかどうか」、ではありません。

重要なのは正しい「利益額」と、経営分析に使える程度の割り振り

正しい利益額が計算できれば、税額も正しいものになります。

とするならば、

「収益に計上すべき収入」を、すべて「売上高」に集めてしまい、

「費用に計上すべき支出」を、すべて「雑費」に計上すれば、

売上高と雑費の差額が利益額になりますので、利益計算はこれで完了です。

冒頭の、「売上高」と「雑費」だけで完了、ということになります。

もっとも、会計帳簿を作成する目的は、税金計算だけではありません。

粗利率や営業利益率などの経営分析の指標や、前年度との比較にも使いますので、

ある程度は、勘定科目は分けて作成しておいた方がいいでしょう。

さすがに、すべての費用を「雑費」にしていては、

黒字だったか赤字だったか、しか分かりませんので。

ここで言いたいのは、社長さんや事業主さんが、

「経営判断に必要と思われる情報をピックアップできる程度に」勘定科目が分けられていればよい、

ということです。

会計制度に沿って、勘定科目を厳密に分けたとしても、

細分化された結果、逆にわかりづらい、ということも多々あります。

科目分けは、厳密にやればいい、というものでもないと感じています。

勘定科目選びで悩むのは時間がもったいない

個人的には、次のような分け方で十分ではないかと思っています。

  • メインの売上・・・「売上高」
  • それ以外の収益・・・「雑収入」
  • 商品原価(もしくは原価に入れておきたい費用)・・・「仕入高」
  • 人件費・・・「給与」
  • 社会保険関係・・・「法定福利費」
  • 光熱費関係・・・「水道光熱費」
  • 税金関係・・・「租税公課」
  • 少額備品、消耗品・・・「消耗品費」
  • 損害保険・・・「保険料」
  • 贈答品、接待飲食・・・「交際費」
  • その他の費用・・・「雑費」

社会保険関係、税金関係、保険関係は、消費税計算をするときに影響がありますので、

最初から分けておくことをお勧めします。

また、交際費の関係も、法人の場合は制限がありますので、予め分けておいた方がいいでしょう。

それ以外は、経営分析に必要と思われる項目を、追加で分けておき、

重要性の低いものについては、

収益は「雑収入」、費用は「雑費」に放り込んでおけば大丈夫です。

会計帳簿は、作成することに時間をかけても意味がありません。

詳細に作りこんでも、そこまで必要ないことが多いです。

勘定科目をどれにするかで悩んで、貴重な時間を浪費することは避けましょう。

まとめ

勘定科目の割り振りで迷う時間はもったいない、

勘定科目の厳密さを追求する必要はない、

ということについて、書いてみました。

スモールビジネスであれば、人手も時間も限られていますから、なおさらです。

事務作業は、時間をかけようと思えば、いくらでもかけることができてしまうので、

優劣を明確にするよう心がけましょう。