役員貸付金の消し方

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

先日、法人成りをしたときに、

役員貸付金が発生してしまうパターンについてブログで書きました。

今日は、発生してしまった役員貸付金をどうやって消していくか、

について書こうと思います。

暑い日が続きますね

役員貸付金は、放置するとまずい

なぜまずいのかというと、次のような問題を抱えてしまうからです。

  • 銀行との融資交渉の際に、マイナスポイントとして見られてしまう。
  • 毎期、役員貸付金の残高に対し、受取利息を計上しなければならない。その結果、利益が余分に計上され、同時に税金も余分にかかる。
  • 会社を清算する段階でも、未清算の役員貸付金が残っていると、最終的にその役員貸付金は回収放棄をすることになる。その回収放棄をした金額と同額が、該当の役員にとっての給与となる。つまり、役員個人に所得税と住民税が、一挙にかかってくる。

まずいですね。

とくに、三つ目の「給与扱い」が、貸付金残高が大量に残っている場合に、大きな問題となります。

役員貸付金の消し方

本来ならば、役員が自分の個人のお金を会社に返す、という形で清算完了とすべきです。

しかし、それができないから困っているわけで。

そういった、お金を動かしたり、お金の代わりに不動産で返済したり(不動産で返済するとなると、

譲渡所得・登録免許税・不動産取得税がかかってきて、やらなきゃよかったとなる可能性が高い)、

という現実の清算ができない場合に、どうやって消しこんでいくか。

次のような方法があります。

役員報酬を増額し、その「増額した部分」を役員貸付金と相殺する

例えば、従来は毎月50万円だった役員報酬額を、毎月70万円に増額します。

そして、役員個人に支払うのは引き続き50万円とし(社保や源泉の天引き分は省略します)、

増額させた20万円部分を、役員個人には支払わずに、役員貸付金と相殺します。

これにより、役員貸付金は、少しずつですが、確実に毎月減っていきます。

この方法の注意点は、役員報酬額を増額することで、

社会保険料や役員個人にかかる所得税・住民税が増加してしまうことです。

このデメリットを緩和させるためには、

その役員の家族の報酬(家族を役員にいれてたら、の話です)も少しずつ増額させて、

報酬増加が一人に集中してしまうのを回避するとこで、コストの増加割合を抑えることができます。

自宅や自分の車を会社に貸し付けて、その賃料と役員貸付金を相殺する

役員の自宅を、会社の本店所在地として登記し、自宅で事務作業ができる環境を整えておけば、

会社から役員個人に「事務所の賃料」として、家賃を支払うことができます。(持ち家でも賃貸でも)

また同様に、役員個人の車を、会社が借り上げている、ということにすれば、

「社用車のレンタル料」として、役員個人に賃料の支払いができます。

これらの賃料関係を、実際に支払うのではなく、役員貸付金と相殺していくことで、

上記役員報酬と同様、毎月役員貸付金の残高を減らしていくことができます。

この方法のデメリットは、これも役員報酬と同様、役員個人の所得税・住民税が増加してしまう、

ということです。(給与ではないので、社会保険料は増えない)

また、設定する家賃や車のレンタル料は、取引相場に近いものでなくてはなりません。

ですので、ネットなどで近隣相場を調べたうえで、金額を設定する必要があります。

役員退職金と相殺する

上記、役員報酬の増額分や、自宅・車両のレンタル料での相殺では追い付かない場合、

最後は、会社清算のタイミングに合わせて役員退職金を支払うことにし、

実際には支払わずに、役員貸付金と相殺させる。

これしかないでしょう。

役員退職金ならば、勤続年数に応じて、ある程度金額を膨らませることは可能です。

また、社長の身内を役員に登記していれば、その身内ごとに退任するタイミングで、

同様に役員退職金を支払うことにすることも可能です。

(ですので、役員貸付金の消しこみに難儀している会社さんは、できるだけ身内の方々を、

経営に参加させておいた方がいいでしょう。嫌がられるかもしれないけど)

逆に見ると、この退職金との相殺で賄いきれないような額の役員貸付金は、

回収放棄による給与課税を受けるしかない、ということです。

早めに手を打つことが重要

役員報酬の増額分や、自宅・車のレンタル料での相殺、という手法は、

一気に役員貸付金の残高を減らす、ということには向いていません。

毎月、少しずつ確実に減らしていく、という方法になります。

長く取り組めれば、役員貸付金を減らせる額は、確実に増えていきます。

つまり、本件については、早めに手を打つ、ということが肝心です。

会社を清算する段階になって、「どうしよう!?」となっても、

その際にとれる手段は、退職金との相殺しかありません。

退職金との相殺で、消しきれればいいのですが、

それは、その段階にならなければわからないことです。

気になる方は、ご自分の会社の試算表を、

ところどころでチェックしておくことをお薦めします。

昨日の仕事

  • 昨年の年末調整資料の整理

忙しくてなかなか手を付けられなかったデータの整理が、ようやく片付いた。

ちゃんとやっておかないと、今年の年末調整で泣きを見ることが明白だったし。