「友だち価格」の注意点

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

事業をしていると、悩ましい場面に出くわすことがありますが、

そのうちのひとつが「友だちからの仕事の依頼」です。

友だちから仕事をいただけることは、とてもありがたいことであり、喜んで対応させてもらうのですが、

仕事が完成したあとの「手数料の請求額」については、悩んでしまいます。

悩まない人は、全然悩まないのでしょうけど、わたしは悩んでしまう性格です。

「友だちだから、ということで仕事をさせてもらったのなら、やっぱり額面通りは請求できないな。

割安な感じにしないとな」と。

しばらく悩んでいた友だち価格について、今年の夏、その悩みを解消しました。

「友だち価格」について、経験したことを書いてみようと思います。

SDGsについての発表会に参加。
低価格の裏にある歪みについて、子どもの立場からの意見を聞く。
「安けりゃいい」という時代は、もう終わる。

友だちからの依頼

10年ほど前に、学生時代からの友だちが事業を始めるということで、

税務顧問の依頼を受けました。

当時わたしも、税理士として独立したばかりでしたので、

お互い頑張ろうじゃないか、ということで、ありがたく引き受けました。

ただ、当時のわたしは、独立したてて時間にも体力にも余裕がある状態だったのと、

彼の事業を応援したいという気持ちで、

とても安い金額で、税務顧問を引き受けてしまいました。

税務顧問の仕事は、専門知識が必要で、責任も重いので、

軽い気持ちで引き受けられるものではないのですが、

当時はまだ、そのあたりのことがわかっていなかったんですね。

彼も手探り、わたしも手探り、という状態で、

報酬と負担のバランスはほとんど気にすることなく、

目先のやるべきことに追われるような期間が、数年間続きました。

税理士業が軌道に乗ってから

わたしが、「引き継いだ会計事務所を、別の税理士に引き渡して・・・」というのが、

ひと段落したあたりで、

「お客様は20社超、対応するのはわたしひとり」という状態でした。

税理士事務所の経営としては、安定した経営ができる顧客規模にはなりました。

しかし、事務処理も会計報告もコンサルティングも、すべてわたしひとりで対応していたので、

非常に忙しい期間が続きます。

毎日の残業や土日の仕事は当たり前の状態でした。

ただ、そのような状況でも「友だち価格」の影響は、まだ飲み込める範囲でした。

(ちゃんと向き合う余裕がなかった、とも言えますが)

その後、税理士としての「自分の軸」が出来上がってくるにつれて、

わたしの軸には合わないと感じられたお客様は、離れていきました。

次第に、日々忙しいながらも、「許容できる忙しさ」に落ち着いてきました。

問題は、ここからでした。

体力的にも気持ち的にも、余裕ができて、

また新しいお客様との出会いを求めて、営業活動に力を入れていこう、としたときに、

新しい依頼を引き受けられる空き枠は、

現在抱えている業務量とそれに対応する報酬額で決まってくるのですが、

友だち価格で対応している友人からの仕事は、空き枠を、しっかりと圧迫しています。

どう見ても経営的にはマイナスです。

作業時間も責任も、友だちだからと言って免除されるわけではなく、

かといって、報酬が少ないから部分的に作業を省略しよう、ということもできません。

報酬が多かろうが少なかろうが、友達であろうがなかろうが、

税務顧問を引き受けた以上は、その方は「お客様」であり、「一件」です

この段階に至って、ようやく私は、

「この友だち価格の設定は、やっちまったかも」と気付きました。

自分も苦しいが、友達も苦しい

友だち価格のつらい部分に気付いてからも、数年間は、そのことを放置していました。

なんだかんだ言いながらも、日々忙しいのと、

やはり友達とはいえ、お金のことは切り出しづらかったです。

とはいえ、新たに営業活動に力を入れると決めた以上、このまま放置を続けることはできない、

と腹を括って、今年の夏に、これらのことを友達に伝えました。

「本当は、業務量からすると報酬相場はこれくらいなんだよね。

今後の報酬額は、この相場に近づけたいんだよね」と。

彼は、報酬相場とともだち価格との開きに驚いていましたが、

「長いこと、安い金額で仕事させて悪かったな」と、理解を示してくれました。

このやりとりで分かったことは、

「友だち価格は、友だち側も苦しめる」、ということです。

彼は、「友だち価格」が相場だと思っていました。

「税務顧問は、年間△△万円くらいでやってもらえるものなのだ」と。

その前提で彼はコスト管理をしていたので、その段階で、認識のずれを生じさせてしまいます。

「どの税理士に頼んでも、だいたい△△万円くらいでやってもらえるだろう」というのは、

明らかに間違った認識です。

また、「安い金額で浅原に仕事をしてもらっていた」というのも、

彼の中に、軽い罪悪感を残すでしょう。

わたしのことを、友だちだと思っていれば、思うほどに。

「友だち価格」というのは、一見すると「友情の証」のようにも見えますが、

今回のことを通じて、わたしは逆の認識を持ちました。

「本当に相手のことを友だちだと思うなら、『友だち価格』を設定すべきではない」

というのが、いまの私の結論です。

期間や条件とセットで

とはいえ、お互いの置かれている状況によっては、

「友だち価格」を設定するしかないときも、あるかもしれません。

あまり望ましいことではないけれども、そういう時もあるかもしれません。

そういうときは、

「友だち価格で対応できる期間」や、

「友だち価格で仕事をする条件」を明示すること、をお勧めします。

あまり複雑な条件を設定してしまうと、あとでややこしいことになっても困るので、

期間を限定する方が、シンプルでよいと思います。

友だちは、お金で買えない以上、報酬額よりも友だち関係の方が重要であることは、疑う余地がありません。

しかし、言いたいことも言えない、

もしくは、一方的に我慢を強いられるような関係や条件ならば、

それはすでに友だち関係とは言えないでしょう。

友だち価格について話し合った結果、壊れてしまうような関係であれば、

残念ながらその関係は、長く続くような関係ではなかった、ということです。

それはそれで仕方がない、と受け入れていけばいいと思います。

昨日の仕事

  • 清水区今泉のお客様の月次データの確認

データ入力のスタッフさんが頑張ってくれてて、非常に助かっている。