【雑損控除・その3】「災害関連支出」について

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

雑損控除を計算していくうえで、一番大変なのが、

この「災害関連支出」の計算になります。

災害関連支出の計算は、非常にめんどくさいので、

「もういい、疲れた・・・」、

「復旧作業だけでもしんどいのに・・・」

と思うかもしれません。(税理士がやってもめんどくさいです)

そんな雑損控除について、このブログでは、

「しんどくても、最大限の控除を受けたい」という方に向けて、

「災害関連支出」の計算方法について解説します。

損失額や災害関連支出の計算書類を、
実際に作成してみました。
久々の手計算。かなり重労働。

【雑損控除・その1】「計算式」「災害の種類」「対象となる資産」について

【雑損控除・その2】被災資産の「損失額」について

自然災害に伴う保険金や補助金収入の取り扱いについて

雑損控除の計算式

別のブログでも説明しましたが、もう一度雑損控除の計算式を書いておきます。

雑損控除では、次のいずれか多い方の金額を、所得から差し引くことになります。

  • (「損害金額」+「災害等関連支出の金額」-「保険金額」)―「総所得金額等×10%」
  • (「災害関連支出の金額」-「保険金額」)―50,000円

そして、この計算式がいう「災害関連支出」は、次の3つの要素から成り立っています。

①「住居、家財、車両自体の取り壊し・撤去・処分代」

②「障害物の除去、原状回復費用ー損失額、損壊防止の費用」

③「災害拡大防止のための緊急措置の費用」

以下、それぞれについて、説明していきます。

※なお、上記計算式の「災害等関連支出の金額」の「等」の字は、①②③の災害関連支出の金額に加えて、「盗難や横領被害の際の原状回復費用も含めてよい」という意味です。

ですので、自然災害の際は、「等」の字は無視してもらって大丈夫です。

①「住居、家財、車両自体の取り壊し・撤去・処分代」

住居、家財、車両について、被災したことにより使用不可、再利用不可となった部分は、撤去処分をするしかありません。

その際の撤去処分にかかった費用は、全額、雑損控除の控除額に算入されます。

②「障害物の除去、原状回復費用ー損失額、損壊防止の費用」

まず、前提として、この②に該当する費用は、

「災害のやんだ日から1年以内に支出したもの」に限られます。

そして、その例外として、大規模な災害などのやむを得ない場合には

前述の「1年以内」が、「3年以内」に延長されます。

さて、「除去」「現状回復」「損壊防止」と、一緒くたに書きましたが、

これらの費用も細かくは3つに区分されます。

とくに原状回復費用がややこしいので、そこを中心に説明します。

「障害物の除去費用」

災害によって生じた土砂や流木などの障害物を、除去するための支出になります。

計算上は、その除去費用を、そのまま控除額に加算できます。

「原状回復費用ー損失額」

原状回復費用とは、被災資産のリフォーム、修繕の費用のことです。(一部、買い替え費用も含まれます)

「被災前の状態に戻す作業」までが、この原状回復費用に含まれることになります。

そして、この原状回復費用」には、構造的に「被災による損失部分」が含まれてしまうため、

この損失部分を、原状回復費用から差し引くことになっています。

反面、被災前の状態を上回るところまで価値を増加させてしまった場合には、

その価値増加部分については、原状回復費用からは除かれることになります。

平たくいえば、グレードアップ部分は認めない、ということですね。

ただ、実際の復興過程においては、

「せっかく直すならいいものにしたい」というニーズは、当然あるでしょう。

そのような場合、

グレードアップ部分とそれ以外の通常の修理部分とを、明確に区別できるならば、

通常の修理部分のみを原状回復費用として計算すれば、大丈夫です。

もし、グレードアップ部分とそれ以外の通常修理部分を明確に区別できない場合には、

その修理の全額を、7:3の比率で分けて、3割部分を原状回復費用として扱う

という処理が認められています。

【参考:国税庁HP】

法第72条《雑損控除》関係|国税庁 (nta.go.jp)

また、グレードアップは行わない、としても、

「被災した中古状態の家具と、まったく同じレベルの中古状態にまで使い込んだ家具」を探してくる

というのは、現実的に不可能です。

どうしたって、同じ品質、同じ型番のものを代替品として用意しても、

「新品になってしまう」ことは避けられません。

このような「品質は同等だけど新品」というケースの取り扱いについて、

税務署に問い合わせたところ、

「そのような場合には、修理代金全額を原状回復費用に含めることはできない」

という回答でした。

理屈としては、

グレードアップは無いにしても、「中古 → 新品」という点について、

価値の増加を認めないわけにはいかない、ということでしょう。

その結果として、

被災した資産の「修理」ならば、全額、原状回復費用に含まれますが、

被災資産の「買い替え」となると、前述の73基準により、

3割部分しか原状回復費用に含めることができない、という結論になります。

もっとも、「家財」に関しては、推定計算による被害価格をかなり多めに計上できるので、実際には修理や買い替えにかかった実費は、使わない可能性が高く、それゆえ上記の点をさほど気に病む必要はありません

このあたりのことは、

各地域の税務署や対応する職員によって、運用が異なる可能性もあるので(本来そんなことはあると困るのですが)、

疑問のある方は、税務署に聞いてみてください。

なお、同じく税務署の回答として、

「車両の『買い替え代』は、一切原状回復費用には含まれない」

とのことでした。

「損壊防止の費用」

被災した資産について、損壊防止、または価値の減少を防止するための費用は、

災害関連支出に含まれます。

具体的には、

「雪害における、雪下ろし作業にかかった費用」、

「水害における浸水家屋の、床下の乾燥や消毒にかかった費用」などが、

これにあたります。

③「災害拡大防止のための緊急措置の費用」

災害により、被害が生じ、もしくは被害が生じる「おそれ」が見込まれる状況下で、

その被害の拡大や防止のために「緊急な措置」を講ずるための支出についても、

災害関連支出に含まれます。

ポイントは、まだ災害による被害が発生していない段階でも、

被害発生の防止に使った支出は、災害関連支出に含めてよい、という点ですね。

台風で水嵩が増してきたときに使う土嚢や、

強風時の窓割れ防止のガムテープ、のイメージです。

無理してやるほどのことではない

ここまで頑張ってお読みいただいたのに、「なんじゃそれ」という感じですね。

例えば、そもそも税金自体をそんなに払っていないご家庭であれば、

がんばって雑損控除の申告をしても、還付される税金も限られてきます。

災害によって失ってしまった以前の生活を取り戻すだけでも、十分にしんどいですから、

さらに無理して、負担の大きい事務処理をしなくてもいいのではないかと、個人的には思っています。

条件さえあえば、

状況が落ち着いてから、さかのぼって修正申告(正しくは『更正の請求』といいます)

してもいいですし。(過去5年間分はさかのぼれます)

大変な状況が続いているけど、少しでも税金負担を抑えたい、という方は、

別のブログで書いた雑損控除の「損失額」だけの申告でも、十分だと思います。

雑損控除をしなくても、罰則などありませんから、

納税者さまが、自らの置かれた状況と相談しながら、

無理のない範囲で申告なさってください。