お疲れ様です。
税理士の浅原です。
先日、雑損控除に関するオンライン研修を行ったのですが、
説明しながらも、
「この複雑な制度を、本当に災害に被災した方たちが、
資料を用意して計算して、書類を整えて、申告まで辿り着けるのだろうか」
という漠然とした思いが、私の中に残りました。
そこで、事務が苦手な人でも、雑損控除に手を出せるように(出す気になるように)、
表題の計算セットを作ってみました。
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最小限の労力で雑損控除を計算する
はっきり言って雑損控除は、難しいです。
事務作業が得意な人なら、税理士が丁寧に説明をしてあげれば自力でできると思いますが、
すべて自力で情報収集しながら、申告書完成までもっていくのは、
相当労力がかかるはずです。
いわんや、事務作業が苦手な人なら、
調べる気にすらならないでしょう。
とはいえ、ちゃんと計算して申告しておけば、
「この先3年くらいは、税金の心配をしなくていいかもしれない」という、
生活再建に役立つ制度でもあります。
そこで、「最小限の労力」により、それなりの節税効果を得られるよう、
簡単に計算できる項目のみ残すことにして、あとは全部削りました。
その結果、事務作業に慣れている人ならば、15分くらいで、
雑損控除の計算書類までは作れるような説明書になりました。
事務作業に慣れていない人でも、30分あれば、
計算書類を作れるはずです。
30分の作業で、この先しばらく税金の心配をしなくて済むかもしれない、とするなら、
「コスパ良し」と言えるかな、と。
「住居」と「家財」の「損失額」のみ集計、ほかは無視
雑損控除の制度では、実額(取得価格)による計算が原則なのですが、
例外的に、「住居」と「家財」に関してのみ、推定価額による計算が認められています。
この計算セットでは、この推定価額による計算を、フル活用することにしました。
さらに、車両の損害と災害関連支出を、項目ごとまるまる削りました。
こうすることで、次のような手間を省くことにしました。
- 住居や車両を購入した時の契約書を引っ張り出す手間
- リフォーム代や修理代、撤去処分代などの金額を集計する手間
- 災害関連支出のめんどくさい計算の手間
これらの手間を省くことで、
雑損控除の計算に、手を出しやすくなったと思います。
雑損控除に必要な資料
住居と家財の損失額を計算するにあたり、必要な資料は次の3つです。
① 罹災証明書
- 被災状況の判定結果をチェック・・・被害割合表に当てはめ
- 「浸水被害」が明記されているかチェック・・・浸水の被害割合を加算する
② 固定資産税通知書
- 住居の「構造」「床面積」をチェック・・・住居の推定価額の計算に使用する
- 住居の「築年月」をチェック・・・住居の減価償却計算に使用する
③ 火災保険金の通知書
- 受け取った保険金額をチェック(無保険だった場合は不要)
上記3つの資料をご準備いただけたら、
あとは、この計算セットの説明と、雑損控除の計算用紙に書かれているコメント(指示書き)に従って、
マスに数字を入れていくだけです。
はじめて計算する人(内容からして、そういう人がほとんどだと思いますが)は、
とっつきにくさを感じると思いますが、
実際にやってみれば、さほど難しい作業ではありません。
ちゃんと計算して申告しておけば、その後のメリットも大きいので、
ぜひやってみてください。
この計算セットを使うのが、適切ではない場合
この計算セットは、
前述した「最小限の労力」で雑損控除の計算をするためのものです。
そのために、計算項目を絞り込んでいますので、
次にあげるような事例では、この計算セットの効果が少なくなります。
- 被災した資産が、「車両のみ」の場合
- 被災後に支出したリフォーム費用や修理代などが、かなり高額になる場合
このような事例では、
この計算セットでの計算に加えて、
車両の被害や災害関連支出の計算をしっかり行った方がよい、
と言えます。
そのような場合に、
「自分ひとりではムリー」となったら、
迷わず税務署に相談に行きましょう。
職員さんに聞けば、ちゃんと計算方法を教えてくれますから。