救済措置の頼りない文言

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

今週は2度、被災者支援の相談ブースに入って、対応をさせていただきました。

相談業務に活かせるようにと思い、自然災害の被災者についての救済措置を調べていた時に、

ある弁護士さんから、内閣府の被災者支援情報に関するサイトのことを教えていただきました。

さっそく、サイト情報を参考にさせてもらったのですが、実際に読んでみると

「〇〇について、減免できる場合があります」とか「〇〇の期限を、延長できる場合があります」と、

「場合がある」というコメントばかりです。

場合がある、ということは、場合がない、ということもあるはず。

バアイガアル・・・さて。。

これ、このまま相談者様にお伝えしていいのだろうか。

ぬか喜びさせるだけにならないだろうか、と心配になります。

被災状況は千差万別、ゆえに一律には言い切れない

ただ、実際に自分で、救済措置のとりまとめをしてみると、

言い切りができないものばかりであることに気付きます。

例えば、自宅の建物や土地が被災によって、水没したり、土砂が流れ込んできたりすれば、

固定資産税の減免制度の対象になってくるわけですが、

当然ながら、被災現場ごとに被災の程度に差があります。

そして、その被災の程度が、罹災証明に反映されるわけですが、

その証明書上では「一部損壊」「半壊」「大規模半壊」「全壊」と、大まかに区別されるだけです。

そしてさらに、固定資産税の減免額にも幅があり、どの程度の減免額になるかの基準が、

「家屋について、20%以上40%未満の価値が減じた」とか、

「土地の被害面積が、40%以上60%未満」とかの、

罹災証明とは違う言葉で設定されています。

こうなってくると、確かに言い切れない。

自宅が損害を受けたからと言って、「このくらいの被害なら、固定資産税が減免されますよ」とは言えず、

どうしても「被害を受けた場合には、固定資産税が減免される場合があります」という、

ぼかしの入ったフレーズになってしまいます。

救済措置があることは、アナウンスしたい。

しかし、救済されるかどうかの結論については、言い切れない。

相談ブースにいる人間からすると、

「はっきり言ってくれ、減るのか減らないのか、延ばせるのか延ばせないのか、どっち?」

という気持ちになります。

しかし、救済する側の行政サイドからすると、

「全員は無理、被害の程度に応じて個別判断」ということになるでしょう。

「救済されるのかどうか、救済されるまではわからない」

相談ブースでは、その事実が大前提であることに気付きました。

書いてあることを鵜呑みにはせずに、
受付窓口で確かめながら、
使える制度を利用していきましょう

使えるものは何でも使う

災害時には、いろいろなものが不足します。

限られたエリアで、生活もビジネスも、すべてを巻き込んで破壊していくのが自然災害です。

実際、台風被害直後の清水区では、飲料水、生活用水が不足し、

それに関連して、ポリタンク、ポリバケツ、保存食品、冷凍食品など、

水と食べ物に関するものが、店頭から無くなりました。

しかし、そういう状況下でも、今あるもので命をつないでいかなくてはなりません。

「あれがないからダメだ、これがないからできない、」とは言ってはいられず、

「今あるもので何とかする」という1週間を、わたしも経験しました。

その点からすると、前述の内閣府の頼りない救済措置情報についても、活用方法は十分にあります。

わたしのような被災現場が初めて、という人間にとっては、

「制度を調べていくための取っ掛かり」としてならこれで十分です。

そもそも、どういう救済制度があるのかすら、知りませんから。

災害の種類によっては、被害状況の規模や傾向、特徴なども変わってくるでしょうし、

その結果、救済措置の使いやすい、使いにくいなどの運用度合いも微妙に変化するでしょう。

救済措置が、被災現場でどのように運用されるかは、

その被災現場にいる専門家が、掘り下げていけばいいと思います。

それが、その地に居合わせた専門家の役割なのだと思います。

使えるものは何でも使う。使い方を考える。

被災現場には、そういうマインドが必要なのだと感じました。

自分のポジションで、できることをする

冒頭でお話したとおり、自然災害の被災者支援現場、というのは初めての経験です。

現在は、士業同士で作る災害連絡協議会というものに参加して、日常業務の合間に、

台風15号被害の法律相談や、被災者支援の情報提供などをしています。

当初、この災害連絡協議会というものは、弁護士さんたちが中心になって活動している集まりなので、

災害関係の専門知識のないわたしでは、あまりお役にたてないだろう、と思っていました。

まあそれでも、税理士ひとり、いないよりはいた方がいいだろう、と思って参加してみたところ、

思いの外、弁護士さんたちからは感謝の言葉をいただいて、すこし安心しているところです。

考えてみれば、災害時の相談は多岐に渡ります。

そして、いかに弁護士さんや司法書士さんといえども、

被災時の全分野を完全にフォローしきる、というのはさすがに無理でしょう。

建物の構造やマテリアル、泥が入り込んだ家の処置方法、税金や社会保険の細かい話、

本当に被災状況も相談内容も、千差万別でしたので。

被災者を救済する。

一人でも多くの被災者を。

そういう視点でみれば、すべの士業が協力しあい、網を広げて被災者を取りこぼさないようにする、

ということはとても重要です。

緊急性の高い低いの違いはあれど、税理士にもお役に立てる場面が多々ある、と感じました。

まとめ

現在、台風被害の被災者支援に取り掛かっているため、時間配分が、

「被災者支援に5割、事務所業務に4割り、賃貸業に1割」くらいの割合になっています。

関与先のお客様には、やや作業の遅れが生じており、申し訳ありません。

ただ、すべてのお客様は静岡市内の方ですし、さらに半数以上が清水区の方になりますので、

どうか今少し、わたしのわがままに目をつぶっていただければと存じます。

会計業務は、必ず法律上の期限までには仕上げますので、ご安心ください。