【静岡・台風15号】災害により、自宅に住めなくなった場合の「住宅ローン控除」の取り扱いについて

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

自然災害によって、自宅が損害を受けた場合、自宅の住宅ローン控除の取り扱いはどのようになるのでしょうか。

通常、住宅ローン控除は、その控除対象となる住宅に「住んでいること」が条件となります。

とすると、被災したことでその住宅には住めなくなり、引っ越しをした場合には、住宅ローン控除は、その住宅には適用できなくなりそうですね。

大丈夫です。

「被災したために住めなくなった」、という場合には、引き続き住宅ローン控除は使えます。

以下、詳しく説明します。

相変わらずのわけのわからない国税庁の文章。
もはや、被災者の方に理解してもらおうとは、
思っていないように見える。

原則

住宅ローン控除を受けるためには、納税者本人が、その家に住んでいなければならない

前述のとおり、原則的にはこの条件の下に、控除の可否を判断していきます。

なお、納税者本人やその家族が、転勤によって住めなくなった場合には、例外規定があります。

自宅が被災したとき(例外対応)

災害の影響で自宅に住めなくなった場合には、特例として、その家に住んでいなくても、引き続き住宅ローン控除を適用することができる

近年の自然災害の常態化に伴い、被災者保護の観点から、この上記のような特例制度が常設されました。

なお、この場合の住宅ローン控除の手続きは、被災前と同様、確定申告や年末調整にて行います。

例外の例外

もっとも、次のような場合には、この被災時の住宅ローン控除の特例は使えないとされています。

 被災した自宅を、居住用ではなく「事業用」として使うとき

 被災した自宅を、自己の居住用ではなく「賃貸用」として使うとき

 被災した自宅を、自己の居住用ではなく「親族等への無償貸付用」として使うとき

 被災者が、別の住宅を取得し、そちらで住宅ローン控除を使とき(重複適用の除外)

このような場合だと、例外をつくってまで保護するには当たらないだろう、という制度設計者の判断があったようです。

(個人的には、十分保護に値すると思いますけどね。災害によって引っ越しを余儀なくされて、引っ越し先の生活に馴染んだ頃に、また元の家に戻ってきて生活をしなければ、住宅ローン控除は認めない、というのは酷ではないかと。引っ越し作業はパワー要りますし。被災した土地や家屋は、簡単には売却できないでしょうし)

例外の例外の例外 その1

さ、ら、に、上記④の重複適用の除外と、上記①②③の有効活用の除外には、下記の例外規定があります。

まずは、④の重複適用の排除の例外です。

「被災者生活再建支援法が適用される市町の住人で、被災の影響で自宅に住めなくなった者については、住宅ローン控除の重複適用を認める」

災害の影響の結果、住宅ローンを2本抱えることになった場合、それが被災者生活再建支援法が適用されるほどの被害の深刻な地域であったならば、新旧それぞれのローンについて、住宅ローン控除を使ってよい、ということです。

例えば、令和4年台風15号被害では、被災者生活再建支援法が適用された「静岡市内」で被災して自宅に住めなくなった方が、新たにローンで自宅を取得した場合が、これに当てはまります。

例外の例外の例外 その2

次いで、上記①②③の有効活用の除外の例外です。

被災した旧住宅について、「事業用」「賃貸用」「親族への無償貸し付け」を行った場合には、旧住宅の住宅ローン控除は使えない。

これは、被災者生活再建支援法が適用される地域の住民も、同様です。

ただし、同支援法が適用される地域の住民のうち、「新たに住宅を取得した人」に関して、先ほどの「新住宅と旧住宅双方に、住宅ローン控除の重複適用ができる(例外の例外の例外 その1)」という規定を活かしていくためには、旧住宅について、何らかの有効利用や資産活用を認めていく必要があります。

(仮にですけど、住宅ローン控除の重複適用の条件として、「旧住宅を、空き家状態でキープしなければならない」とか、「家族を2手に分けて、新旧それぞれに、誰かしら住まなければならない」みたいな条件を付けると、たぶん誰もこの重複規定は使わないでしょうから)

そこで、

「同支援法が適用される地域の住民」のうち、

「新たにローンで住宅を取得した人」については、

「旧住宅につき、事業用・賃貸用・親族への無償貸し付け」を行ったとしても、

新旧双方の住宅について、住宅ローン控除の重複適用が認められます。

被災者生活再建支援法についてまとめ

「例外の例外の例外」までくると、単に制度の説明を読むだけでは、さっぱり理解できませんね。(被災者保護の制度なのに、被災者の方を向いて作られた制度とは思えない)

そこで、被災者生活再建支援法の適用地域の住民に関して、もう一度まとめておきましょう。

次のようになります。

〇被災して住めなくなった

・・・旧住宅について、空きや状態ならば、住宅ローン控除は適用できる

・・・旧住宅について、事業用、賃貸用、親族無償貸し付けを行ったときは、住宅ローン控除は適用できない

〇その後に、新たに2軒目の住宅をローンで取得した

・・・新住宅について、住宅ローン控除は適用できる

・・・旧住宅について、事業用、賃貸用、親族無償貸し付けを行ったとしても、住宅ローン控除は適用できる

被災地域の住宅ローン控除は、非常に複雑です。

使えると思っていたら使えなかったり、その逆もまた然りと。

ご自身のパターンだとどのような扱いになるか、心配なら、一度税務署に聞いてみることおお勧めします。

【参考】

No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 (nta.go.jp)

No.8013 災害を受けたときの住宅借入金等特別控除の適用期間の特例等|国税庁 (nta.go.j