【石川県能登半島・地震】地震被害のときの雑損控除、その他の制度の利用について

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

5月5日に発生した石川県珠洲市の地震について、

地震の影響で珠洲市の一部で断水が発生していましたが、

7日の午前には水道がほぼ復旧されたようで、

これから被害を受けた方たちが生活再建に取り組まれると思います。

税理士の私が、被災した方たちの生活再建に協力できることは、

「寄付」と「情報提供」です。

寄付は改めてしますので、

この記事では、

地震による被害が発生したときに使える「雑損控除」をはじめ、

そのほかの制度についても、

ざっと紹介させていただきます。

雑損控除とは

雑損控除というのは、

所得税計算における所得控除のひとつです。

「医療費控除のなかま」のようなものです。

かんたんにいうと、

「生活用の財産について、自然災害による被害をうけたときは、雑損控除を使うことで、所得税と住民税を安くすることができる」

というものです。

似たような制度で、

「災害減免法による税額控除」、

というのもあるのですが、

全体的にみて雑損控除の方が、

より長期間にわたって税金を減らす効果があるので、

迷ったら雑損控除を選ぶのがおすすめです。

雑損控除の対象となる資産

「生活用の財産」が対象となります。

つまりは、

「事業用の財産」と「趣味の財産やぜいたく品」は除く、

ということですね。

事業用の財産について被害を受けた場合のことは、後掲します。

り災証明書の入手

雑損控除を使う場合には、

まず手続きとして、

「り災証明書」を入手しておいてください。

今回の珠洲市の地震でも、

ひとまず、身の安全を確保して、

この先しばらくの生活の見通しがついたら、

珠洲市役所の固定資産税課に依頼して、

り災証明の現地調査に来てもらってください。

それと同時に、

被害の状況がわかる写真や動画を残しておくことを、

おすすめします。

「り災証明書」と「被害写真」、

この2つがあれば、

雑損控除をはじめ、

珠洲市役所や石川県による行政支援制度の利用、

保険会社への保険金の請求、

社会保険事務所による生活支援なども、

スムーズに手続きを進めていけます。

自宅が倒壊した場合

ここまで被害が大きいと、

税金の手続きなどは後回しで、

まず「住むところをどうする?」、

という話になりますね。

今回の地震でも、倒壊した家屋は、

数は多くはないものの、何棟かあるようです。

この場合の行政支援として、

災害救助法の応急修理手当や、

被災者生活再建支援法による支援金をはじめ、

自治体が行う住宅支援、

住宅金融支援機構の行うリバースモーゲージ(通称「災害リバモ」、民間のリバモとは違います)など、

生活再建に使える制度がいろいろとありますので、

ご自身の生活が落ち着いたところで、

検討してみるといいと思います。

ちなみに、雑損控除についてですが、

自宅が倒壊してしまった場合には、

住宅の被害に加えて、家財も破損していますので、

住宅と家財の損害額につき、

雑損控除を使うことができます。

住宅も家財も、この場合には、

被害額について見積もり計算を使うことができるので、

特に家財については控除額が膨らんで、

しばらく税金の心配をしなくてよい、

という状況に持っていくことができます。

自宅が倒壊に至らない範囲で損壊した場合

自宅が、

「倒壊には至らないが部分的に損壊した」という場合には、

住宅について雑損控除を使うことができます。

この場合には、

被害を受けたことによる「損失額」と、

その被害箇所を修理するために使った「リフォーム費用」や「障害物の撤去費用」について、

雑損控除の対象となります。

詳しくは、国税庁のHPや、

わたしの過去のブログを参照していただければと思います。

【国税庁HP】

No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁 (nta.go.jp)

【過去のブログ】

【雑損控除・その1】「計算式」「災害の種類」「対象となる資産」について

【雑損控除・その2】被災資産の「損失額」について

【雑損控除・その3】「災害関連支出」について

【雑損控除・その4】台風による浸水被害のときは、災害減免法ではなく雑損控除がおすすめ

【雑損控除・その5】雑損控除の「意外だな」と感じた取り扱いについて

家財が損壊した場合

自宅は無事だったが(無事ではなかった場合も含めて)、

家財が損壊した、という場合には、

家財について、雑損控除を使うことができます。

家財というのは、

「冷暖房器具、電化製品、家具、衣服、現金など」の、

生活用の動産の総称です。

家財については、

細かくひとつひとつの被害を拾っていくのは困難なので、

「住宅の主要部分(屋根、柱、梁、外壁、天井、床、階段)に被害を受けたこと」を条件に、

損失額の「見積もり計算」を行うことが認められています。

見積もり計算は、

被災者にとって、とても有利な設定となっているので、

ぜひご活用ください。

車両が損壊した

車両の被害についても、雑損控除の対象になりますが、

「生活用の車両」であることが条件です。

それがないと、日々の生活に困ってしまう、

というものですね。

そして、

バイクや自転車も、軽車両ということで、

車両に含めて計算することができます。

車両の損失額の計算では、

見積もり計算は認められていないので、

実際の購入価額で計算する必要があります。

雑損控除以外の制度

雑損控除以外で使える制度についても、簡単に触れておきます。

固定資産税の減額

固定資産税や償却資産税の対象となっている資産について、

被害を受けた場合には、

市役所の固定資産税課に被害を申請することによって、

固定資産税や償却資産税の減免を受けることができます。

珠洲市の固定資産税の減免ラインがどうなのかは、

市のHPをみてもわかりませんでしたが、

よく見るパターンとしては、

り災証明書の被害区分が「半壊」以上から、

減額対象となる場合が多いです。

市町村によっては、

「準半壊」から減額対象となる場合もあります。

事業用の資産(建物、設備、商品、車両)が損壊した

事業用の資産の被害については、

前述したとおり、雑損控除はつかえませんが、

その分、事業上の経費として、経費計上することができます。

法人でも、個人事業でも、同様です。

申告期限に間に合わない場合

地震の後片付けや生活再建などで、

とても確定申告やその他の申告・申請期限に間に合わない、

という場合があると思います。

そういう場合は、

法人税・消費税・住民税・源泉所得税でも、

そのほかの税務制度の申請期限でも、

さらには社会保険や固定資産税でも、

「期限の延長制度」がありますので、

その手続きの窓口となる機関に尋ねてみてください。

何の手続きもとらなければ、

たとえ地震の被害で間に合わなかったとしても、

「期限遅れ」として処理されてしまうことになります。

期限前の相談が難しければ、

申請期限の後でもかまいませんので、

「地震の影響で間に合わない」ということを、

相談しておくようにしましょう。

帳簿類を喪失した場合

地震によって、

帳簿類や経理資料がごちゃごちゃになってしまったり、

災害ごみと一緒に捨ててしまったりした場合には、

それはしょうがないことなので、

わかる範囲で帳簿を作っていくしかありません。

銀行口座の入出金であれば、

銀行に言えば入出金データを出してくれますので、

大丈夫ですね。

現金出納帳を手書きで作っている場合などでも、

前年の実績をベースに算出したり、

何かしら方法はありますので、

税務署に相談しに行きましょう。

まとめ

地震被害を受けた場合に、

想定される手続きについて書いてみました。

いずれにせよ、生活再建が第一です。

事務手続きは、そのあとで十分です。

ただ、あとでもいいので、

忘れずにやっておきましょう。

法律は、それを知っている人にしか、

味方になってくれませんから。