お疲れ様です。
静岡の税理士、浅原です。
税務の世界では、「お得な制度」と言われている即時償却や一括償却、特別償却などの
「通常の減価償却手続きを省略して、早期の費用計上を認めてくれる制度」について、
以前から何となく違和感(不快感?)を感じていました。
本音では、「別に、『お得』というほど得してなくね」と思っています。
(別のブログでは、「お得な制度」として紹介したことがありますが、それは一般論に寄せて書いたためですね)
これらの早期費用計上の制度に対し、あまりお得を感じない理由について、書いてみようと思います。
赤字の会社には、あまり効果がない
「早期に費用計上できる」ということは、「早期に利益の圧縮ができる」、
すなわち「早期の節税の実現」ということです。
それがなぜ「お得」なのかというと、
「来年節税するのと今年節税するのとでは、
今年節税して、浮いたお金を運用すれば、来年には1年分の運用益が得られるでしょ。
だから早期の費用計上がお得だね。」という理屈です。
これって、本当にお得なんでしょうかね。
節税で浮いた少しのお金を、どんな商品で運用するのでしょうかね。
外国株とか暗号通貨とかですかね。
いやいや、そんなものより、ご自身のビジネスでの運用が一番ですよね。
ご自身のビジネスは、黒字ですか、赤字ですか。
黒字だったら、ちまちました節税を頑張るよりも、営業に集中した方が儲かるでしょう。
赤字だったら、そもそも納税額はないわけですから、早期に費用計上したところで節税によるお得感はないですよね。
ひとまず、赤字の会社には、そもそも利益が出ていないわけですから、
節税の必要がない、という結論になります。
黒字決算にしたい会社には、あまり効果がない
即時償却や一括償却などの制度により、早期の費用計上を行えば、
当然ながらその年の利益は圧縮されます。
本当に、利益を圧縮しちゃって大丈夫ですか。
本当は、税金を払ってでも黒字をキープして、金融機関の評価を下げないようにした方が、
会社にとって利益になりませんか。
大手メーカーからの外注がメインの会社さんだと、
毎年決算書の提出を義務付けられているところもありますけど、
やはりそういうところも、黒字をキープしておかないと取引継続に難色を示されたりしませんか。
目先の税金支払いは、確かに痛手ではありますが、
それ以上に他社や外部からの財務評価の影響を受けやすい業種では、
黒字をキープしておくに越したことはありません。
そういう場合は、利益の圧縮もほどほどにしておきましょう。
この先もビジネスを続けるつもりなら、あまり効果がない
即時償却や一時償却の対象になる設備を購入したのに、即時償却や一時償却を選ばなかった場合はどうなるか。
その場合は、普通の設備と同様に法定耐用年数による減価償却で、毎期、費用計上していきます。
即時償却などを選ぼうが選ぶまいが、数年後には、設備価格の全額が費用計上されます。
あんまり急いで費用計上しても、しょうがなくないですか。
今年でビジネスを終わりにするつもりなら別ですけど。(そういう会社さんは、最後の年に、あえて設備の購入はしないでしょうけど)
先のことはわからない、とはいえ、来年も再来年も、ビジネスを継続していく前提でいくならば、
即時償却を選んでも選ばなくても、数年後の結果にほとんど違いはないでしょう。
ちなみに、普通に減価償却をすると、その設備は固定資産台帳に計上することになります。
その固定資産台帳にて、毎年減価償却費の計算をしながら(ソフトがやってくれるので手間はない)、
帳簿上の残高が減るのを見ていくのですが、
私は、この固定資産台帳について、次のような使い方をしています。
よく無駄遣いをしがちな社長さんから
「浅原さん、こんど車を買い替えようと思っているんだけど・・・」とか、
「新しい複合機の入れ替えの提案をうけているんだよね・・・」とか、
会話の中に、無駄遣いの臭いがし始めるときがあります。
そういうときに、おもむろに台帳を取り出し、
「社長、2年前に車買い替えたばっかりですよ。ほら、固定資産台帳でもまだ未償却残高がたんまり残っているし、そのあと細かい設備だっていっぱい買っているし、ちょっと節約しましょうよ」
と言って、社長さんをなだめています。
社長さんに、どういうものにお金を使ってきたか、再確認してもらうために、固定資産台帳は有効です。
一番の節約は、物を大事にすることですから。
早期の費用計上にこだわる必要はない
結論として、私は、早期の費用計上は、
期待するほどお得でもないし、こだわるものでも迷うものでもない、
と思っています。
昨日の仕事
忙しくて、何をしたか覚えていない。
良くない兆候だ