会計処理の「ブラック」と「グレー」についての私の考え方

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

先日、

顧問税理士として関与してきた会社様について、

顧問契約を終了する旨をお伝えしました。

理由は、「違法行為を指示されたため」です。

何度か、この点について意見交換をしましたが、

お互いに平行線だったため、やむなしと思い決断しました。

この件からは、学ぶことが多かったのですが、

ひとまず今日は、会計処理における「ブラック」と「グレー」の違いについて、

書いてみようと思います。

私が考える「アウト」な処理

税理士によって、何をアウトとするかは、

多少違いがありそうです。

たとえば、税務署出身の税理士さんであれば、

アウトゾーンを広めにとって、グレーゾーンを狭める傾向があるように感じますし、

経験の浅い税理士さんであれば、

アウトとグレーの境目がはっきり見えない場合もあると思います。

私に関していうと、アウトゾーンは明確でして、

ひとことでいうなら、「事実を捻じ曲げること」です。

わかりやすい例だと、

「売れたのに、売れなかったことにすること(事実の隠蔽)」

「買ってないのに、買ったことにすること(事実の仮装)」です。

このような事実の捻じ曲げによって税金を減らす行為は、

脱税のど真ん中ですので、やめておいた方が賢明です。

逆に、

「売れてないのに、売れたことにする」

「買ったのに、買ってないことにする」という

上記の逆パターンの場合(つまりは、赤字隠しですね)は、

税金を余分に払うことになりますので、

脱税というわけではありません。

しかし、こういった赤字隠しは、

最終的な着地方法をちゃんと考えておかないと、

ドツボにはまることになりますので、

できる限りやらない方を選択したいところです。

なにより、事実を捻じ曲げる行為は、

自分自身を欺くことにつながります。

自分を信じられなくなると、事業経営は辛いです。

私が考える「グレーゾーン」の幅

グレーゾーンの扱いは、

税理士さんによって非常に違いが出てきます。

かつて話をきいた税理士さんには、

「グレーゾーンを認めない、セーフなものしか認めない」

という人もいました。

私自身はグレーゾーンとは、

「解釈による振り幅」だと思っています。

たとえば、スマホの通信料を支払った際に、

仮に使用割合が、ビジネスと私用で50%ずつだったとして、

そういうときに通信料の50%を経費にする人もいれば、

全額を経費にする人もいます。

私自身は、何パーセントを経費に計上するかは、

その人の方針で決めてもらえばいい、と思っています。

ほかにも、パソコンを購入したときに、

私用のパソコンとビジネス用のパソコンを、厳密に分ける人もいれば、

私用PCもビジネス用PCも、全部経費に計上する人もいます。

ほんとうは、私用のパソコンを経費に計上することはいけませんが、

それとて、「ビジネス用のパソコンが壊れた場合の予備用PC」という位置づけであれば、

経費計上できないことはないでしょう。

つまりは、

「パソコンを〇〇円で買った」という大元の事実さえ動かさなければ、

あとは解釈の問題だと思っています。

こういう場合に、

「私用で使っている」という部分をクローズアップすることには、

あまり意味がないように思いますし。

(使い方なんて、本人の意思でどうにでもなる)

見方を変えると、

グレーゾーンを狭く解釈する方が、税理士は楽なんですよね。

頭を使わなくて済むので。

私自身は、ブラックは絶対やらない代わりに、

できるだけグレーゾーンを広く解釈するようにしてます。

「給与」をいじくる行為

ただ、いくら解釈の幅がある、といっても、

給与をいじくることはしない方が良いです。

「解釈の幅の中で給与をいじくる」、というのは、

すなわち、「給与を支払手数料や報酬扱いに切り替える、もしくはその逆」、

ということになります。

しかし、給与や報酬は、

源泉所得税の徴収事務が絡んできます。

源泉所得税の納付書には、

毎月の給与額や手数料などを明記しなければなりません。

さらには、

手数料や報酬は消費税が課税されるのに対し、

給与は消費税が非課税扱いです。

給与、賞与、報酬といったものは、

それらにまつわる関連事務が複雑なので、

下手にいじくると、資料同士の整合性がとれなくなります。

その点を税務調査で指摘されると、

言い逃れはできないでしょう。

まとめ

社長がご自身で会計帳簿から決算申告書まで仕上げている場合には、

基本的には、取引事実さえむやみにいじくらなければ、

アウトな処理にはならないはずです。

あとは、税務調査で指摘されたら、

自分の見解をがんばって主張していくのみ、ですね。

顧問税理士がついている事業者さんは、

この「事実と解釈の境界」を意識しながら、

税理士さんとしっかりコミュニケーションをとることをお勧めします。

税理士さんも、相手の考えに沿って、

グレーゾーンの取り方を調整してくれるでしょう。

グレーゾーンは、思いのほか、広いですから。