「事業割合」や「家事按分」の正解とは

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

個人事業の確定申告作業をしていて、ほぼ必ずお目にかかるのが、

「事業割合」です。

事業で使う設備を、一部プライベートで使ったりもしているときなどに、

その設備に関する経費を、

「事業用」と「プライベート用」に分ける処理を行わなければなりません。

事業割合以外にも、事業比率とか、家事按分などとも言われていますが、

全部同じことを指しています。

この事業割合を、どの程度の比率に設定するかについて、

たびたび迷うことがあります。

ただ、迷ったとしても、考え込む必要はありません。

事業割合とは、取引事実のことではなく、

「当事者の見解」そのものです。

「僕は、このように考えているよ」というものです。

よって、「正解」はありません。

事業割合の設定では、

「税務署に自信をもって説明できるかどうかが」が、重要です。

夕方5時の葵区紺屋町。だいぶ、日が伸びてきました。

「日数」を基準にする場合

例えば、車両関係について、考えてみます。

車両を、事業でも使っているし、プライベートでも使っているという場合には、

事業割合を設定しなければなりません。

簡単なのは、「日数」で決める方法です。

1週間のうちに、土曜日曜だけプライベートで使っている、ということなら、

「2日÷7日=0.285・・・」ということで、

25%から30%くらいでプライベートの分を計算して(この時点で、すでにアバウトになっちゃっていますけど)、

経費から除外しておけば大丈夫です。

同じように、「走行距離」で計算することもできます。

でも、いちいち車までメーター数を確認しにいくのもメンドいですから、

日数で割り算するのが、一番手っ取り早いです。

車両関係の経費としては、

ガソリン代、車検費用、自動車税、自動車保険料などがあります。

いったん、車両関係の比率を決めたら、

これらの経費には、全部同じ比率を当てはめて、

プライベート分を、必要経費から除外しています。

「面積」を基準にする場合

自宅で事業をしている場合、

借家ならば、家賃を経費にすることができます。

この場合によく使われる基準が、面積です。

例えば、全体で50㎡の広さがある借家にて、

そのうち6畳の洋間を使って事業をしている、としましょう。

「2畳」=「1坪」=「3.3㎡」ですから、

6畳ならば「10㎡」、ということになります。

よって、「10㎡÷50㎡=0.2」ということで、

20%を事業分として経費計上、

残り80%をプライベート分として、経費から除外すればオーケーです。

加えて、この家賃の中には駐車場も1台分含まれている、とか、

一月分の水道料も含まれている、といった事情がある場合、

その分を加味するかどうかですが、

私は、無視しています。

突き詰めていくと切りがないですし、

「室内の使用面積」のみで判断して差し支えないでしょう。

(少なくとも、私はこの計算方法について、税務署から修正申告を指示されたことはありません)

なお、上記は借家の場合ですが、マイホームの場合ならば、

上記のような面積割合で、事業部分にかかる建築費を算出して、

それを事業用の設備(建物)として、

減価償却を通じて経費計上していくことになります。

(その場合、住宅ローン控除の計算に影響が出てくるので、ご注意ください)

基準がわからない場合

たとえば、

電気・水道・ガスなどの光熱費関係、

携帯・スマホ代・通信回線などの通信関係、

浄化槽清掃・マンションの修繕積立金などのメンテナンス関係、

といったものは、どのように考えればいいでしょうか。

私の場合は、

まず、その経費の性質が、

上記の日数按分や面積按分の項目に近しい、といえるときは、

その基準を流用するようにしています。

そして、その近しい基準が使用実態に合っていない場合、

もしくは近しい基準がない場合には、

ざっくりとエイヤで決めてしまいます。

(ちなみに私の場合、エイヤで決めるときは、

だいたい10%・20%・50%のどれかにしています)

光熱費関係は、一見すると、住宅関係だから面積按分で行けそうな気もしますが、

実態に即して考えると、やはり面積按分では説得力に欠けるでしょう。

(電気水道は、ほとんどプライベートでしょうし)

通信関係は、日数も面積も関係ないので、エイヤ基準で行くしかないでしょう。

メンテ関係は、これも私の場合、エイヤで行くことが多いです。

もし、税務署から、エイヤ基準の根拠について聞かれたら、こう答えましょう。

「私にも、合理的な判断基準がわからないから、およそ実態に即して、この比率を使いました。

もし、これが正しくないとするならば、そちらがお考えの判断基準を教えてください」

そして、税務署の判断基準では根拠としてふさわしくない、ということで、

論破していきましょう。

税務署もめんどくさくなってきて、論破している途中で、折れます。(たぶん)

見解の相違、というフィールド

気になるのは、やはり税務調査が入った場合に、

自分で考えた按分比率で通るかどうか、という点です。

冒頭でも書きましたが、ポイントは、

「自信をもって説明できるかどうか」です。

経験上、税務署は、

「事実関係と、それに連なる会計処理」については、

疑義を感じたらきっちり追求してきますが、

この事業割合などの「当事者の見解」が根拠になっているものへの追求は、

指摘はするものの、追求の手は緩いです。

指摘されて、こちらが回答をすると、

「あ~~、そうなんですね~」で、終わることが多いです。

ですので、事業割合に関しては、

「自分の見解に自信を持つ」、

「反論されてもオロオロしない」ということが、重要です。

(明らかに、事業実態とかけ離れた説明だと、いくら自信満々でも通らないとは思いますけど)