税務署に拒否された「新型コロナによる申告期限延長申請」

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

先週、法人のお客様が、

「新型コロナの影響による申告納付期限延長申請」について、

簡易的な方法による申請をしようとしたところ、

税務署に拒否されました。

以前から、税務行政の執行について、

ルールの「制定」と、ルールの「運用」には、

開きがあると感じていましたが、

今回は驚きでした。

「ひどいな~、相談の段階で拒否すんの~」と。

いきさつ

いきさつは、次の通りです。

お客様・・・ごく普通の有限会社

決算申告期限・・・12月31日決算、2月28日申告

相談者・・・有限会社の取締役が、単独で相談に行った(ちょっと予定があって、私は同行できませんでした)

相談内容・・・今期中のとある取引内容を、決算書へ反映させる処理の確認。それに加えて、新型コロナの影響による申告期限延長

新型コロナの影響の程度・・・税理士の体調不良(喉や気管支が、炎症を起こしているっぽい)

まとめますと、

今期行われた若干ややこしい取引について、決算書に反映させるにあたり、

取締役が直接、税務署に確認したい、とおっしゃったのですが、

申告期限が迫っていることもあり、月末までの残りの日数では私が対応できないので、

「私の風邪っぽい症状を理由に、新型コロナの簡易延長を使って時間を稼ぎましょう」

「よし、そうしよう」

となったわけです。

ですので、「新型コロナの影響により・・・」、というのは、

税理士との面談は控えた方がいいけど、電話やメールは可能、というレベルでした。

(ちなみに先週末、病院に行ったら「アレルギーによる炎症」と診断されました。

日中は暖かくなってきたし、花粉も飛ぶし)

しかし、延長申請を、まだ出してもいないのに、

そのことを相談した時点で否定されるのは、想定外でした。

税務署が否定してきた理由は、

「御社の決算月は12月なんだから、今回のコロナは関係ない」とのこと。

税務署に相談に行った取締役が、

「気になっていた取引の決算書への反映については、穏便な形で税務署の了解を得られたので、

これ以上の論点づくりは避けたい」という意向を示したため、

申告期限の延長制度は利用せずに、

結果、超急ぎで決算申告を行うことになりましたが、

私としては、税務署の対応について、反論したい気分でした。

(久々に深夜仕事になりましたが、申告は完了させました)

考えられるパターン

今回、税務署による新型コロナの期間延長の拒否について、

可能性として考えたのは、次のパターンです。

税理士が間違った理解をしていた

私が、新型コロナの簡易延長制度について、間違った理解をしていた可能性があります。

しかし、何度、国税庁のQ&Aを見ても、私が間違っているとは思えません。

法人税についても、簡易延長の適用あり、と明記されています。

法人税申告書で、期限延長申請をする場合の書き方についても、説明がなされています。

税務署の拒否理由である「決算月が12月なんだから」という点も、

Q&Aの説明からすると、拒否理由にはなりません。

「令和4年1月以降に法定申告期限を迎える手続きを対象としている」と明記されています。

改めて考えてみても、私の理解が間違っていたとは思えません。

取締役の説明が不十分だった

これについては、私はその場に同席していなかったため、

何とも言えません。

しかし、取締役からは、

「税理士との面談ができずに、経理業務に支障が出ているので、

新型コロナによる申告期限延長制度を利用させてもらい、

3月上旬には申告書を出すようにしたい」という説明がなされています。

説明内容には、これと言って相手を勘違いさせるものもないですし、

このような話をされれば、税務署の職員としては、

「ああ、アレね」とピンとくるのが普通でしょう。

取締役の説明が不十分だった、とは思えません。

税務署の職員が、コロナの申告期限延長制度を知らなかった

こんなことがあるのか、と思いますが、

職員本人には聞いていないのでわかりません。

仮に本人に聞いてみて、本当に知らなかったとしても、

そのことを素直に私に言うとは思えないので、

本人に確認しても、あまり意味がないかも。

税務署の職員による嫌がらせ

税務署の職員も、新型コロナの期限延長は当然知っていたんだけど、

取締役や私やお客様に良い印象を持っておらず、

嫌がらせとしてこのような対応をしてきた、という可能性です。

ただ、何度か私は、この職員に会っていますが、

そんなことをする人だとは思えませんし、

人の話は聞いてくれる普通の職員さん、という印象でした。

確かに、たまに、極端な性格の職員さんも見かけますけど、

今回対応してくれた職員さんには、この可能性は当てはまらないと感じます。

結局よくわからない

冒頭でも申しましたが、税務行政というのは、

ルールの上で運営されているものの、

まったくのルール通りの運用、というわけでもありません。

けっこう、ルールとは違うね、と感じることも多いです。

(そのおかげで、助かったこともあります)

消費税の中間納付の支払いがきつくて、分割納付の相談に行ったら、

税務署の職員に「おたくの銀行口座、差し押さえるぞ」と脅迫されたり、

税務調査で、思いのほか、交渉が効いたり。

今回のコロナ延長に関しては、あくまで個人事業向けのものであり、

法人の申告の場合は、きつめな対応なのかもしれません。

(延長申請を上げさせない、というのは、そういう税務署の方向性の現れ、なのかも)

いずれにせよ、

「法人の申告」で、

「新型コロナの影響による申告納付期限の延長申請」を利用するつもりの方は、

慎重に行動するようにしてください。

【追記】税務署の職員に聞いてみた

やっぱり、この対応は見過ごせないので、

税務署の当の職員さんに、電話で聞いてみました。

結論としては、

「新型コロナの影響による申告納付期限延長申請」は、法人の場合も認められる、

とのことでした。

当の職員さんは、

取締役が相談に行った時のやり取りの記憶が、

どうもはっきりしないようで(確かに、メインテーマは期限延長の件ではなかったし)、

言った言わないの話になるのは、私の本意ではないので、

そこは深く踏み込むことはしませんでした。

ただ、その職員さんと話をした印象としては、

法人課税部門の職員さんは、あまりこの期限延長制度について詳しくないし、関心もない、

という感じでした。

この延長制度をメインで運用しているのは、

個人課税部門、管理運営部門、徴収部門くらいで、

部門によって温度差があるのかな、という印象でした。

ですので、この延長制度について相談する場合には、

ちゃんとその制度の運用に関心のある部門の職員さんに、

聞いてみるのがおすすめです。

相談する相手を間違えると、

本来なら、期限延長が認められるべきところを、

「延長制度は御社には使えない」と言われてしまう可能性がありますので、

ご注意ください。

【追記】引っ掛け問題?

ちなみに、もうひとつ。

こういうこともあろうかと、念には念を入れて、

あらかじめこの有限会社様用に、

「災害による申告納付等の期限延長申請書」を提出しておきました。

それが、こちら。

しかし提出後に、国税局の業務センターから、

「この申請書は不備があるから、取り下げてほしい」と連絡がきました。

記載不備の箇所を聞いてみたところ、

「被災状況の欄が空欄になっているから」とのこと。

「おい~~。マジっすか・・・」

国税庁ホHPの申請書の記載例には、災害状況の欄には赤枠がなかったので、

被災状況の欄は何も書かなくてもいいのかと思っていました。

(記載例では、記入することに何の迷いも生じない日付欄とか申請者欄にまで、赤枠がふってあるのだから、まさか赤枠注意がされていない被災状況の欄に、詳しく書かなければならないとは思いませんよ。

国税庁が納税者に、わざわざ引っ掛け問題ですか。私、まんまと引っ掛かりましたよ)

とにかく、この新型コロナの期限延長制度があるからといって、

納税者の皆さん、気を緩めないでください。

税務署の対応が、想像以上にグダグダです。