貸主に隠れてペットを飼育。人間の持つだらしない面と向き合うのが賃貸経営。

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

私が保有している賃貸アパートでの退去が、続いています。

今週も、新たな退去が発生しました。

退去後の室内を確認に行くと、居室の壁全面に、縦に裂かれたひっかき傷が・・・。

「猫か・・・」

どうやら、管理会社や貸主にだまって、猫を飼っていたようです。

ペット飼育による賃貸借契約違反の対応について、書いてみようと思います。

部屋中、いたるところに引っ掻き傷。
何を飼っていたかは一目瞭然です。

ペット飼育による違反者へ請求できること

これは、その賃貸物件が、全体として「ペット飼育可」なのか、

「ペット飼育不可」なのかによって変わってきます。

当然ながら、ペット飼育不可の物件の方が、対応は厳しくなります。

その場合は、次のようなことを請求していくことになります。

  • ペットの持ち込み禁止と、ペットの処分
  • それに従わない場合は、賃貸借契約の解約と退去
  • 退去の際の敷金清算

この場合は、他の入居者への対応の統一性、という点からも、

違反した入居者とのやり取りの場面では、一切妥協はできません。

ヘタに妥協点を探して、ペット飼育を黙認してしまうと、

あとで問題が大きくなってしまう可能性があるので、キゼンとした態度で向き合う必要があります。

かなり自由に遊ばせていたようです。

それに対して、もともとペット飼育可の物件だけど、

管理会社や貸主からペット飼育の許可をとらずに飼育していた、という場合は、

あくまで「本来の手続きを踏んでいなかっただけ」という扱いになることが多いと思います。

しかし、そうは言っても、何でもかんでも事後報告でよい、という対応にしてしまったら、

結局のところ、事務手続きはないがしろにされてしまいますし、

管理会社による監視の目も、緩くなってしまいます。

ですので、私は、ペット飼育可の物件であっても、

許可をとらずにペットを飼育していた、という場合には、厳しく対応するべきだと思います。

この場合に請求していくのは、上記ペット飼育不可物件と同様、

ペットの持ち込み禁止、賃貸借契約の解約、退去、敷金清算、を請求していきます。

天井付近まで引っかき傷が。
すごい跳躍力です。

ただ、上記ペット飼育不可の物件と異なるのは、

ほかの入居者からの視線は、それほど厳しくはない、という点です。

もともと、ほかの入居者も、ペットを飼っているわけですから、外部から見る限り、

その入居者の「許可をとらない飼育」という違反行為には、気づきません。

その点からすると、入居者の態度から真に反省を感じるようであれば、

ペット飼育の事後報告も認める、という妥協案もありだと思います。

なお、ペット飼育可も飼育不可の場合も、手続きやルールをしっかり守ってもらうために、

「ペット飼育のルールに違反した場合の違約金」について、

賃貸借契約書上で、明記しておくことをお勧めします。

賃貸物件は、共同生活の場ですから、

ペナルティを通じて、ルールを守ることの大切さを意識してもらうのに効果的です。

最近、こんな部屋ばかりです。

ペット飼育のお部屋の敷金清算

ペット飼育条件に違反したまま、退去時まで、隠れてペットを飼いきる入居者もいます。

今回、私が遭遇した案件が、まさにこれでした。

過去にも、同じパターンに遭遇したことが何度かありますが、総じて言えるのは、

ちゃんと手続きを踏んでペットを飼育している人に比べて、部屋の傷みが激しい、ということです。

ペット飼育可能の物件であるなら、賃貸借契約時に、

管理会社からペット飼育の際の手続きについては、ちゃんと聞いているはずです。

それを守ろうとしない、という所に、その入居者のルーズさが現れてしまっているのですが、

そのルーズさは、残念ながらペット飼育の面にも、しっかり現れてきます。

壁やドア枠を傷つけられる、

室内のいたる所からペット尿の匂いがする、

エアコンや換気扇のフィルターがペットの毛で埋まっている、など、

飼われているペットの方が、哀れに感じるようなお部屋になっていることがあります。

たった20センチ四方の破れですが、この破れのために、この壁全面を張り替えます。

当然ながら、ペットによるお部屋の汚損部分は、敷金清算により、

入居者にリフォーム費用を負担してもらうわけですが、

私の感覚では、ペットにより傷んだお部屋のリフォーム費用は、

家賃3か月分の敷金では足りない、家賃4か月分で間に合うかどうか、という感じです。

(もちろん、傷み具合や賃料の多寡にもよりますけど)

ペットの尿が、床材までしみ込んでしまっている場合には、

家賃6か月分でも足りないかもしれません。

加えて、預かっている敷金では足りずに、追い金が発生するとなっても、

ちゃんと入居者が払ってくれるかどうかは、その時にならないとわかりません。

元来のルーズさゆえに、のらりくらりの対応の末、

追い金を払わないまま連絡が取れなくなっていく人もいます。

そうなったときに、貸主側のダメージを少しでも和らげるために、

ペット飼育を認めた入居者に対しては、空室募集に支障が出ない範囲で、

多めに敷金を預かっておくことをお勧めします。

これじゃあ、虫がはいってくるでしょう。
でも、業者さんを呼べば、猫飼っているのがバレるし。
隠しごとしても、いいことないです。

ルーズな人を相手に利益を出していくビジネス、それが賃貸経営。

賃貸経営は、一般人を相手にしたビジネスです。

また、単発取引の現金ビジネスではなく、長期契約が前提のビジネスです。

それゆえ、どうしても、相手の本性、その人の本来の人間性と向き合わなければならない場面が出てきます。

これはなかなかつらいな、と思うことがあります。

コンビニやガソリンスタンドのような、単発取引、即時決済であれば、

少なくとも取引内容でトラブルになったり、嘘をつかれる、騙される、などということは、

起きにくいと思います。

しかし、賃貸経営においては、毎回のように、トラブルが発生します。

生活の場そのものを提供するビジネスなので、普段、人が外に見せないような、

内部にため込んでいるものと向き合わなければなりません。

そういうものに向き合うのが嫌だったら、物件を売却するか、

一括借り上げとして、そういうサービスをしている会社に借り上げてもらう方法もあります。

入居者曰く「この床材は、入居当時からはがれていた」とのこと。
この状態のまま、修理もせずに貸し出すわけがないのに。
もう退去して関わりがなくなるから、嘘をつくことへのハードルが
下がっているのでしょうか。

ただ、私は、上記のような困った場面に出くわすたびに、弱ったなーと思いつつも、

その部屋に住んでいた入居者の姿を想像しながら、人間の持つ多面性について、勉強させてもらっています。

ペットを飼っていても、きれいな部屋もあれば、飼育小屋にされてしまう部屋もある。

ペットを愛する人間、と言っても、決して一括りにはできない。

「この程度のことでうろたえているようでは、まだまだ人間への理解が足りんな」と、

最近は、退去立ち合いの度に、自分の勉強不足を反省しています。