敷金精算と火災保険。考えることを諦めない賃貸経営

お疲れ様です。

静岡市の税理士、浅原慎一郎です。

以前、私が運営している賃貸アパートで、

入居者様が退去した後に室内を確認したら、非常に汚い状態になっていた、

ということを、ブログに書きました。

久々のハードな汚部屋。敷金精算について考える

想像通り、敷金精算は非常に難航しました。

その入居者様は、ご自身が生活保護を受けていることを盾に、

「金がないのに敷金精算で〇十万なんて、うちを殺す気か、死ねといっているのか」と、

話し合いに応じる気配がありません。

(そんなにお金がないなら、やたらとタバコ吸ったり、犬を飼ったりしている場合ではないと思いますけど)

生活保護と敷金精算、「人物」と「引き際」の見極めが大切

その続きを書こうと思います。

一部回収できた

入居者様ご本人は、「私は逃げてはいない」と言いつつも、

敷金精算の話し合いはまったく進まない。

分割払いでもいいですよ、と水を向けても、

「月々1,000円が限界だな」と、おちょくったような回答しか出てこない。

同居人も、「借主は私ではない」と、話し合いの場には出てこない。

連帯保証人は、すでにこの世にいない。

もちろん、借家人賠償保険にも加入していない。

こりゃもうだめだな。

原状回復費用の回収は、諦めるしかないな。

そう思っていました。

ただ、あまりにも原状回復費用が多額だったので、

どうにかして、一部分だけでいいからこちらの負担を減らしたいと念じていたところに

ある方法を思いつき、敷金精算での請求額の30%ほどを回収できました。

私が加入していた建物の火災保険です。

被災項目の中の「突発的な事故」というカテゴリーで、

お部屋の汚損の一部を認めてもらうことができました。

どういうものが認められて、どういうものが認められなかったのか、は、次の通りです。

壁のへこみ

入居者様が、壁をへこませてしまいました。

この部分は、入居者様による建物の損壊、ということで、すんなり審査を通りました。

壁に肘打ちでもカマしたのか、きれいにへこんでいます

ドアの下部についているペット用通路のゲート

入居者様のペットの犬が、勢いよく通って壊してしまった、とのこと。

上記と同様、入居者様による建物の損壊、ということで、すんなり通りました。

ゲートの蓋は、処分してしまいました

床のタバコの焦げ痕

入居者様によるタバコの不始末が原因です。

(一歩間違えれば火事で人の命を奪うことになりかねません。自覚がない、というのは恐ろしいことです)

当初、タバコの焦げ痕は生活痕に分類されるので、

基本的には火災保険で対応できない、と言われました。

通常の生活によって生じる汚損は、「事故」には当てはまらないらしいです。

まあ、言われてみればそうか、という感じです。

これが審査を通ってしまうなら、原状回復費用は大家の持ち出しゼロ、大家天国です。

もっとも、結果的には、

下記のキッチン天板のへこみを取り下げる代わりに、なんとかタバコは認めてくれー、

と交渉した結果、補償してもらえることになりました。

キッチン天板のへこみ

入居者様が引っ越しの際に、家具を落としてへこませた、ということです。

審査は通りませんでした。

中途半端な汚損が、一番悩ましい

「アルミの天板だから、元通りには戻せないんだよ。新しいシンクに交換するしかないんだよー」

と力説しましたが、

「このくらいのへこみなら、まだ使えるじゃん」との回答でした。

程度によりますが、今回のこのへこみくらいなら、

保険事故でいう「損壊」には当てはまらないということです。

何事も、中途半端はだめです。

火災保険は優秀

敷金精算で火災保険が使えるとは思っていませんでした。

そもそも火災保険は、「保険事故」が生じたときに適用されます。

「事故」というネーミングの影響からか、

事故直後や、事故による被害が継続している、という場合なら、保険を連想できたと思いますが、

敷金精算の場では、ただ、へこんだ壁や壊れたゲートがあるだけなので、

火災保険という発想は、出てきませんでした。

しかし、今回のことで、使えることがわかりました。

火災保険がいうところの「保険事故」の範囲は、想像していたのより広いのだな、と実感しました。

加えて、加入者のために汗を流してくれる保険代理店の存在も、非常に重要です。

加入者側の意図や思いを汲んで、それを保険契約の概念に当てはめて、

上手に交渉してくれる代理店スタッフは、賃貸経営には不可欠です。

賃貸経営をしていると、

想定外のことが想定以上に起こる当たり年が、数年に1回くらいの割合で起きます。

そういう時に泣きを見ないためにも、

火災保険の特約は、ケチケチせず広めにつけておくことをお勧めします。

考えることを諦めない

敷金精算の場では、どうしても入居者側が有利に運びます。

その結果、貸主側が諦めれば、そこで終了、ということになりがちです。

長いこと、同じ人と同じテーマで揉めていると、

次第に結論はどうでもよくなってきます。

回収できるかどうかよりも、この煩わしいことを終わりにしたい、

という気持ちになります。

もちろん、過ぎたことはさっさと忘れて、次のことに意識を向けよう、

という姿勢も非常に重要です。

ただ、それと同じくらい、「諦めずに考え続けること」も重要です。

私が諦めると、そこで終了、というものは、結構あります。

敷金精算しかり、コスト削減しかり、決算対策しかり。

考え続けることで、見えてくる道筋、というものがあるのは確かです。

逆に、普段の「考えている」は、

思っているほど頭を使ってはいないのかもしれません。

まとめ

以上、火災保険は敷金精算にも使える、ということでまとめてみました。

もっとも、この火災保険の使い方は、イレギュラーな方法だと思うので、

原則、敷金精算は、預かり敷金と借家人賠償保険で完結できるようにしておきたいところです。