【税理士解説】インボイスについて、今やっておきたい最低限の準備について

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

消費税のインボイス制度について、

わたしの中のスケジュールとしては、

「あと3か月くらい」という実感です。

ご存じのとおり、

制度のスタートは「10月1日から」ですね。

しかし、

きっちり10月1日からか、

というと、

そうとも言い切れません。

8月に仕入れた原材料や経費について、

9月に代金を支払って、

それを10月に経費計上する、

というパターンもあると思います。

うちではそんなパターンはないよー、

という場合であっても、

他社ではあるかもしれませんね。

つまり、

他社からインボイスを求められる可能性がある、

ということですね。

とすると、やはり現実的には、

6月・7月・8月の3か月くらいで、

インボイスの準備をしておき、

9月ごろからはインボイスに対応できるようにしておかなくてはならない、

と思います。

とはいえ、

顧問税理士がついている事業者さんならまだしも、

税理士無用でやっている事業者さんも、

多くいらっしゃいますね。

聞きたくても、聞く相手がいない。

自分で調べようにも、使われている言葉がわからない、

という方も多いと思います。

正直、わたしも、

インボイス制度について、

そこまで詰め切れているわけではありませんが、

ひとまず私の頭の中にある最低限の情報だけでも、

整理してご紹介しておこうと思います。

インボイスなんて知らん、という方、

ご参考になさってみてください。

税務署の説明資料は、いつもと同じく、親切と不親切の中間くらいの内容です

インボイスとは?

インボイスというのは、

法律の求める事項が記載された見積書や納品書、請求書、領収書、レシートなどの

「書類の総称」です。

特定のフォーマットや、指定された形式があるわけではありません。

ですので、

インボイスを発行する場合には、

いままで発行してきた上記の書類に、

必要事項を追加で記載しておけば大丈夫です。(必要事項は後掲)

追加で記載する場合は、

パソコン入力でもいいですし、

手書きやスタンプでもかまいません。

ちなみに、

ネットで検索していると「適格請求書」という用語が出てきますけど、

これは、つぎのような関係にあります。

「適格請求書」=「インボイスのこと」=「インボイスの必要事項が記載された見積書や納品書、請求書、領収書、レシートなどのこと」

「適格請求書保存方式」=「インボイス制度のこと」

いつもそうなのですが、

税金の制度って、

そもそも、使われる用語が何を意味しているのかがわからないので、

せっかくの国税庁の説明資料も、

読む気になりませんね。

インボイスの要件を満たさないと、どうなるのか

受け取った請求書や領収書が、インボイスの要件を満たさないときは、

その取引に関する仕入や経費については、

仕入れ税額控除ができなくなります。

「仕入税額控除ができない」というのは、

簡単にいうと、

「仕入税額控除できなかった消費税額は、相手先に支払ったあと、さらに同額を、税務署にも支払わなければならなくなる」、

ということです。

つまりは、二重払いの状態。

納税者にとって不利に働く、ということです。

ですので、インボイス制度は、

売り手の立場でいるときよりも、

買い手の立場に立った時に、

注意しなければならない制度です。

売上・収入に関すること

請求書、もしくは領収書を発行する際に、

それらの用紙に次の事項を記入してください。 

次の事項をちゃんと記載してあれば、

どの書類であっても、それでインボイスの記載要件を満たすことができます。

  • 相手先の宛名
  • 納品日や引き渡し日の日付
  • 商品やサービスの内容(8%対象の商品がある場合には、8%対象となる旨も記載してください)
  • 適用される税率ごと(10%か8%か)に区分けした請求金額(税込みでも税抜きでもかまいません)と、その金額に適用される消費税の税率
  • 税率ごとに区別した消費税額の合計額(消費税額の端数処理は、ここで行います)
  • 発行側のインボイス登録番号

端数処理のルール

消費税額の計算にあたり、

端数を処理する際には、決まりがあります。

次の通りです。

  • ひとつひとつの商品ごとに端数処理をしてはいけない
  • 端数処理ができるのは、税率ごとに、消費税額の合計額を算定するときの1回だけ
  • 端数を、切り上げ・切り捨て・四捨五入など、どの方法にするかは、各社の判断に任せられている

発行したインボイスの保存義務

インボイスとして書類を発行した場合には、

その発行した書類のコピー、もしくは電子データを、

7年間保管しておく義務があります。

なお、受けとったインボイスについても、同様です。

仕入・経費に関すること

仕入・経費の関係で気を付けることは、

つぎの2点です。

  • 受け取った請求書や領収書に、インボイスの必要事項が記載されていること(必要事項は、前述のとおり)
  • 必要事項が記載された請求書や領収書を、7年間保存しておくこと

この2つの点を守っている限り、

従来通りの消費税額の計算をすることができます。

逆にいうと、

どちらかでも守ることができていない場合には、

その仕入や経費に関する消費税額については、

仕入税額控除ができなくなる、

ということですね。

消費税計算について、簡易課税を選択している場合

消費税額の納付額の計算にあたり、

簡易課税を選択している場合には、

仕入・経費に関するインボイスの保存義務はありません。

(インボイス登録番号などの必要事項が書かれていない書類でも問題ない、という意味です。 消費税では必要なくても、法人税などの計算では、請求書や領収書は必須なので、受け取った書類は、決して捨てずに保管しておいてください)

インボイスの要件を満たさなくても問題ない場合

次に示すものについては、

現実的にインボイスの発行ができないため、

インボイスがない状態でも、

仕入税額控除が認められています。

  • 電車、新幹線、バス、船舶による人間の輸送で、1回あたりの金額が税込み3万円未満のもの(一人あたり、ではなく、1回あたりの合計支払い金額で判断)
  • 自動販売機、コインロッカー、コインランドリー、銀行のATMの手数料など、機械装置によって支払いと受け取りが完結するもの(コンビニのセルフレジやコインパーキングは、自分が動かなければならないから除外される。ネットバンクは、機械装置ではないから、そこでの手数料も、除外される)
  • 郵便切手
  • 農協や卸売市場への出荷代金

インボイスの修正

インボイスの内容に間違いがあった場合には、

受け取った側が勝手に修正することはできません。

発行した側に間違いを伝えて、

修正されたインボイスを受け取るようにしてください。

まとめ

これらが、

インボイス制度の運用に合わせて、

認識しておかなくてはならない最低限の部分です。

国税庁が出しているインボイス制度についての手引き資料があるのですが、

おそらく、

国税庁の優秀な職員さんが、

簡単にまとめてくれているのでしょうけど、

それでもこの情報量・・・

わたしも読み込むのはつらいので、

予備知識のない人が理解するのはムリだと思う・・・

一応、リンクを張っておきます。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き|国税庁 (nta.go.jp)

そして、

細かい論点は、ほかにも無数にあります。

「立替払いの経費の精算」

「商品の値引きや返品の場合」

「免税事業者に支払う消費税額の経過措置」など。

ただ、情報量が多すぎると、

抑えておきたい基本事項が目立たなくなってしまうので、

それらはまた、別の機会に書いてみようと思います。