法人成りに伴い役員貸付金が発生する理由

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

今までに何度か、個人事業から法人設立(法人成り)へのサポートをさせていただきましたが、

中には、ご相談の結果、法人成りはやめておいた方がいい、という結論になった案件があります。

理由は、「役員貸付金が発生してしまうから」、です。

役員貸付金は、一般的に、良い評価にはつながりません。

「会社の運転資金などの資産を、役員個人に貸し付けている」、というものが役員貸付金なので、

第三者からは、

「なにこれ?」「なんで役員に貸し付ける必要があるの?」「早く会社に戻したら?」

という風に見られがちです。

やむをえない場合を除き、役員貸付金が発生するパターンでの法人成りは、

避けた方が良いと考えています。

今日は、役員貸付金が発生してしまう法人成りのパターンについて、書いてみようと思います。

債務超過の状態で、法人成りをしたとき

法人成りに伴い役員貸付金が発生する理由は、「貸借対照表の資産負債のバランスをとるため」です。

例えば、個人事業の時に銀行から運転資金を借りたものとして、

借りた直後の貸借対照表は、次の表のようになります。

この状態から月日が流れ、運転資金を使いつつも思ったように収益が上がらないと、

次のようになります。

このような段階で、資本金100万円で法人成りをしたとすると、

法人設立後の貸借対照表は、次のようになります。

つまり、債務超過部分を抱えたままで法人成りする場合には、その債務超過部分は、

法人成り後においては、役員個人に貸し付けた資産として処理するしかない、ということです。

このような状況でも、法人成りをしたい強い動機があるならば、やるしかないでしょう。

しかし、役員貸付金には、デメリットがあります。

特に、この債務超過のパターンでは、債務超過部分を会社に肩代わりさせたとして、

債務超過部分を「役員個人の給与や賞与」として扱われるリスクがあります。

そこまでの強い動機がない場合には、

法人成りをするのは、債務調査を解消してからにしてからの方がよいと思います。

法人成りの対象資産から土地建物を外したとき

個人事業のときに、土地や建物といった固定資産を帳簿に計上していた方が、

法人成りをするときには、その土地建物を法人には移転させなかった場合、

上記と同様に、役員貸付金が生じることがあります。

まず、個人事業の時点で、貸借対照表が次のような状態になっているとします。

そして、会社を設立するわけですが、個人から法人への不動産の移転、というのは、

不動産の使い方は何も変わっていないにも関わらず、

名義を変更するだけで、かなりの税金がかかってくる羽目になります。

譲渡所得に対する所得税、登記移転に伴う登録免許税と司法書士さんへの報酬、

そして、名義変更の数か月後、忘れたころにやってくる不動産取得税、と、

払う都度、運転資金を傷めることになります。

ですので、よほどのことがない限り、スモールビジネスにおいては、

個人から法人への不動産の移転はやめておいた方がいいでしょう。

そして、結果的に、不動産の移転をしないとした場合に、

法人設立後の貸借対照表は、次のようになります。(上記と同様、資本金は100万円)

やっぱり、役員貸付金が発生してしまいますね。

悩ましい問題です。

(ちなみに、上記の表で考えるなら、法人に引き継ぐ買掛金の額を減らすことで、役員貸付金の発生を防ぐことができますね)

別のブログで書きますが、役員貸付金には、複数のデメリットがあります。

不動産の移転に伴う税金負担と、役員貸付金を抱えるデメリットとの見合いで、

どうするか判断するしかないですね。

出資にあたり、「見せ金」を使ったとき

会社設立をする際には、設定した資本金と同額の現預金が必要です。

(現預金以外に現物出資という手もあるけど、やや例外的な手法です)

法人設立書類の中には、その出資額が存在することを証明するために、預金通帳のコピーが求められます。

かつての商法時代には、最低資本金なるものが設定されていましたが、

現在の会社法(旧商法のこと)最低資本金が撤廃されて、

資本金設定額は、いくらからでも認められるようになりました。

とはいえ、それは会社法上のはなし。

行政の許認可が必要となる建設業などでは、許認可を得るための最低資本金額が、

会社法とは別に設定されており、業種によって、一定額以上の資本金がないと、

会社設立はできても、許認可が下りない、となってしまい、

実質的に営業活動ができない状態になってしまいます。

そこで、手持ち資金の乏しい方が、最低資本金額をクリアするために使う手法が「見せ金」です。

言葉のニュアンスから察してもらえると思いますが、違法な手段です。

ただ、実際には簡単にできてしまいます。

たとえば、最低資本金が100万円の業種で法人設立をしたいのだけど、

実際に資本金として出資できるお金は30万円しかない、としましょう。

身内や知り合いから、「すぐ返すから」と約束して、70万円をなんとか借りてきて、

自己資金と合わせて100万円となったので、これで会社設立をしたとします。

そのときの貸借対照表は、次のようになります。

そして、無事に会社設立をして、行政の許認可も得られた後、

約束通り、お金は貸主にお返しします。

もちろん、その返すお金は、資料上は「自分のお金」ということになっていますから、

会社の通帳から出金したときには、「役員に貸し付けたもの」として処理するしかありません。

結果、貸借対照表は、次のようになります。

残念ながら、このパターンでも、役員貸付金の発生は避けられません。

どこかで帳尻を合わせなければならない

前述のとおり、役員貸付金は、貸借対照表上の帳尻合わせとして行っているにすぎず、

決して、会社の資産を、役員が使い込んだというわけではありません。

ですが、企業会計では、複式簿記を採用しており、

税金計算においても、この複式簿記がベースになっているため、

帳尻合わせから逃げることはできないのです。

この帳尻合わせの結果、どのようなしわ寄せが帳簿上に現れるのか。

法人成りの際には、法人成りの前と後で、どのような資産負債の構成になるのかを確かめてから、

実行に移すようにしましょう。

(当事務所では、次のサービスを提供しております)

◇税務顧問サービス

昨日の仕事

  • 清水区美濃輪町のお客様に会計報告
  • 新たらしく買ったマンションのリフォーム打ち合わせ

かつての同僚が、電気工事を手伝ってくれることになった。

彼と会うのは、20年ぶりだ。

頼もしいし、楽しみだ。

  • 空手稽古