「個人事業」も悪くない。個人事業にしかないメリットを整理しました

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

先日、個人事業の法人化についてブログに書きましたが、

個人事業には、個人事業にしかない良いところがたくさんあります。

そこで今日は、個人事業の優れている点について、まとめてみようと思います。

【税理士解説】個人事業を「法人化」。効果の有無は、目的によります。

家族を連れて、よく釣りに行きます。
子ども二人が、根掛かり、絡まり、
餌付け対応のヘビロテを要求してくるので、
私自身はほとんど釣りができません。
心なしか、妻の背中から
不機嫌さを感じてしまうのは、
なぜだろう。

すぐ始められる

個人事業の設立手続きは、個人事業は手軽で簡単です。

まず法務局への登記手続きが、必要ありません。

ですので、司法書士さんへの報酬も不要ですし、資本金もいりません。

必要なのは、店名と本店所在地くらいでしょうか。

行政への許認可が必要な業種であれば、それが一番大変、という感じでしょう。

許認可も必要ない業種ならば、地域の税務署に、「事業開始届」を提出しておけば、

もうビジネスを始めちゃって大丈夫です。

(ちなみに、事業開始届を出さすに、ビジネスをスタートしてしまう人も多数見かけます。

届け出の有無とは関係なしに、ビジネスをスタートして利益が出たなら、所得税の納税義務も生じます。

届け出を出さなかったことで、何かしらのトラブルに発展した、ということは、私の経験上はありません)

事務が簡単

従業員が5人未満の事業所であれば、社会保険の加入義務はありません。

国民年金と国保のままで、大丈夫です。

決算書・申告書も、法人に比べて簡単ですし、

申告書の書き方がわからなくても、税務署に行けば書き方を教えてくれるので、

税理士に依頼しなくても、できちゃいます。(手間はかかるでしょうけど)

給与計算や資金管理などは、法人と同じです。

赤字のときは税金(均等割り)がない

法人の場合、赤字の年にもかかってくる「均等割り(7万円くらい)」という、

めんどくさい税金があります。

「何で赤字なのに払わなければならないのか?」と思いますけど、

法人の場合はそういうルールになっているので、仕方ありません。

個人事業の場合には、この均等割りはありません。

個人事業ならば、赤字の年の所得税は、本当にゼロで終われます。

(消費税の納税義務がある事業者さんは、消費税の納付が発生することはありますけど)

利益が少なければ、事業税がかからない

法人の場合は、利益がいくらであろうが、

黒字である限り法人税とは別に「事業税」がかかってきます。

これに対して、個人事業の場合は、

年間の利益が290万円以下であれば、事業税はかかりません。

仮に、個人事業で、年間の利益が350万円ならば、

350万円-290万円=60万円に、事業税がかかってきます。

上の子(10歳)は理解が早く、
底物師である私が伝えたズル引きを完全にマスターし、
毎回何かしら釣果を上げれくれます。

青色申告特別控除が受けられる

税務署に「青色申告承認申請書」を出しておけば、

提出した年の翌年から、65万円の青色申告特別控除が受けられます。

提出した翌年以降、毎年受けられます。

「無条件で、税金対象となる利益のうち、65万円分は除外していいよ」というありがたい制度です。

法人には、このような控除制度はありません。

個人事業を始めるなら、青色申告承認申請書は、提出しておきましょう。

お金の管理はテキトーで良い(良くはないけど)

法人の場合、会社のお金の出し入れは、

すべて会計データに記録しておかなくてはなりません。

すなわち、「内容不明の入出金」というものは認められず、

必ず入出金の内容を明らかにして、決算書に計上しなければなりません。

これに対して、個人事業の場合は、

事業主の生活資金と事業資金が、そもそも、ごっちゃになりがちです。

それは、個人事業の性質上、致し方ないことです。

もっとも、会計帳簿を作成するにあたっては、

事業資金の出し入れの中に、生活資金が混入してしまったら、

生活資金は売上にも経費にもなりませんから、会計帳簿から除外しなければなりません。

そこで、生活資金を除外するのに「事業主貸(店主貸)」「事業主借(店主借)」といった科目を使って、

会計データを仕上げていきます。

つまるところは、内容不明な入出金があったとしても、

「ちょっとこのお金、何に使ったものか忘れちゃった(新台入れ替えの日にツッコみすぎちゃった)から、事業主貸にしといて」といえば、

それで通ってしまいます。

内容を明らかにしなくてもよい、ということです。

お金の管理については、個人事業の方が法人よりも、「かなりおおらか」という感じです。

すぐ辞められる

法人の場合、辞める時は、

法務局に解散登記の申請をして、官報で解散の公告を出して、解散年度の決算・申告をして、

そのあと清算登記の申請をして、清算年度の決算・申告をして・・・と、かなりめんどうです。

「辞めるだけなのに、こんなめんどうなのか? 

しかも官報の掲載費用、司法書士さんの手数料、税理士への手数料も発生して、

けっこうお金がかかる。ただ辞めるだけなのに」

という気分になっちゃうかもしれません。

個人事業の場合は、法務局は関係なし。

決算・申告も年明けに1回やって、「廃業届」を税務署に出せば、それで終わりです。

夜の帝王、ゴンズイ。
背びれと胸びれに毒あり
釣り人の話では、食べられるらしいけど、
食べる気にはならないのでリリース。

個人事業に向ているかどうか

以下、簡単なパターン分けをしてみました。

事務処理は苦にならない。もしくは家族が手伝ってくれる

それなら法人でもいいかもしれません。

複雑な事務は無理。税理士とのやり取りや報酬の負担も無理

法人は合わないと思います。

個人事業で行きましょう。

どんぶり勘定で行きましょう。

事業を拡大していきたい

顧客の開拓、商品の品揃えや流通量の増加、従業員の雇用の拡大など、

ビジネスを発展させてきたい、という思いがおありなら、

法人の方が向いている、と思います。

お客様に信用してもらわなければ、売上にはつながりませんが、

「法人」であれば、組織としての事業基盤がしっかりしている(であろう)という点で、

個人事業よりも信用を獲得しやすいと思います。

事業の拡大は望んでいない

意外とそういう方もけっこういらっしゃいます。

私は、完全にそのタイプですが、

無理して顧客開拓を進めたり、手を広げていくということに魅力を感じない人は、

個人事業のままでも十分だと思います。

そこそこ利益が出ている

節税という面から考えることになると思いますが、

将来にわたって、「売上も変わらず、利益も現状維持」、という状況は考えにくく、

いずれも時の経過とともに移り変わっていくと思われるので、

節税効果の有無によって、法人か個人事業かを決めない方が、いいと思います。

ホームグラウンドの清水港。遠くに客船が見えます。

まとめ

個人事業の良さについて、まとめてみました。

私自身、個人事業をやっていて日々感じるのが、

個人事業の場合は、「事業主が商品そのもの」ということです。

そして、「商品」を継続して買っていただくためにも、

商品への「信用」は、法人以上に重要である、ということです。

「しくみ」を信用して買ってもらうのがもらうのが「法人」

「商品(人間)」を信用して買ってもらうのが「個人事業」、いったところでしょうか。

以上、悩んでいる方の参考になれば、幸いです。