家族会議と経営パートナー

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

当方の事務所のお客様は、

家族経営の方がほとんどです。

家族以外の第三者が、

経営の意思決定に大きく関与している会社様が一社だけいらっしゃいますが、

そのほかのお客様はみな、

意思決定は家族内の話し合いだけで完結しています。

家族経営は、登場人物が限定されているので、

意思決定が迅速だったり、プロセスを省略できたり、

何かとメリットが多いのですが、

反面、家族内での感情が関わってくるので、

一度風通しが悪くなると、ちゃんとケアしなければ、

さらに風が通らなくなります。

ちょうど1か月ほど前、

風通しが悪くなってしまった家族経営の会社様で、

わたしが提案して、家族会議を行うことになりました。

伊勢神宮の境内を歩くわが家族。
うちは、基本的に私が折れるので、
あまり家族会議にはならない。

現場と事務の目線がずれていく

その会社様では、

お父さんが現場に出て営業活動を行い、

娘さんが事務を担当していました。

わたしは日ごろ、娘さんとやり取りをしていまして、

娘さんからは、仕事の依頼はあるものの、

お父さんがあまりに安値で仕事を引き受けてくるため、

利益が残りづらい状況であることを聞いていました。

確かに会計上の数字を見ていると、

そのように見えます。

ただ、営業を担当するお父さんに話を聞くと、

あまり細かいことを気にしてもしょうがないし、

金額を上げるとお客様が逃げていく、という危機感を強く持っているため、

現状のやり方を変えるつもりはないようでした。

そのような状態が数年続いており、

わたしは、娘さんに自分の考えを述べる、に留めていましたが、

昨年訪問した際に、

お父さんと娘さんが、何かをきっかけに、

急に怒鳴り合いを始めてしまいました。

何が理由で怒鳴り合ったのかは、忘れてしまいましたが、

お互いの精神状態が限界に近付いていることを感じさせられました。

お父さんと娘さんとのやり取りの中で、

基本的にはお父さん優先、娘さんが折れる、

ということを繰り返してきましたが、

娘さんは当然として、お父さんの方にも余裕がなく、

双方、相当なストレスを抱えてしまっていました。

わたしは、その怒鳴り合いをみて、

すぐに家族会議をしましょう、と提案しました。

家族ゆえの甘えが、ズレを激しくさせる

家族内での意思疎通が十分にできていないことが、

経営上の問題に発展する、というケースは、

いままでもよく見てきました。

これは、本当によくあります。

その背景には、「家族ゆえの甘え」があるのだと思います。

言わなくてもわかるだろ、

いちいち言わなくても、察してくれ、

というものです。

主には、男性陣が女性陣に甘える、

というものですね。

こういうとき、女性はだいたい、

ちゃんと意見を言ってくれるので。

もともと男性は、狩猟本能の名残か、

とにかく獲物を捕ってくる、つまりは結果につながる行動を重要視する傾向が強いですね。

もちろん、女性も結果は重視しているのですが、

女性の場合は、それと同じくらいに、

意思決定のプロセスや合意、共感の有無という点も、重視します。

こういう男女の違いの上に、家族の甘えが乗っかってくると、

ズレが激しくなってきます。

男女ではなく、男性同士、女性同士の場合でも、

躊躇なく苦情を言える性格と言えない性格、

積極的な性格と保守的な性格など、

性格の違いに家族の甘えが乗っかってきて、ズレ続ける、

というケースも見てきました。

これが、家族経営ではなくて、

第三者もいて意思疎通をしっかりやらなければならない体制であれば、

また違う状況になっただろうと思うことも多々あるのですが、

現状、家族経営の事業所様が多くて、

そういうところは、多かれ少なかれ、

似たような問題を抱えています。

第三者が誘導することで、本人が受け入れやすくなる

冒頭のお客様ですが、

結果として、わたしが同席して家族会議を行った結果、

風通しがよくなりました。

家族会議の場では、

わたしが日ごろ感じていた経営上の問題点を取り上げて、

そこから、各々に日ごろの本音をぶちまけてもらいました。

現場と事務の意思疎通や情報共有が、不十分であること、

事務が、現場の動きに振り回されて、ストレスを抱えていること、

従業員を採用しても定着しないのは、現場の指導に問題があること、

少ない人数で運営していくには、件数を増やすのではなく、単価の見直しが必要であること、

とはいえ、現場が仕事をこなしてくれるから、事務の仕事が生まれるのであって、まずは現場のお父さんに感謝しなければならないこと、

こんな感じの話を、

浅原がテーマを切り出す、現場が本音を言う、事務が本音を言う、浅原が調整して着地させる、

という流れで進めました。

浅原という第三者がいることで、

本音を出してもただちに言い返されるという心配がなく、

気兼ねなく本音を出せたみたいで、

会議が終わった時には、それぞれすっきりした表情になっていました。

それから1か月たったいま、

改めて娘さんに状況を聞いてみましたが、

ちょっとずつお父さんの方も変わってきているらしくて、

家族会議やってよかった、とおっしゃっていました。

かつてのDV被害と第三者の重要性

話は変わりますが、

わたしは税理士をしていて、

関与先からDV被害にあったことがあります。

その当時は、自分では気づきませんでしたが、

その時の様子を友だちの行政書士さんにお話ししたら、

「浅原さん、それDVだよ」と言われて、

ああ、たしかにー、と思いました。

(ちなみにそのあと、同じく警察官の友だちに聞いてみたら、

「浅原さん、それ監禁罪成立するよ、被害届出す?」と言われました)

また、機会があれば、そのことも書こうと思うのですが、

振り返って思うのは、

そのDV行為のときは、相手はその場から第三者を排除して、

一対一の状態を作ろうとするんですね。

一対一の密室状態を作り出すことで、

DV関係を強化し、固定しようとしてきます。

冒頭の家族経営の会社様は、

決してDVではないのですが、

ただ、構造としては似たようなものがあるように感じました。

一対一の関係の中で、トラブルが発生する。

しかし、第三者がその関係の中に入っていかない(いけない)ので、

トラブルが継続し、深刻化していく。

家族経営の会社様は、お父さんも娘さんも、

状況を良くしていきたい、という思いがありましたから、

浅原が第三者として、こじれた状況をほぐしていくことで、

自然と状況は改善していきました。

そういう点で、

家族経営の会社こそ、

第三者としての経営パートナーが大切と言えますね。