減価償却をコントロールする。償却費の計上はすべきだけど赤字は避けたい

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

決算書を黒字で仕上げるか、赤字で仕上げるかは、

ある程度、税理士側の工夫によって変えることができます。

手元の運転資金が潤沢にある会社さんは、赤字決算でもいいのかもしれませんが、

手元資金に余裕がなく、いつ金融機関から借り入れを起こすか、

タイミングを見計らっているような会社さんは、

決算は、利益幅は少しでいいので黒字で着地しておきたいところです。

さて、決算で出てくる定型的な処理として、減価償却費があります。

減価償却費を計上しなければ、黒字着地ができる、という場合でも、

減価償却費の計上は、しておくべきです。

しかし、減価償却費の計算過程のなかで、できる工夫はあります。

エアコンの取り付け作業の立ち合い。
壁や天井との距離、スリーブ穴の位置に応じて、
微調整をしながら、取り付けていきます。
エアコンの取り付け、というと、
一見、画一的な作業に思えますが、
決してそうではありません。

「ちょい赤決算」と「ちょい黒決算」の違い

ちょっとの額でも、赤字で着地か黒字で着地かは、

銀行への融資申請の際に、大きな影響を及ぼします。

なぜなら、ちょい赤決算でも、言語化すれば「赤字決算」、

ちょい黒決算も同様に、稟議書の上では「黒字決算」です。

金融機関の融資審査の人からすると、

支店から上がってきた稟議書上で、貸出先が赤字決算の会社であれば、

「なんでわざわざ赤字の会社に金貸すの?」という点からスタートすることになります。

越えるべきハードルが増える、かつ、高さも上がってしまいます。

お金を借りたいなら、ちょっとでいいので、黒字決算にしておきたいところです。

減価償却費の操作の前に

決算を、通常通りに進めると、ちょい赤の状態になってしまったとします。

そういうとき、減価償却費を計上するかどうかの判断の前に、

やっておくべき調整があります。

例えば、次のようなことです。

  • 少々高額な消耗品を購入した・・・消耗品費ではなく、備品として資産計上
  • 設備の保守料を払った・・・修繕費ではなく、前払費用に計上
  • 収入印紙や切手を買った・・・租税公課や通信費から、貯蔵品に振り替え

これらの処理を丁寧に行うことで、多少は経費を減らして、利益を増やすことができるはずです。

なお、いったん資産科目に上げたこれらの項目は、

翌年度に、再び費用科目に振り替えれば、帳尻が合います。

もっとも、その結果として、翌年度の損益を圧迫することになるので、

その点はあらかじめ承知しておきましょう。

減価償却費の計上をするかしないか

まれに、決算書を黒字化するために、その年だけ減価償却費の計上をしない、

という会社さんを見かけることがあります。

(会社さんによっては、その年以降ずっと、減価償却費の計上をやめてしまうところも)

これは、やめておきましょう。

減価償却費は、苦しくても、計上を続けましょう。

なぜなら、金融機関は、減価償却費の計上の有無をちゃんとチェックしています。

もし、その年だけ減価償却費の計上をせずにいると、

赤字か黒字かという論点ではなく、

「社長、決算書、盛ったね」

とみられてしまいます。

そうなると、決算書自体の信ぴょう性を問われることになり、融資交渉は難航するでしょう。

金融機関は、提出された資料に、意図的な嘘が混じっていたり、

金融機関を欺こうとするようなエッセンスを感じたりすると、

とても強い拒否反応が現れます。

減価償却費は、毎期、償却限度額まで計上する、ということを続けましょう。

償却期間を延ばす

減価償却費の計上額を大きく左右するのが、その資産の法定耐用年数です。

資産の種類に応じて、法律で耐用年数が決められています。

この法定耐用年数をベースに、ひとつひとつの資産ごと、償却期間を決めていきます。

この償却期間を延ばすことで、

減価償却費の計上額を、下げることができます。

仮に、100万円の資産を、5年間で償却するなら、毎期の減価償却費は、20万円となります。

これに対し、100万円の資産を、20年で償却するなら、毎期の減価償却費は、5万円となります。

もし、減価償却費の計上額を調整したいとなったら、

償却期間を長めにとって、毎期の減価償却費を下げるようにしましょう。

金融機関の方は、資産ごとの耐用年数の設定までは、見ていませんし、

まあ、欺いていると言われれば欺いているのかもしれませんが、

赤字の決算書を持っていって「お金貸して」は、マナー違反です。

これは、「決算書のデザインだ」と割り切って、行きましょう。

なお、法定耐用年数を、法律で定められたものよりも短く設定するのは、違反行為になります。

耐用年数を調整する場合は、必ず「長くする方向」で、調整しましょう。

カバーを外した状態。
ルームエアコンの法定耐用年数は6年だから、
うちは15年で償却していこう。

まとめ

ちょい赤決算のときの減価償却費の扱いについて、書いてみました。

法律にも反せず、マナーにも反しない範囲で、アイデアと工夫により乗り切っていきましょう。

【参考】

赤字決算とリスクヘッジ。赤字でも大丈夫な場合をまとめました