30秒で終わらせる電子帳簿保存法。最低限やるべきことをまとめました

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

来年の1月から、電子帳簿保存法が改正されて、経理書類の保存形式が従来と変わることになります。

ただ、これがどうにもわかりにくくて、解釈に難儀しています。(そもそも説明用語が頭に入ってこない)

適用範囲が思いのほか広く、小規模な事業者にも適用される改正となっており、

私のような弱小零細事業でも、全く関係ない、というわけではないようです。

そこで、年内の今のうちに整理して、

ポイントごとにまとめておこうと思います。

30秒で終わらせたい、という方は、最後の「まとめ」に飛んでください。

なお、最初にお断りしておきたいのですが、

私自身、そんなにパソコンに強いタイプではないので、

用いる単語や言い回しが、非常にざっくりしたものになっていますが、

あくまで、最低限の対応で済ませたい、罰則さえ回避できれば十分、

という観点で、お読みいただければありがたいです。

国税庁のHPより抜粋。
「だったらぜんぶ紙保存でよくね」
というのが、第一印象です。

変更内容の概略と問題点

まず、国税庁には、

「紙で保存していた経理資料は、今後できるだけパソコンデータで保存してほしい」

という大きな方針があります。

そのうえで、今回の法律改正により、

「今まで、実際にパソコンでデータ保存する場合には、

いろいろな要件を満たしていかなくてはならなかったけど、

変更後は、その要件を緩めていく」

ということになりました。

変更の内容としては、

紙での保存はすべて廃止、というものではなく、

「今まで紙で保存していたものは、引き続き紙で保管してもよい」となっていますので、

急いで、すべての資料をパソコンデータに移行する必要はありません。

できるところから少しずつ、時間をかけて、パソコンデータに移行していけば大丈夫です。

とは言いつつも、この改正の中で、一つだけ問題があります。

それは、

「発行したり受け取ったりしたときに、パソコンデータのままだった資料は、

紙に印刷して保管するのではなく、パソコンデータのまま保管しなければならない」

という点です。

最近は、請求書や領収書を、

パソコンデータで発行したり受け取ったりする事業者さんが、

結構いらっしゃると思います。

また、アマゾンや楽天などのECサイトも、利用している人は、かなり多いと思います。

そういう事業者さんには、今回の制度変更は、影響がそこそこ大きい、と言えます。

以下、項目ごとに見ていきます。

いつから変更されるのか

令和4年1月1日から変更されます

どの税金に適用されるのか

法人税と所得税に適用されます。

消費税には、適用されません。

誰に適用される変更なのか

法人も個人事業も、規模の大小にかかわらず、すべての事業者に適用されます。

もっとも、上記のとおり、この法律は法人税と所得税に関する法律ですので、

法人税の申告義務のない法人(宗教法人やNPO法人など)には適用されません。

どんな書類に適用されるのか

かいつまんで説明しますと、つぎのようになります。

① 総勘定元帳、仕訳データ、決算書などの帳簿類・・・・紙での保存のままでもよい

② 注文書、請求書、領収書、レシートなどで、発行したり受け取ったり時点で、紙に印刷されていたもの・・・紙での保存のままでもよい

 注文書、請求書、領収書などで、パソコンデータのまま発行したり受け取ったりしたもの(メール添付やメール本文、サイトに表示された画像など)・・・パソコンデータで保存しなければならない(紙での保存は認められない)

読んでいただければわかる通り、差し当たって対応する必要があるのは、③だけです。

どんなやり方で保存しておけばいいのか

保存の際の機能として、「検索機能」と「改ざん防止機能」を持たせておく必要があります。

それぞれ見ていきます。

パソコンでデータ検索できるようにしておく

具体的には、まずはパソコン上で、データ保存用のフォルダを作成します。

そして、保存するデータについて、そのファイル名を

「日付、金額、取引先、内容」で作成しておき、

冒頭で作成したフォルダに保存しておけば、後から検索することができます。

たとえば、

「2021年11月29日に、浅原会計事務所から、123,456円の請求書をメールで受け取った」とするなら、

その請求書のデータのファイル名を

「20211129-123456-浅原会計-請求書」

にしておけば大丈夫です。

改ざん防止のための事務処理規定

資料の改ざんを防止するシステムを備える必要があるのですが、

それだけのために、タイムスタンプやら訂正削除の記録システムなどを導入するのは、

あまりに経済的な負担が大きすぎます。

そこで、救済措置として、国税庁HPに「事務処理規定」が用意されておりますので、

それを会社に備え付けておけば大丈夫です。

【法人用の事務処理規程 ひな形】

【個人用の事務処理規程 ひな形】

変更に対応できなかったときの罰則

一応、可能性としてですが、「青色申告」が認められなくなる可能性があります。

青色申告が認めらなくなると、

65万円の青色申告特別控除や、青色欠損金の繰越控除などの特典が受けられなくなります。

もっとも、電子データの保存が、ちゃんとできていなかったからといって、

直ちに青色申告取り消しになることはないようです。

同様に、電子データで保存していないとしても、

資料が紙で保存されていて、紙面から内容が確認できれば、

経費として認めてくれるようです。

もう一回だけ、抜粋の掲載。
「この納税者の青色申告は取り消してやれ」と、
税務署に目を付けられたときに、
青色申告取り消し事由のひとつとして、合わせ技的に
この電帳違反が利用されちゃうのかもしれませんね。

アマゾンや楽天で買った場合

アマゾンや楽天などのECサイトを利用されている方は、多いと思います。

それぞれサイトを見ますと、過去の購入履歴を検索できる機能がついていますので、

この購入履歴で検索できるものは、データ保存の要件を満たしていることになります。

よって、アマゾンや楽天で買ったものは、自社のパソコンでデータ保存する必要はありません。

データの保存期間

通常は、データの保存期間は、「7年」です。

なお、欠損金の繰越控除を使う場合には、10年間の繰り越しが認められている関係で、

保存期間も10年間に延長されます。

まとめ

最後に、時間のない人のために、

最低限のやるべきことを箇条書きでまとめておきます。

① 「パソコンデータを、印刷せずにそのまま相手に送ったり、受け取ったりした請求書、領収書など」について、念のため、紙に印刷しておく

② ①のデータのファイル名に「日付、相手先、金額、内容」を入力して、そのデータを保存用フォルダに保管しておく

③ 下記のリンク先にある事務処理規定を印刷して、事務所に備えておく

【法人用の事務処理規程 ひな形】

【個人用の事務処理規程 ひな形】

以上です。

よくわからない場合は、上記①~③だけやっておきましょう。