税理士が行う会計データのチェックとは

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

今日は、日々の税理士としての活動の中で、

けっこうな時間を割いて行っている「会計データのチェック作業」について、書いてみようと思います。

会計データのチェックと一言でいっても、その内容は、

資料との数字合わせという単純作業から、会計処理の適法性の確認、金額の推移その原因の割り出し、

といった分析作業までも含みます。

これらを大きく分けると、「データの正確さの確認」と「分析作業」の2つに分かれます。

ふだん、私が行っているチェック作業は、次のようなものです。

会計データの正確さの確認

現金・預金残高の突合

現金預金の残高チェックは、基本中の基本というべき作業です。

特に、預金残高が合っていなければ、そのほかのチェック作業をすべて完璧におこなったとしても、

会計データの信ぴょう性が薄れてしまいます。

(「残高合ってないじゃん」の一言は、相手を一撃でダウンさせる威力があります)

しかし、確認作業の冒頭で、残高合わせをしておいても、

その後の修正作業の過程で、残高が動いてしまうことがよくあります。

ですので、私は、確認作業の冒頭と終わりで、

必ず残高チェックを欠かさないようにしています。

預金残高に関しては、このように、とにかく「通帳残高と合っていあること」が必須なのですが、

現金残高に関しては、正直なところ、ここまでの厳密なチェックはしていません。

会社ごとに、しっかり実際の残高と出納帳残高を合わせているところは、私もそれに応じて確認しますし、

そこまで厳密にやっていない会社は、実際の残高と大きく離れていなければ、それでよい、

というふうにしています。(※)

(※)それで一度、えらい目にあったのですが。今後、機会があればブログに書きます。

売上、仕入、経費支払いに関する証憑類(請求書や領収書)との突合

残高合わせができたら、

次は、現金預金の入出金データと、その根拠となる請求書や領収書との突合せを行います。

この段階では、領収書の記入漏れが見つかることがよくあるので、気が抜けません。

結果的に、すべての領収書、請求書に目を通すことになります。

消費税の課税区分の確認

前述の請求書・領収書の突合せをしつつ、同時に、

消費税の課税区分が正しく登録されているかをチェックしていきます。

課税区分で多く使うのが、

「10%課税」、

「軽減税率の8%課税」、

「旧8%課税」、

「非課税」、

「課税対象外」の5つです。

この中でも、「軽減8%と旧8%」と「非課税と課税対象外」は、似ていて非なるものなのですが、

お客様からすると区別がつかない場合が多く、混同されがちです。

特に当事務所の場合、お客様に、新聞販売店様や食品販売店様がいらっしゃるので、

軽減税率8%のチェックには気を使います。

資産や負債に計上すべきものが、損益項目に紛れていないかの確認

このチェックも、気が抜けません。

お客様が入力してくださった会計データでは、

資産計上すべきものが経費項目に計上されている、というパターンをよく見かけます。

(税法の制度をご存じなければ、当然そうなってしまいますので、お客様が入力する段階では、そこまで気にする必要はありませんけどね。これはあくまで、チェック作業に責任をもつ税理士側の仕事ですから)

一組30万円以上となる設備の新規購入や、

建物・設備・機械の修理費、繰延資産として処理しなければならない出費、敷金や保証金の支出などが、

それにあたります。

これらを、損益項目として処理してしまうと、

税務調査が入ったときには、確実に修正申告を求められることになりますので、

そういう処理が見つかった場合には、決算までには必ず修正しなければなりません。

会計処理の有利不利、および適法性の確認

ビジネスをしていると、単純な売上や経費の支払い計上とは別に、

内容の複雑な取引を行うことがあります。

たとえば私の身近な例でいうと、

「他社から出向社員を受け入れて現場指導をしてもらい、その出向社員の給与を、指導をしてもらった会社が負担する」

というような場合です。

このような場合には、かかわってくる法律や制度が複数にまたがることになるため、

事実関係の確認から、ひとつひとつウラを取って進めていかないとなりません。

複数の法律や、複数の関係者がかかわる取引が出てきたときは、

一定の時間を確保したうえで、必要なら税務署なども交えて、

腰を据えて確認するよう心掛けています。

会計データの分析

売上・仕入・販売管理費の金額推移と利益増減との関連性の確認

会計データの内容が固まりましたら、次はその内容の分析です。

利益の増減を引き起こした原因となる項目を特定し、その項目の改善の可否、改善の見通しなどについて、

お客様と相談していきます。

経営上の問題点について、現場を見ている社長と、財務を見ている税理士とで、

目線を合わせていく大事な作業になります。

具体的には、

お客様に会計報告をするにあたって、どのようなことをお聞きすれば問題解決につながるのか、

という「質問内容のリストアップ」です。

資金繰りの安全度合いの確認

現金預金の残高と、毎月必要となる運転資金とのバランスを見ながら、

当面の資金繰りの安全性について、確認するようにしています。

資金繰り判断のエッセンスとしては、次のようなものがあります。

  • 現金預金の残高
  • 毎月の運転資金の必要量
  • 今後の売上の見通し
  • 今後の売上を維持していくための人員確保
  • 銀行からの運転資金の借り入れの可否
  • 経営者の個人資産

これらを総合的に判断しながら、必要な対応についてお客様に提案していきます。

今後の予測

現場の第一線にいる社長だからこそ、見えてくる動き、感じる変化について、

聞き取りをしていきます。

そして、それらの要素と、財務上の数字の推移を掛け合わせて、

今後、経営判断の中で考慮してほしいことを、お伝えしていきます。

数字からわかること、数字だけではわからないこと

税理士は、数字を通して現場を見る、というポジションにいます。

病院に例えるならば、検査結果から患者の容態を観察して、

必要な投薬治療をおこなっていく内科医のような立場です。

そして、数字は事実を表します。

「がんばった」とか「苦労した」という感想ではなく、

「儲かった」か「儲からなかった」か、という事実です。

数字を追いかけるのと同時に、ひたすら事実を追いかけていきます。

その反面、税理士には、現場のリアルタイムの動きが見えにくいです。

最前線の現場の動きが数字化されるには、タイムラグがありますので。

しかし、「事業を継続していく」という最大目標から外れないようにするためには、

「いま、最前線で何をしているのか」を理解しておかなくてはなりません。

数字から見える範囲だけが守備範囲ではない、

そのような認識で、日ごろから会計データのチェック作業をしています。

(当事務所では、次のサービスを提供しております)

◇税務顧問サービス

昨日の仕事

  • 不動産売買の契約書・重要事項説明のチェック
  • 親友のお墓参り