お疲れ様です。
静岡の税理士、浅原です。
賃貸経営用の物件の仕入れのために、
現在、ひとつには買付申し込みをしており、
もう一つには、これから買付申し込みを入れようとしています。
買うか買わないか、いくらで買うか、という点について悩みつくした後、
次に出てくる問題が、個人名義で買うか、法人名義で買うか、という点です。
この点について、私の考えを書いてみようと思います。

目次
入ってきたお金を自由に使いたいならば
入ってきた家賃収入や、物件を売却した時の売却代金を、自由に使いたい、という場合には、
個人名義での購入をお勧めします。
法人名義で購入すると、家賃収入や売却代金は、当然ながら、法人の口座に入ってきます。
法人の口座に入ってきた収入は、「法人のもの」であり、
いくら法人の代表者といえども、完全に自由にはできません。
もちろん、その法人の経営上、必要な支出には充てられるのですが、
あくまで「その法人の事業」に使われるものでなければなりません。
すなわち、
プライベートな事柄に法人のお金を使うためには、
いったん法人の外にお金を出してからでないとならない、ということです。
(ちなみに、法人の口座に置いたままのお金を、直接プライベートに使った場合は、良くて役員貸付金、悪くすると役員賞与に認定されてしまいます)
法人のお金を、法人の外に出すためには、
役員給与、つまり給与として代表者に支払う、というのが一般的です。
しかし、給与として支払う、となると、そこには次のような制限が絡んできます。
- 支払う給与の金額は、毎月同額にしておかなくてはならない(金額変更できるのは、原則として年に1回のみ)
- 給与の支払いに伴い、社会保険の加入が必要となる。その結果、社会保険料の負担が生じる。
- 給与の支払いに伴い、源泉徴収事務が発生する。
世の中の社長さんたちは、みなこの制約のもとに給与を受け取っているので、
特別なことではありませんが、
こういう形で、法人のお金を外部に出した後でなければ、プライベートには使えない、
ということです。
連帯保証人を自分ひとりで完結したいならば
物件購入にあたり、銀行借り入れを使う場合には、必ず連帯保証人を求められます。
借主本人とは別に、連帯保証人を1人用意することになるので、自分以外にもう一人、必要になります。
ことは連帯保証ですので、基本的に保証人候補は、身内のみになります。
さて、個人名義でお金を借りる場合には、借主がご主人、連帯保証人が奥様、という形が一般的です。
その逆パターンでも、問題なく成立します。
いずれにせよ、夫婦で意見を一致させておかなくてはならないわけです。
しかし、意外とこれが難しい。
例えば、
ご主人が「利回りの高い築古を見つけてきた、よし買おう」となっても、
奥さまが「古い、汚い、見たくない」などとネガティブになってしまうと、
無理に保証人の欄に印鑑を押してもらうわけにもいかず、ストップしてしまいます。
物件の選定には、慣れも必要ですし、軸も必要ですので、
たとえ夫婦といえども完全一致が難しいときがあります。
その点、法人であれば、
借主が法人、連帯保証人が代表者、という形で大丈夫なので、
代表者がご主人、もしくは奥様であっても、
自分だけの判断で、物件を選定して、購入手続きを進めていくことが可能です。
(まったくパートナーに言わずに、完全ダマで進めてしまうのは、それはそれで後々、わだかまりを残すことになるかもしれませんが)
また、事業がうまく進まずに、倒産の危機に瀕してしまったとき、
夫婦でともに連帯保証にとられていると、資産の逃がし道がなくなります。
ご主人の口座も奥様の口座も、差し押さえの対象になってしまいます。
しかし、どちらか一方が連帯保証を負っていない、ということであれば、
その連帯保証を負っていない方に、資産を逃がすことが可能になります。
ケースバイケースではあるものの、夫婦共倒れ、という事態は防げるでしょう。
個人の収入をコントロールしたいならば
個人名義で収益物件を購入した場合、
入ってきた家賃収入や売却代金は、すべてがその所有者個人の収入になります。
そして、その収入に対して、所得税と住民税が自動的にかかってきます。
すなわち、自分の判断で、個人の収入を多くしたり少なくしたりという収入量のコントロールはできません。
しかし、法人名義で購入しておけば、
いったん法人の口座に入ってきた収入を、役員給与として代表者個人に流していく際に、
給与額をいくらに設定するか、という点を代表者自身の判断でコントロールできます。
- 今はまだ子どもが小さいから、個人の収入は少なくてよい
- 今年は自宅を建てるから、去年よりも個人収入を多めにしておこう
- 子どもの大学の奨学金申請をしたいから、個人の収入は抑えめにしておこう
- 親の遺産が入ってきたので、しばらくは個人の収入はゼロでいい
こういった代表者個人のプライベートに合わせて、
会社から個人に流すお金の量をコントロールすることができます。
お金の量をコントロールできる、ということは、それだけ節税バランスもとりやすい、ということです。
短期間で手放すつもりならば
購入してから5年内に転売するつもりならば、法人名義での購入をお勧めします。
個人の場合、転売による収入は、譲渡所得として、家賃収入とは別カウントになります。
その際、買ってから5年内の譲渡所得には、約40%の税金がかかってきます(5年超なら約20%)
これに対し、法人の場合であれば、買ってからの年数にかかわりなく、税率は一律となり、
税率は最大でも35%前後で済みます。
物件規模の大小による判断
こういった法制度上の個人と法人の違いを踏まえると、
物件規模の大小で考えた場合、次のような方向性が出ます。
物件規模が小さい
コントロールの手間に比べて、コントロール量が少ない
法人名義にして、ややこしい手間を踏むよりは、個人名義で買っちゃってもよさそう。
物件規模が大きい
小規模の逆で、コントロール幅も大きいので、法人名義にしておくメリットが大きい。
収入を、法人と個人に分散することで、節税メリットも得やすい。
まとめ
収益物件を法人名義で買うか、個人名義で買うかの判断ポイントについて、書いてみました。
不動産は、最初の入り口をどうとるかで、ほぼ出口が決まってしまいます。
法人名義か個人名義かも、
後でやり直すとなると非常にコストがかかる(というか、やり直しはしない方がいい)ので、
慎重に判断されることをお勧めします。
昨日の仕事
- 宗教法人の決算報告の準備
5月の大きな仕事に、ようやくめどがついた
- 収益アパートの現地調査
規模拡大には興味がないものの、面白そうな物件が出ると、つい見に行ってしまう
買い付けを入れてみる予定
- 紫微斗数鑑定
知人の鑑定
なるほどと感じる部分と、意外な部分が見えてくる
答え合わせが楽しみだ
- 空手でやられた足がようやく動くようになってきた