「コスト削減」と「労働力搾取」のはざまで

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

今日、すごく安い金額で、エアコンの取り付け・取り外しをしてくれる業者さんとお会いしまして、

衝撃を受けました。

コスト削減が進んでよかったな、という思いと同時に、果たして本当にこれでいいのかな、

という思いも、同時に浮かんできました。

その時に思ったことを書いてみます。

対応がとても丁寧で、好感が持てるスタッフさんでした。お疲れ様でした。
「できないことを、できないままで終わらせない」という姿勢に、シンパシーを感じました。

幅広い技術をお持ちの何でも屋さん

本日、所有している賃貸物件で、退去があった部屋の確認にいきました。

幸いなことに、もう次の入居が決まっているので、そのまま、現地でリフォーム会社さんと打ち合わせをして、

そのあと連続して、古くなったエアコンを回収してもらうために、回収業者さんとの打ち合わせに入りました。

エアコンの回収業者さんとの打ち合わせの中で、「エアコンの回収だけではなくて、取り付けもできる」

ということが分かったので、新しいエアコンも届いているし、スタッフさんの人柄もとても良かったので、

「じゃあ、回収と取り付けを、一緒にお願いします」ということにしました。

そして、料金についてお尋ねすると、「エアコンの取り外し・回収は無料。

取り付けは、材料代の6,000円を負担してくれればやりますよ」、とのこと。

私は今まで、お付き合いのある電気屋さんに、エアコンの取り外し・回収は5,500円、

取り付けは、16,500円でお願いしていました。

今までの電気屋さんと比べて、破格の条件です。

聞くと、回収した古いエアコンは、鉄くずと同じ単価で引き取ってくれる業者さんがいるので、

そこで現金収入を確保している、ということです。

しかし、取り付け作業の方は、完全にボランティア状態とのこと。

それでも、依頼があれば、その条件で応じてきたということでした。

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私は、ちょっと考えたあと、「取り付け作業は、材料代込みで10,000円でお願いしたい」とお伝えし、

作業に取り掛かってもらいました。

たとえ、10,000円払っても、今までお願いしていた電気屋さんの半額以下の料金です。

逆に、依頼するこちらが、申し訳ない気持ちになりました。

コスト削減のニーズ

経営においては、コスト削減は、極めて重要です。

売上高が現状維持でも、コスト削減ができれば、利益の増加が図れます。

言い方を変えれば、10,000円のコスト削減は、粗利50%の商売ならば、

帳簿上は、20,000円の売上を確保したのと同じ意味を持ちます。

私に置き換えると、賃貸経営には仕入がありませんので、粗利100%と考えるならば、

私は今日、12,000円の売上を確保した、ということになります。

さらに、一度下げたコストは、期間限定でない限りは、下がった水準で推移していくのが通常なので、

年間10件のエアコン交換があるとするならば、

年間で120,000円のコスト削減につながる仕組みを作れた、ということになります。

もし、私が、回収業者さんの好意に乗っかって、取り付け作業も6,000円でお願いしていたとしたら、

1件のエアコン交換で16,000円のコスト削減、

年換算で、より多くのコスト削減ができていたかもしれません。

でも、回収業者さんから、「材料代のみ6,000円・・・」という提案を聞いたとき、

「本当にその提案に乗ってしまっていいのかなあ。

俺は、そんな一方的に有利な条件のお付き合いをしたいのかなあ」と躊躇してしまいました。

労働力搾取の問題意識

経営上発生するコストは多岐に渡りますが、人件費や外注費、修繕費などは、

人間の実労働を伴うコストになります。

私は、賃貸経営においては、自身の勉強のために、時間の許す範囲で作業現場を視察しに行き、

内容によっては現場仕事を自分でこなすことも多いです。

作業現場に行くと、今だと、暑い部屋の中で、大きな業務用の扇風機を持ち込んで、

職人さんたちがクロスや床の張り替えをしたり、清掃作業をしたりしてくれています。

彼らの働きぶりを見ていると、本当に頭が下がります。

彼らのように、現場で汗を流して仕事をしてくれる人達がいるからこそ、

私は事務処理や経営判断に専念して、賃貸経営を回していくことができています。

外注費や修繕費のコスト削減をする、ということは、彼ら現場の職人さんの取り分を削る、

ということに直結します。

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日頃、お世話になっている職人さんたちの取り分を削る、ということについて、

私は、自分の内部に、とても強い抵抗を感じます。

もし、あそこで働いてくれている職人さんが、うちの父親や母親だったり、

大きくなった自分の子どもだとしたら、

同じように、「ちょっと金額を下げてくれないかな」と言えるかどうか。

もし私の父母が、他者から労働力を搾取されていたら、やはり私は、

到底そんなことは受け入れられないだろうと思います。

現場の職人さんも、誰かの親であり、誰かの子であるはずです。

彼ら職人さんたちが、現場で流してくれる汗に対して、

その汗の量を気にかけることなく、会話をするような人間にはなりたくない、と感じています。

コスト削減の作法

見てきた通り、コスト削減は、その項目によっては、労働力の搾取につながります。

とは言え、資金繰りが成り立ってこその事業経営ですので、コスト削減のニーズは非常に強いです。

ですので、私はこれからも、自身の会計事務所や賃貸経営において、

コスト削減を進めていくことは間違いありません。

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ただ、コストの中には、削るにあたって、マナーや節度、丁寧さなどが大切になってくる項目があります。

特に、人の労働を伴うものは、相手への「敬意」がとても重要です。

このことを忘れないためにも、私はこれからも時間の許す限り、現場に足を運びたいと思います。