【初心者向け】リスケの段取り。私の場合はこうします

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

現在、税理士になって4件目のリスケ案件に取り掛かっています。

リスケに入ったのは、当事務所の既存のお客様ですが、

資金繰り状況がなかなか改善できず、新規の借入を起こしたとしても返済のめどが立たないため、

社長と面談を繰り返したのち、リスケに踏み切ることにしました。

そこで、リスケを進めるにあたり、どういう手順で進めていくか、私のやり方を書いてみようと思います。

私の賃貸物件は単身世帯が多いので、たびたびマナーを守らない人が出てきます。 
その都度、張り紙や投函で、注意喚起をしていきます。
マンション敷地内を清潔に保つことは、貸主の重要な役割です。

リスケとは

リスケ、リスケと短縮してしまいがちですが、正しくは「リスケジュール」と言われています。

経営用語としてのリスケは、「返済条件の変更」という意味になります。

リスケのよくあるパターンは、

「一定期間の元本返済の停止」

「返せる額だけの元本返済を再開する」との組み合わせです。

この2つをうまく組み合わせながら、時間稼ぎをするなかで、

収支状況を改善し、最終的に「元の返済条件に戻していく」ことを目指して進めていきます。

リスケの最大の特徴は、「リスケのあとは、銀行借入ができなくなる」という点です。

死ぬまで、永久に借りられない、というわけではありませんが、

リスケによって金融機関の与信はゼロになりますので、

リスケを脱して元の返済条件に戻した後も、数年間は資金調達に難儀すると見込まれます。

つまり、いま手元にあるお金だけで、しばらくの間はやっていかなくてはならない、ということです。

ですので、リスケに踏み切るかどうかの判断は、極めて慎重に行う必要があります。

リスケせずに資金繰りを改善できれば一番いい

お金を借りたいときに借りられない、というのは、とても怖くて不安です。

従業員を雇っていれば、なおさら怖いです。

そもそも、資金繰りというのは、急に悪化することはまれなことで、

徐々に徐々に悪化していくことが多いです。

その悪化していく過程の中で、早めに原因を探り出し解決しておけば、

リスケを検討するような事態にはならないはずです。

しかし、先の見えない世の中では、

新型コロナのように、自社の努力だけではどうしようもないことも起きます。

どうしても、自社の努力だけでは今の苦しい状況をしのげない、というときには、

時間稼ぎの手段として、リスケが選択肢にあがってくることになります。

経営者に腹を括ってもらう

リスケは、前述のとおり、諸刃の剣です。

リスケ交渉がうまくいけば、しばらくの間、銀行返済は軽くなります。

しかし、追加融資の道は絶たれます。

リスケ中に、資金繰り状況の改善が進まないとなると、

いつまでも銀行は待てませんから、どこかのタイミングで破産手続きを勧められることになります。

つまり、リスケに踏み切る以上は、

「何が何でも、経営改善をやり切らなければならない」ということです。

リスケ交渉も経営改善も、相手のある話なので、経営者側の事情だけでは進みませんが、

それでも、リスケ交渉に入るときには、「どんな障害があってもやり切る覚悟」が求められます。

事業計画書の作成

リスケ交渉に入る、と決まったら、

次は金融機関への説明資料として、再建プランを示した事業計画書を作成します。

事業計画書には、決まったフォーマットはありませんが、

私の場合は、次の資料をセットで用意するようにしています。

  • 現在の経営状態の説明
  • 資金繰り悪化の要因と改善策
  • リスケの希望条件
  • 直前期の決算書(実績値)
  • リスケ後の貸借対照表、損益計算書、資金繰り表(予測数値)

事業計画書は、小規模な会社の場合、社内で作成するノウハウやマンパワーがない場合が多いので、

私が関与してきたリスケでは、すべて私が作成しています。

とくに、事業計画書の文章情報においては、経営者への忖度と思われるような部分が見られると、

対応してくれる金融機関の担当者もシラケてしまうので、

私は一切の忖度なしで、作成するようにしています。

事業計画書の作成のポイントは、次の通りです。

  • うそをつかないこと
  • 資金繰り悪化の原因を、明確に説明すること
  • 役員報酬はゼロ、もしくは役員の生活が可能な範囲でできるだけ切り下げておく
  • 既存の銀行借入の残高を、今後10年程度で完済できるような改善プランを作ること

このあたりの要素を押さえて計画書を作成すれば、経験上、通りがよいと感じています。

メインバンクの支店長と面談

事業計画書が出来上がったら、

まずはメインバンクに電話して、返済条件について相談したい旨を伝えて、

面談のアポをとります。

面談当日は、社長と税理士、そして今後、会社再建を担っていく社内の中心人物がいれば、

一緒に同席してもらいます。

面談の場で、まずは、契約通りに返済ができないことを社長からお詫びしてもらいます。

そして、事業計画書に沿って、税理士が支店長に説明をし、

最後にメインバンクにご支援をいただけるようお願いします。

支店長は、いったん話を聞いたあと、銀行本部や保証協会からリスケの許可をとる手続きに入るので、

説明の直後に、いいとかダメだとかの結論はでません。

もっとも、この段階で支店長の再建支援に前向きな態度を感じ取れれば、

交渉がまとまる可能性が高いと考えていいと思います。

リスケ交渉を進めるにあたり、

メインバンクの支店長は、必ず味方につけておかなければならない存在です。

かといって、銀行にウケのよさそうな言葉や資料を振り回しても、

中身が伴わなければすぐ見抜かれますので、

うそをつかずに、誠意をもって向き合っていくことが重要です。

メインバンク以外の金融機関と面談

メインバンクの後は、サブバンクを回ることになります。

ここで、ひとつポイントがあります。

銀行回りの順番です。

サブバンクの中に、日本政策金融公庫や商工中金等の政府系金融機関が入っている場合には、

先に政府系を回ってください。

私の経験上、政府系金融機関は、おおむねメインバンクの意向に従ってくれますし、

自ら進んで、金融機関同士の関係を引っ搔き回すようなことはしません。

ですので、「メインバンク ⇒ 政府系金融機関 ⇒ 民間金融機関」の順番で回るのがベストです。

面談時のやり取りは、メインバンクの時と同じです。

お詫びと再建計画を説明し、そのうえで、メインバンクが支援に前向きだ、

と伝えられれば、上出来です。

メインバンクからの結論の連絡

支店長面談の後、担当者からの追加資料の依頼などに応じていて、

しばらくすると、メインバンクから連絡がきます。

私の担当した案件では、

「他行との意見調整を行って方針がまとまりました。最終的に御社の希望の条件で元本返済停止に応じるので、6か月後にまた詳しい状況を教えてください」

という回答パターンが多いです。

1年間の元本返済停止をお願いしても、だいたい保証協会が6か月で区切ってきますので、

半年ごとに事業計画書の内容をアップデートして、報告していくことが多いです。

その後の展開は、会社様によってさまざまです。

返済を再開するタイミング、再開する際の返済金額、銀行からの上乗せ返済の要望をどうやって凌ぐかなど、

また別の機会に書いてみたいと思います。

以上、ご参考まで。