お疲れ様です。
静岡の税理士、浅原です。
今まで私は、会計事務所のお客様との顧問契約においては、
契約書を作成せずにやってきました。
「契約書」に対する私のイメージが良くなかったことと、
お客様とは信頼関係でつながっているわけだから、あえて明文化しなくても大丈夫だろうと、
思っていました。
しかし、お互いに誤解によるトラブルを防ぐ、という点からは、
契約書を作成する必要性も感じていました。
そこで今年から、新たに顧問契約を締結する場合には書面を交わすことにしたのですが、
その書面には、私なりの考えを織り込んであります。
契約書が好きではない
そもそも、私は契約書について、良いイメージを持っていません。
端的に言って、嫌いです。
私は、10年ほどから、不動産を購入したり売却したりを繰り返していたのですが、
不動産売買の際には、必ず売買契約書の締結がついて回ります。
この売買取引の契約書というのが、いつ読んでも気に食わなくて、
基本的に契約書は、どれでもそうなのですが、「お互いを縛るため」に作成されます。
見ず知らずの他人同士が、重要な権利や大きな金額を動かすのが不動産売買なので、
いったん交わした約束を簡単に変更されたら、いつまでたっても取引がまとまりません。
そういう意味で、お互いを縛るための契約書、というのは理解できるのですが、
よく文面を読み込んでいくと、だいたいは、どちらか一方に有利なように作られています。
おそらく、本当に優れた契約書は、
「相手は徹底的に縛りこみ、自分は自由に動けるようにしておく」
というものなのでしょう。
私は、不動産売買においては、買う側が多かったので、
どちらかというと立場は弱いです。
縛られる側になります。
売買契約締結の際、用意された売買契約書を読むたびに、
常に「縛られている」と感じていたので、
拘束されるのが嫌いな私は、契約書、と聞いただけでも、
回避したい気持ちになってしまいます。
契約書だけど「契約書」とは書きたくない
そういうわけで、私自身が契約書を嫌っているので、
その契約書をお客様に要求するということも、無意識に避けてきたのかもしれません。
とはいえ、お客様との関係を良好な状態で維持していくためにも、
今後のベースとなる約束事や私の考えなどは、
最初の段階で明示しておいた方が、お互いのために良いことだと思います。
そこで、文書作成にあたり、次の点を織り込むことにしました。
- 文書のタイトル・・・「顧問業務の委任に関する覚書」にした(「契約書」と言いたくないから)
- 文書の構成・・・「お客様からの依頼」に対して「税理士が受任の内容を表示」し、それに対してお客様が「承認」してくれた、という流れで作成した(よく目にする「下記内容にて合意した」という文章が、ウソっぽいから)
- 「甲」「乙」は使わない・・・その代わりに「お客様」と「税理士」という単語を使うことにした(実在する人間を、甲や乙とかの記号にしてしまうのが嫌だから。せめて、その人の属性を示す単語にしたかった)
- 「しなければならない」「するものとする」を使わない・・・文章末尾を「です」「ます」調にした(〇〇しなければならない、と言われるのが好きではないから)
- 管轄裁判所には触れない・・・望まない未来についての望まない防衛策は、そもそも書く気になれないから
仕上がった文書をみると、まずまず私の理想に近いだろう、といえるものになりました。
状況の変化に対応できる関係でありたい
一般的な契約書では、冒頭部分で、
「甲と乙は、下記条件について合意した」とあります。
確かに、その時は合意したのだと思います。
もっとも、契約当事者を取り巻く環境は、当然ながら、年々変化していきます。
その環境の変化に、契約当事者も合わせていかなければ生き残っていけませんから、
契約当事者自身も変化していくならば、契約内容も変化していくのが当然なのでしょう。
しかし私は、「甲と乙は、下記条件について合意した」という一文からは、
その環境の変化を無視して、
「あとのとき、ちゃんと合意したじゃないか」というような、
変化を拒むニュアンスを感じ取ってしまいます。
私は、平成22年に税理士登録しましたが、
そこから令和4年までの11年の間に、次のような環境の変化がありました。
- 社内税理士から開業税理士になった
- 他の会計事務所を引き継いだ
- 引き継いだ会計事務所を手放して、単独で事務所運営することにした
- 事務処理のIT化を進めた(メール連絡、データの自動取り込み、イータックス、ペーパーレスなど)
- 紹介営業からブログHP営業に比重を移した
私と同様、お客様にもそれぞれ変化が生じており、
その都度、こちらの手間が増えたり減ったり、
面談回数が増えたり減ったりと、お互いの関係にも影響がありました。
その関係への影響の度合いが、
当初のお約束の範囲内で吸収できるものならば、それでよいですし、
その範囲内に収めようとする努力も、大切です。
もっとも、当初のお約束の見直しがどうしても必要、という場合なら、
それはそれで、見直しをしていくべきなのでしょう。
そうしなければ、お互いの関係が維持できなくなります。
今回作成した文書は、
そういった「環境の変化を受け入れること」を想定したものとして作りました。
文書だけでなく、私自身も、
常々、変化に対しては柔軟でありたいと思っています。