社長のダメ出しに学ぶ。「有利な会計処理」よりも「誤解のない会計処理」を

お疲れ様です。

静岡の税理士、浅原です。

良かれと思い、手間を掛けてやっていた会計処理について、

お客様からダメ出しを受けることがあります。

直近だと、「リース料」と「消費税の税抜き経理」です。

今まで何度か、複数のお客様からダメ出しを受けてきたのですが、

その時感じたことを書いてみます。

音声を感じると動き出す獅子舞
御殿場イルミネーションにて

2つのダメ出し

リース料のダメ出しは、

「支払ったリース料が、なぜ『リース料』として処理されていないのか」

というものです。

私としては、支払いの都度、経費計上するよりは、

原則方法に従い、全額資産計上した方が、

「初年度で、リース料総額に含まれる消費税全額を仕入控除できる」ので、

その方が手元にお金を残しやすい、と思って、

いったん資産計上するようにしていました。

その場合は、資産計上と同時に、同額を未払金にも計上して、

その後、リース料の支払いの都度、未払金を取り崩す、

ということになります。

この「リース料が、『リース料』として処理されず、未払金の支払いになってしまう」という点が、

社長には、直感的にわかりにくいようです。

税抜き経理のダメ出しでは、

社長の肌感覚では、もっと売上高が出ていたはずなのに、

税抜き経理でやっていたので、本体価格の分しか計上されなくて、

その結果、「ちょっとわかりにくいね」と。

私としては、

消費税の確定納税や予定納税の都度、損益が大きく変動するような試算表だと、

本来の会社の収益力が把握しづらい、と思って、

あえて手間のかかる税抜き経理を選んでいるのですが、

社長によっては、ご自身の肌感覚に合わなくて、

「来年からやり方を変えようよ」と言われることがあります。

個人的には、税抜き経理よりも、税込み経理の方が、決算時の処理が少し楽になりますし、

資金繰り管理にも向いているので、税込み経理の方がありがたいのですが、

切り口は違えども、社長から見ても、

税込み経理の方がご自身の感覚に合う、という方が多いようです。

私の「良かれ」と社長の希望

こういった会計処理の修正は、よくあることなので、

ダメ出しされたからといって、それが問題というわけではありません。

むしろ、その修正プロセスの中で、

「浅原は浅原なりに、いろいろ考えてやってくれていた」、ということが社長に伝わって、

感謝されることもあります。

しかし、気になるのは、

なぜ私の考える「良かれ」が、社長にとって「良かれ」になっていないのか、

ということです。

ヒアリングを重ねていくと、

社長が、月々の会計報告や決算書に求めているのは、

「会計処理で有利な選択肢を選べているか」、

ということよりも、

「自分自身の実感と、税理士の報告に齟齬がないかどうか」、

という点にあるようです。

すなわち、「自分にとって、理解しやすい状態かどうか」です。

有利は有利でありがたいのですが、有利選択を追求しすぎた結果、

「分かりにくい会計処理に基づく分かりにくい報告」になってしまうと、

それは困る、と。

私も含めて一般的な税理士は、

まず取引の事実関係を把握して、その事実関係に基づいて会計処理を行っていくのですが、

その際、会計処理の中身を当然理解して進めていますので、

その取引事実が試算表や決算書上にどのように表現されるのか、ということも、理解しています。

しかし、社長の立場では、

取引事実は把握していたとしても、会計処理の中身をご存じないので、

表現結果としての試算表や決算書を見たときに、

そこに「把握している取引事実が出てこない」となると、

不安になってしまうようです。

確かに、それはそうだな、と思いました。

かわいらしい動きを、写真では伝えられないのが残念

事業経営をしていくうえで、

発生した事実を事実のまま受け止めて、向き合っていく、という作業は、

極めて重要です。

事実に基づいた経営判断でなければ、確実に判断を間違えます。

そこを徹底するならば、

「有利だけど複雑な会計処理」よりは、

「有利不利関係なく、事実を事実として捉えやすい会計処理」、

すなわち「誤解のない会計処理」の方が、重要だといえます。

特にスモールビジネスの場合、

ビジネスは「社長の認識の中で完結する」、

と言っても過言ではありません。

社長と話し合ったうえで、今後は、

「誤解のない会計処理」

「誤解しにくい決算書」という観点で、仕事を進めていくのもいいな、

と感じました。

まとめ

社長からのダメ出しについて、まとめてみました。

前提として、社長も税理士もお互いに、

気軽に言い合える関係であることが大切です。

説明内容に引っ掛かりを感じたときや、ちょっとした疑問質問を、

私には気軽に聞いていただきたいと思います。