お疲れ様です。
税理士の浅原です。
令和4年台風15号の被災者を支援する所得税、法人税の救済処置についてご紹介します。

断水中の生活は大変疲れました。
目次
生活用資産について損害を受けた【対象:個人全員】
「雑損控除」と「災害減免法による所得税額の減額免除」のいずれか有利な方の適用を受けることができます。
大づかみにいうと、次のような計算です。(ざっとのイメージです)
- 雑損控除(所得金額の控除)・・・災害による損害金額-所得金額の10%
- 災害減免法(税額の控除)・・・所得金額に応じて、所得税額の4分の1~全額を免除
雑損控除は、所得金額から差し引く制度であるのに対し、災害減免法は、所得税額を直接減額する制度であるため、災害減免法の方が有利になる場合が多いです。
もっとも、災害減免法は所得制限があるため、高額所得者には不利に働きます。
どちらが有利になるかは、シミュレーション計算をした上で決定するのがおすすめです。
【雑損控除】
No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁 (nta.go.jp)
【災害減免法】
No.8004 災害を受けたときの所得税の取扱い|国税庁 (nta.go.jp)
申告期限や納付期限に間に合わない【対象:個人事業・法人】
申告、申請、届出、納付等については、「間に合わない理由の止んだ日から2か月間」の期限の延長が認められています。
この期限延長の申請は、申告期限が経過したあとでも認められます。
※経理資料が水没したり流失してしまった場合も、申告期限に間に合わない理由に含まれます。このような場合、その状況は千差万別であるため、納税者ごと個別に状況を判断していくことになります。
また、納付については、1年間の猶予を申請することができます。
事業用の土地・建物・設備・商品在庫に損害を受けた場合【対象:個人事業・法人】
個人事業・法人ともに、事業用の土地・建物・設備・商品在庫が被災して、損害を受けた場合には、その損害について、経費に計上することができます。
具体的には、次のような損失です。
- 災害により破壊されてしまった建物、機械、設備、車、商品在庫などの資産・・・帳簿価格
- 土砂や障害物の撤去費用・・・支出額
- 被災資産の点検、修理、撤去、移設などの費用・・・支出額
※被災前の機能を維持するために支出した補強工事や土砂崩れ防止の工事費も、費用計上が認められます。
なお、法人に関しては、被災資産につき評価損の計上が認められています。
災害損失の繰り越し、繰り戻し還付【対象:個人事業・法人】
法人か個人事業か、加えて青色申告か白色申告かにより、次のような対応になります。
青色申告の法人
災害によるか否かを問わず、所得から控除できなかった損失金は、10年間の繰り越し控除が認められます。
また、前年もしくは前々年の法人税額から繰り戻し還付を受けることもできます。
白色申告の法人
災害による損失金に限り、10年間の繰り越し控除が認めらます。
また、前年の法人税額から繰り戻し還付を受けることもできます。
青色申告の個人事業
災害によるか否かを問わず、所得から控除できなかった損失金は、3年間の繰り越し控除が認められます。
また、前年の所得税額から繰り戻し還付を受けることもできます。
白色申告の個人事業
災害による損失金に限り、3年間の繰り越し控除が認めらます。
その他の災害に関連する支出【対象:個人事業・法人】
従業員やその親族、取引先への見舞金や見舞品
費用計上できます。
取引先への売掛金や貸付金の免除
取引先の災害復旧を目的とした売掛金・貸付金の免除は、費用計上が認められます。
また、同様に、法人が行う無利息融資の利息部分は、寄付金にはあたらないものとされます。
不特定多数の人を救済するための自社製品の提供
費用計上できます。
自社製品に限らず、他社から購入して提供した物品も、費用計上できます。
災害復旧のボランティアに従事していた従業員の、ボランティア期間中の給与
経費計上できます。
まとめ
事業をしている方にも、お勤めの方にも、それぞれに被災者支援の税制が用意されています。
被災直後は、なかなか税金関係の事務手続きにまで気が回りませんが、生活の方が落ち着いてきたら、これらの制度を活用して、事務負担や経済的負担を減らしながら、事業を復旧させていくのが良いと思います。