「一般社団法人」が、思いのほか使いづらくて持て余す

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

わたしは、一般社団法人をひとつ所有しています。

活動実態としては、不動産賃貸業に利用しており、

いくつかの不動産を保有させています。

昨日、法務局に、

理事の重任登記を申請してきました。

この一般社団法人は、

設立してから10年くらいになりますが、

正直いって、使いづらさの方が目立ってきました。

10年前の自分に伝えることができるならば、

「一般社団法人の設立は、やめといた方がいいよ」

と教えてあげるでしょう。

その理由を書いてみます。

法務局で、理事の重任登記をしてきました

相続対策スキームは、あっさり潰されるから

10年前に一般社団法人をつくろう、と思った理由は、

相続対策に活かせたから、です。

もともと一般社団法人は、その構造上、

役員と法人の間には、出資や株式のような資産的なつながりがありません。

(これは、現在の法律でも同じです)

その結果、

どれだけ法人に内部留保を積み上げても、

役員の個人資産の増加につながるということがなく、

「法人に持たせた資産を、その役員が事実上支配しながらも、役員個人の資産はゼロ」

という形態をとることが可能です。

(ここも現在変わらず)

その点に着目し、相続税対策に利用しようと思って、

わたしは実行に移しました。

ただ、やはりというか当然ながら、

けっこう早い段階で、当局による課税逃れの対策が入りました。

そんなことを認めたら、国の相続税収入が減少してしまいますので、

相続税対策としての利用の道が、早々にふさがれました。

(役員が死亡したときには、一般社団法人の資産を相続財産に組み入れる、ということになりました)

わたしも当時、

将来そうなるかもなー、とは思っていました。

しかし、

そうは思っていても一般社団法人を作ったのは、

「やらずに後悔するよりは、やって後悔した方が、経験値が増えてよい」という

冒険心によるものです。

案の定、

経験値は増えたけど、やや後悔している、

という状況になりました。

自然災害で被害を受けても、行政の支援や補助は一切ないから

昨年の台風被害によって、

うちの一般社団法人が所有している建物に被害が発生しました。

その建物は、事業用の建物という位置づけになります。

台風被害を受けた事業者には、

県や市から、見舞金や修理のための補助金の支給が行われたのですが、

うちの物件については、

「所有者が一般社団法人だから」という理由で、

一切、行政の支援を受けることができませんでした。

「なんで一般社団法人だとだめなの? 

株式会社や有限会社と同じルールで、法人税、事業税、県民税、市民税をちゃんと払っていますよ」

と問い合わせましたが、

静岡県や静岡市の回答としては

「とにかく一般社団法人は、支援対象には入っていないからダメ」

とのことでした。

詳しく調べてみると、

県や市の支援制度では、

中小企業基本法に定められている会社と個人を支援対象にしているらしく、

たしかに一般社団法人は、会社でも個人でもありません。

えーー、と思いましたけど、

どうしようもありません。

ひとつ言えるのは、

一般社団法人や一般財団法人を設立したら

損害保険にはガッツリ入っておかないとならない、

ということです。

2年に1回の理事の重任登記が、地味に面倒だから

じみーに面倒です。

とくにわたしの場合、

株式会社も所有していて、そちらの役員の任期は10年に延長してあるので、

理事重任かったるー、という感じです。

昨日、急に思い出して、

忘れないうちにと法務局に重任申請を出してきました。

申請1回につき、1万円の印紙代がかかります。

それでもわたしの場合は、

自分で申請用紙をつくって、出してくることができるので、

まだマシです。

自分で申請用紙(簡単ですけど)を作れない人は、

司法書士さんに依頼するしかありませんけど、

印紙代+登記報酬を払って毎度やるとしたら、

なんかもう、登記忘れの懈怠料を覚悟して10年に一回でいいかな、って思ってしまいますね。

いらなくなっても、株式会社と合併できないから

以前、合同会社も持っていましたが、

管理する手間が煩わしくなって、株式会社と合併させました。

当時は、

株式会社、合同会社、一般社団法人と3つありましたので、

3つが2つになったことで、かなりすっきりしました。

しかし、合併によって会社をくっつけるのは、

これ以上はできません。

冒頭にふれたとおり、

人的性質が強い一般社団法人は、

物的性質が強く、そもそも法律の枠組みが異なる株式会社とは、

合併させることができません。

わたしの場合、

一般社団法人には、不動産を持たせてしまっているので、

これを動かすとなると、ただ名義を変えるだけでも、

税金負担がドンとかかってきますので、

実質塩漬け状態です。

もう、これ以上は動かせません。

世の中は、常に変化していくし、

私自身も年を重ねるごとに少しずつ変化しているのですが、

そういう変化のスピードに合わせて、状況を柔軟に変えていけない、というのは、

けっこうわたしはストレスを感じます。

現在わたしは、これ以上、資産を増やす気もありませんし、

多少税金負担が増えてもいいから、できるだけ管理の手間を減らして、

状況をシンプルにしていきたいと考えるようになりました。

必要がなくなったものは処分したいですし、

新しいものに目をむけていきたいのですが、

このあたりの一般社団法人の柔軟性のなさは、

一般社団法人の辛い部分でも、見えにくいところですね。

まとめ

一般社団法人を設立して、

後悔している理由を整理してみました。

一般社団法人は、事業の内容によっては、

これらのデメリットを上回るメリットを享受できますし、

もっといえば、わたしの使い方の方が特殊なケースです。

(とはいえ、資産管理法人として一般社団法人を利用する、というのはたまに聞きますけど)

新たに、一般社団法人を設立する気でいる方は、

良かったら参考にしていただければと思います。