顧問契約が終了になりました(前編)

お疲れ様です。

税理士の浅原です。

過去に何度か、お客様の方から顧問契約を解約されたことがあります。

そのとき、どういう経緯で解約になったのかを書いてみます。

最近、うちの子どもたちも大きくなってきたので、家族で魚釣りに来ることが増えました。
神社巡りより、よほど子たちは喜んでくれます。
自転車のおじさんが親切な方で、シロギスのポイントを教えてくれました。

顧問契約が終了になりました(後編)

税理士側から契約終了させてもらいました

会社経営に行き詰まり、株式を譲渡した社長

市内で事業を営む会社様から、顧問契約のご依頼をいただいて対応をしていました。

当時の社長は二代目社長で、私よりも年が若かったですが受け答えのしっかりした方でした。

毎月お伺いしては、業界をとりまく情勢について、よくわかっていない私に対し、詳しく説明してくれました。

当時は原油価格の変動が激しい時期で、業界全体が大きな影響を受けていました。

そのお客様も同様に、利益の圧迫に苦しんでいました。

資金繰り調整は私の得意とするところなので、メインバンクと相談して、適時資金投入を行っていました。

しかし、取引先との受注単価の交渉不調や、従業員とのコミュニケーション不足などで、会社の舵取りがうまくでず、なかなか資金繰りが楽になりません。

次第に社長は自社の経営に興味をなくし、投げやりな態度になっていきました。

・・・・・・

資金繰りが楽にならない理由として、先代社長がお亡くなりになった際、先代社長の借金をそのまま二代目社長が引き継いでしまい、マイナスからのスタートになってしまった点があります。

経営の引き継ぎが行われたときは、私とは別の税理士が顧問をしていたので、そのときの様子はわかりません。

もし、私がその時から顧問税理士をしていたとしたら、確実に相続放棄をさせていた事例でした。

相続放棄をしたうえで新会社をつくり、従業員と販売先だけを引き継いでおけば、ここまで借入返済に足を引っ張られることはなかったのに・・・という思いが、私にはずっとありましたし、おそらく社長にもあったことと思います。

なかなか会社の経営状況が好転しないなかで、次第に社長はやる気をなくして、会社に出てこなくなりました。

私は、やり方次第では、単独で生き残っていくことも十分可能だと判断して、社長を励まし続けていました。

しかし、社長の気持ちはそこまで持たなかったようで、ネガティブなことしか口にしなくなってしまった社長は、見ていて心が痛みました。

・・・・・・

最終的に社長は、自社の経営を引き継いでくれる同業他者を探してきて、その同業者さんに自社の株式を売却して、会社を手放すことにしました。

株式譲渡の仲介に入った弁護士事務所や買い手の同業者さんから、財務状況についての質問の電話が私あてにかかってくるようになりました。

受け答えや資料の作成に時間を取られましたが、「これが最後の経営支援になるかもな」と思って、きっちり対応させてもらいました。

おかげ様で、債務超過であったにも関わらず、株式には売買価格を設定してもらうことができました。

また、二代目社長は、銀行借入の個人保証をすべて解除することができました。

会社を存続させて雇用を守り、経営者の自己破産も回避できたので、結果的にはうまくいきました。

税理士的にはうまくいきましたが、私は重要なお客様を1社失うことになりました。

ガンで急逝してしまった試作品メーカーの女性社長

不動産賃貸業でお世話になった金融機関から紹介を受けて、ご契約いただいたお客様でした。

さっぱりした性格の女性の社長でした。

自分でできることは自分でやる、という方針の方で、会計帳簿は社長ご自身で作成していました。

「浅原くんは、決算書と申告書だけつくってくれればいいよ。てきとーでいいから。だいたいの税金額がわかったら教えてね」といつも、軽いノリで話をしてくれました。

・・・・・・

ある年の決算でお伺いしたときに、社長が今まで見たことがないくらい痩せてしまっていました。

どうしたんですかと聞いたら、「病院に行ったらガンだって言われちゃって、困っちゃう。ステージが最後のところに来ているみたいだけど、珍しいガンらしくて、私もよくわかんない」と、いつもの調子で話してくれました。

内容は極めてシリアスですが、この社長には、暗い雰囲気は似合いません。

「社長がわからないんじゃ、俺もわかんないっす。でもいまは、ガンも治る時代だから頑張っていきましょうよ」と言って、決算の打ち合わせをして帰りました。

その後、決算申告書を仕上げて社長に報告をして、その2か月後くらいに、社長のご主人から、「病院で亡くなった」という電話がきました。

・・・・・・

入院する直前まで業務をしてらっしゃったので、取引先のフォローのために、ご主人がしばらくの間、駆け回っていました。

社長の相続税申告は、私が担当させていただきましたので、その間ご主人とも何度もやりとりさせていただきました。

ご主人も、とてもさっぱりした感じの方で、夫婦そろってさっぱりカラカラした感じの方たちでした。

いい人たちとお付き合いできたな、と思います。

社長とは、年に1度の決まったやり取りだけだったので、特に思い出はないのですが、「発注元のメーカーがむちゃ言うからさー、ほんとまいっちゃうよー」といって笑っていた社長の笑顔が、印象に残っています。

かみ合わなくなってしまったサラリーマン大家の社長

銀行から「収益物件を買いたいらしいので、浅原さんのところで面倒みてやってもらえないか」と言われて、紹介を受けました。

上場企業にお勤めのサラリーマンで、「収益物件の運営による早期リタイアを目指している」、とのことでした。

当時、ロバートキヨサキの影響により、サラリーマン大家さんというジャンルが出来上がってきたころです。

全国的に、収益物件に手を出す属性のよいサラリーマンが急増していました。(私自身もそのハシリでした。属性の良し悪しはし知りませんが)

その時の私は、早期リタイアをしてみたものの、毎日ぶらぶらしている生活はどうにも性に合わないので、もう一度現役復帰しようとして活動していた時期でした。

(その頃の話はこちらにまとめてあります)

リタイアしてはみたものの・・・ | 浅原会計事務所 (asa-tax.com)

・・・・・・

サラリーマンさんはこちらで引き受けることにして、面談を重ねて、物件の選別やキャッシュフローのとらえ方、融資交渉の仕方などをレクチャーしました。

サラリーマンさんもすぐに行動に移り、物件獲得に向けて動いているようでした。

わからないことがあると、すぐに電話がかかってきて、なかなかに対応に苦労しました。

こちらが、ほかのお客様と面談している最中でも、面談中であることを伝えているにも関わらず何度も電話してくるのには、本当に参りました。

物件の購入後も、管理会社の選び方、空室リフォームの取り組み方、入居者対応、募集条件の設定など、賃貸経営に必要な知識を一通りお伝えしました。

物件の購入は少しずつ進んでいき、何年かかけて、サラリーマンさんは5~6棟の収益物件を確保しました。

・・・・・・

私は、不動産賃貸業において、「取り返しのつかない失敗をしないこと」を重視しています。

それは、突き詰めれば、「借金が返済できないという状況に陥らないこと」です。

そのため、私はある程度の棟数を確保したら、今度は財務内容を改善するため、抱えた借金を減らしていく方向にシフトすることがよいと思っています。

「10億円の物件を、10億円の借金を抱えて運営していく」よりも、「1億円の物件を、1,000万円の借金で運営していく」方が、よほど本人もご家族も、精神的に落ち着いて生活できると考えています。

(この点についての考え方は各人様々ですが、私は、事業規模よりも財務改善を重視するディフェンスタイプです。桁の多い借金はご家族が心配します)

まあ別に、すべて私の言う通りにする必要はないのですが、そのサラリーマン大家さんは、借金のことはあまり気にすることなく、物件を買い進めていました。

・・・・・・

事業規模が大きくなるにつれて、生来の欲深さも出てきたらしく、無理な節税を求められることが増えてきました。

不動産賃貸業は、ある時点から税金との闘いになります。(しつこいですが、そうならないための財務改善です)

面談の時にも、会話がうまくかみ合わないことが増えてきて、最近自分でも「否定的な回答をすることが増えたな」と感じていたところでした。

ある面談時に、サラリーマンさんから「次から別の税理士に頼むことにしたい」と言われて、そこで関与終了となりました。

・・・・・・

自分が他人からどう見られているか、ということ、私は普段ほとんど気にすることはありません。

考えたことを行動に移すときは、自分になりに納得したうえで、行動しているからです。

しかし、このサラリーマン大家さんと接しているときに、自分が他人からどう見られているか、という視点も、ちゃんと持っておかなくてはならないと感じました。

ビジネスをしていて、期待した通りの結果が出ると、自分の心をしっかり制御していたつもりでも、気付かないうちに慢心してしまうことがあります。

そのときに、自分の慢心に気づかせてくれるのは、以前からお付き合いのある方たちの態度です。

慢心によって自分の態度が変わってくれば、他人が、自分に接するときの態度も、自然と変わってきます。

他人の態度の変化を感じ取り、その変化の原因が自分にあるのではないか、と自分を振り返れる謙虚さを、忘れないようにしようと思いました。

一旦まとめ

株式を譲渡してしまった社長は、いまどうしているのでしょうか。

辛かったであろう会社経営からは離れることができましたし、まだ若い方でしたので、再出発はいくらいでもできると思います。

同業者に買われた会社の方は、従来の場所で現在も存続できていて、たまに事務員さんと世間話をしに、事務所に寄らせてもらっています。

・・・・・・

がんで亡くなってしまった社長とは、4~5年のお付き合いでしたが、トラブルもなくお付き合いできた重要なお客様でした。

たまに、こうして思い出すことが、社長の供養になればと思っています。

・・・・・・

サラリーマン大家さんについて、ときどき噂をききます。

地元の狭い賃貸業界なので、どこかで誰かがつながっています。

彼にもご家族がいるので、無事でいることを願います。

以上、ご参考まで。