お疲れ様です。
税理士の浅原です。
令和5年10月1日から、インボイス制度が始まります。
インボイスの登録申請の締め切りも、約半年後に迫ってきました(令和5年3月31日期限)
もう聞き飽きた感じもあるのですが、まわりに聞いてみたところ、
インボイスのことは気にしつつも、まだ何もしていないし具体的な検討もしていない、
という方が多かったです。
改めて、インボイスについて、超簡単にまとめてみようと思います。
インボイス制度の要点
ごくごく簡単にまとめると、インボイス制度というのは、
「請求額に消費税を上乗せする」には、税務署にインボイス登録をしておかなければならない、
というものです。
(一応、正確に言っておくと、「インボイス登録をした事業者に支払った消費税でなければ、仕入税額控除ができない」という制度です。以下の説明でも、かなり崩した説明になっています)
そして、インボイス登録をした事業者には、次の義務が課されます。
- インボイスの登録番号を請求書に記載しなければならない
- インボイスの登録番号を記載した請求書を、保存しておかなければならない
- 預かった消費税と支払った消費税の差額を、税務署に納めなければならない
もともと、年間の課税売上が1,000万円を超えている事業者であれば、
普通に今までやってきたことに、少し事務的なことが加わる、という程度のお話です。
しかし、年間の課税売上が1,000万円以下の事業者は、
おそらく今まで、請求額に消費税の上乗せはしてきたけど、
その消費税は、税務署には納めずに、そのまま自社の利益にしているはずです。
その自社の利益にしてきた部分を、インボイス制度によって、
今後は上乗せ請求するのをやめるか、もしくは税務署に納めるようにするのか、
の判断を迫られているわけです。
このインボイスが問題になるのは、このような理由から、
もっぱら課税売上が1,000万円以下の事業者さんになるでしょう。
インボイス登録について、迷わない場合
登録するかどうかについて、特に迷わないであろうという事業者は、次のような方たちです。
(なお、記事を簡略化するために、事業年度は「1月~12月」で統一しています)
年間の課税収入(消費税のかかる売上や収入、以下同じ)が、毎年1,000万円を超えている事業者(法人・個人ともに、以下同じ)
インボイス登録をしなければ、消費税の上乗せができなくなる上に、消費税の納税義務は残るわけですから、
そんな道を選ぶわけはないですよね。当然、登録申請します。
年間の課税収入が、毎年1,000万円以下だけど、インボイス開始後は、消費税の課税事業者としてやっていくことを決めている事業者
決めているのではれば、登録申請はしない、というだけですね。
そこでのデメリットは、
「今まで請求額に、消費税額を上乗せしてきた事業者は、インボイス開始後はそれができなくなる」
という点です。
「もともと消費税の上乗せはしていない」、ということであれば、まったく変化なしです。
迷いそうな場合
次に掲げるような場合ですと、登録申請をするかどうかで迷いそうです。
年間の課税収入が、毎年1,000万円以下だけど、令和3年の課税収入が1,000万円を超えた事業者
令和3年の課税収入が1,000万円を超えた、ということであれば、
令和5年は消費税の納税義務が発生します。
そして、消費税を上乗せ請求するには、登録申請が必要ですから、
「登録申請をする」、という結論でいいでしょう。
問題は、
「令和3年だけが当たり年で、そのあとは課税収入が1,000万円以下に戻った」、という場合です。
前々年の課税売上が1,000万円以下ならば、本来、消費税の納税義務はなくなるはずなのですが、
インボイスの登録申請をしている方は、そうではありません。
前々年の課税売上が1,000万円以下でも、消費税の納税義務は残ります。
どうするか悩ましいところですが、
「今後は1,000万円を超えないようにする」か、
「収入がどうであろうと、消費税の納税義務を負い続ける」か、
方針を決めることになるでしょう。
年間の課税収入が、毎年1,000万円以下であり、今後も年間の課税収入が1,000万円を超えることはない事業者
今まで、「消費税の納税義務はないのに、請求額に消費税の上乗せをし続けてきた」
という事業者を想定しています。
今後は、
「消費税の上乗せを続けるために、消費税の納税義務を負う」か、
「消費税の上乗せ請求をやめるか」のどちらかを、選択しなければなりません。
年間の課税収入が、毎年1,000万円を超えたり超えなかったりだけど、令和3年の課税収入は1,000万円以下だった事業者
年によって、消費税の納税義務があったりなかったり、を繰り返している事業者を想定しています。
問題は、
今までは、消費税の納税義務のある年もない年も、消費税の上乗せは続けていたと思うのですが、
今後は、「消費税の上乗せ請求を続けるならば、消費税の納税義務も毎年負わなければならない」、
ということになります。
年間の課税収入が、毎年1,000万円以下だったけど、今後は年間の課税収入が1,000万円を超えてきそうな見込みの事業者
令和5年10月1日以降も、消費税の上乗せを続けたいならば、登録申請をしておく必要があります。
そして、登録申請をしたならば、仮に、前々年の課税収入が1,000万円以下であっても、
消費税の納税義務が発生する、ということです。
年間の課税収入が、毎年1,000万円を超えていたけど、今後は年間の課税収入が1,000万円を下回りそうな見込みの事業者
令和5年について、消費税の上乗せをしたいならば、登録申請をしておく必要があります。
このパターンならば、ひとまず登録申請をしておいて、
その後、課税収入が1,000万円を下回ったときに、どうするか考えればいいでしょう。
「益税メリット喪失」によるダメージを緩和するために
以上、見てきた通り
「今まで消費税の納税義務がないのに、消費税を受け取ってきた」という事業者は、
どちらにせよ損をします。
損というより、「貰い得」が無くなるということですね。
ですので、その点は覚悟しておく必要があります。
ここで一つ補足しておきますと、そのダメージを緩和する方法があります。
帳消しではなく、あくまで緩和です。
それは、インボイスの登録申請と同時に、「簡易課税制度」の適用申請もしておくことです。
No.6505 簡易課税制度|国税庁 (nta.go.jp)
簡易課税についての詳しい説明は省略しますが、
特に仕入れの少ない業種では、原則的な消費税の計算方法よりも、
簡易課税による消費税の計算方法の方が、消費税の納税額は少なくなります。
ただ、確実に簡易課税の方が、納税額が少なくなるとは言い切れないので、
簡易課税を採用した場合のシミュレーションを、事前にしておくことをお薦めします。
インボイス開始によりダメージを受けそうな事業者は、
「貰い得」はなくなるけど、「簡易課税」によりダメージを減らす、
という緩和策を検討してみるのが良いと思います。
昨日の仕事
- アパートの外壁塗装の打ち合わせ
- 清水区のお客様と、月次会計報告、新規借り入れ、税務調査についての相談